アメリカン・ビーフの安全性について食肉生産における成長促進剤:ホルモン製剤について

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成長促進剤の使用と安全性

食肉産業では、消費者に健全で価格が手ごろな、健康に良い食肉を提供するため、特定の成長促進剤を使用しています。米国の食肉産業界で現在使用されている成長促進剤は、他の科学技術と同様に、その安全性と有効性を裏付ける膨大な科学的証拠があります。
食肉生産で使用されている成長促進剤には、ホルモン製剤(牛)とβ作動薬(牛および豚)の2種類があります。家畜飼育において使用されている3種類の合成ホルモン剤は、天然に産生されるホルモン3種類を模倣しています。すなわち、エストラジオールを模倣したゼラノール、テストステロンを模倣した酢酸トレンボロン、プロゲステロンを模倣した酢酸メレンゲストロール(MGA)です。これらのホルモン製剤は、米国で数十年にわたり安全に使用されてきました。
β作動薬(ラクトパミンおよびジルパテロールなど)は、筋肉の発達を促進するため飼料に添加する栄養サプリメントであり、人間において筋肉増強のため摂取される特定のサプリメントと多くの点で非常によく似ています。β作動薬は20年近くにわたり安全に使用されてきました。
成長促進剤を少量給与することで、家畜の飼料から筋肉への変換効率を高め、成長を促進することができます。成長促進剤を給与した動物は体重の増加速度が増し、赤身肉が多くなります。出荷体重までの到達時間が短縮され、食肉生産コストが下がるため、消費者への価格を抑えることができます。

アメリカでの規制

複数の規制当局が施行している何重もの規制要件を通して、食肉生産で使用されている成長促進剤の安全性が保証されています。第一に、成長促進剤は、動物の健康および人の食品としての安全性を保証するため、食品医薬品局の動物用医薬品センター(FDA-CVM)の専門家が実施した、包括的かつ多数の手順からなる科学的評価の対象となっています。
成長促進剤について500件を超える様々な研究が実施され、厳格な承認取得プロセスの一部として申請されてきました。承認取得後、これらの製剤は毎年、食品医薬品局(FDA)による評価を受け、安全性が継続して証明された場合に限り市販を続けることができます。
加えて、食肉処理・加工包装施設は、政府により義務付けられているHACCPシステム(危害分析重要管理点方式)の一部として、化学物質の潜在的な問題(成長促進剤の残留など)に対して対策を講じることが求められています。
食品安全検査局(FSIS)は、米国連邦食肉検査法に基づき、出荷時に成長促進剤の残留量がFDAの安全性基準値を超えていないかどうか検査します。

国際的に認識されている安全性記録

承認・認可された成長促進剤を動物用医薬品の適正使用規範に従って使用することを支持する、世界的に受け入れられている明確な科学的コンセンサスが存在します。このコンセンサスは、以下に挙げる世界中の多数の政府機関および研究グループの見解を反映しています

  • 欧州経済共同体の同化剤に関する科学ワーキンググループ
    (European Economic Community Scientific Working Group on Anabolic Agents)、
  • 食品中残留動物用医薬品に関するコーデックス委員会
    (International Codex Alimentarius Committee on Residues of Veterinary Drugs in Foods)
  • 食肉生産における成長促進剤に関する欧州農業委託科学会議
    (European Agriculture Commission Scientific Conference on Growth Promotion in Meat Production)
  • 国連食糧農業機関(FAO)/世界保健機関(WHO)合同食品添加物専門家会議(JECFA)。

世界の科学者集団は、これらの成長促進剤を、ラベルの指示に従って食肉生産動物に使用する限り安全であることを認めています。さらに、FDAおよびその他の学術団体は、成長促進剤を使用して飼養した動物と使用しなかった動物の食肉に根本的な差はないと結論付けています。

国際的な議論

欧州連合(EU)は1980年代前半に、ホルモン製剤を使用した牛肉を禁止しましたが、この規制は科学的根拠に基づかない貿易障壁であると広く認識されています。アメリカが世界貿易機関(WTO)に提訴した後、WTOパネルは米国の主張を認め、EUのホルモン製剤の使用禁止には科学的根拠がなく、WTO原則に適合しないことを裁定しました。
EUはこの裁定に対して上訴しましたが、上訴判決はこの裁定を支持し、EUは1999年5月13日までに裁定に従うことになりました。その後数年にわたり、アメリカ、EUおよびWTOの間で多くのやり取りがありましたが、EUは依然として裁定に従っていません。
FDAが承認したβ作動薬のラクトパミンについて、同様の貿易紛争がありましたが、2012年7月にラクトパミンの適正使用の安全性が確定されました。コーデックス委員会は、豚および牛組織中における残留量の最大許容限度を設定しました。これは、提案された残留濃度がヒトの健康に影響を及ぼさないことを確認する科学的評価の厳格なプロセスを経て決定されました。この評価は、FAOおよびWHOが招集した独立した専門家集団である合同食品添加物専門家会議が実施し、コーデックス委員会に科学的根拠を提出しました。

ホルモン製剤を使用した牛肉の展望

FDAおよびUSDAは牛へのホルモン製剤の適正な使用を保証し、消費者に安全な食品を提供できるよう協働しています。FDAの規制では、ホルモン製剤の適正な使用について非常に具体的な指示が規定されています。ホルモン製剤は主に、法的に認可された特定の用量のホルモンを含む小さなペレット状インプラントを動物の耳に埋め込むことで投与し、食肉処理時には廃棄します。ホルモンは非常にゆっくり血中へ放出され、濃度は比較的一定して低濃度で維持されます。用量は最適な結果が得られる濃度になるように処方されています。実際、ホルモン製剤の使用量を増やしても、費用がかさむだけで何のメリットもないため、農家および生産者が許容量を超えて使用する理由はありません。

ホルモン製剤を使用した去勢牛の牛肉は、3オンス(約85g)当たりエストロゲンを1.9ng含みます。
ホルモン製剤を使用していない去勢牛(認定されたオーガニックビーフなど)の牛肉は、3オンス(約85g)当たりエストロゲンを1.3ng含みます。
ホルモン製剤を埋め込んだ去勢牛の牛肉中のエストロゲン濃度は、FDAの許容濃度より約20倍低く、大豆油、キャベツおよび穀物などその他の多くの食品と比較しても低いことは言うまでもありません。

食品(3オンス=約85g当たり) エストロゲン(ng)
大豆油168,000,000
牛乳11
ジャガイモ225
エンドウ豆340
アイスクリーム520
小麦胚芽3,400
ホルモンインプラントを使用した牛肉1.9

出典: North American Meat Institute (NAMI)  Fact Sheet