アメリカン・ビーフの安全性についてBSEについて
BSEの概要
BSE(伝達性牛海綿状脳症、Transmissible Bovine Spongiform Encephalopathy)は、TSE(伝達性海綿状脳症:Transmissible Spongiform Encephalopathy)という伝達因子と関係する病気のひとつで、牛の脳の組織にスポンジ状の変化を起こし、起立不能等の症状を示す遅発性かつ悪性の中枢神経系の疾病です。
英国で1996~97年に報告が相次いだヒトの新種のクロイツフェルト・ヤコブ病が、研究の結果、BSEが経口的に伝染したものと考えられるようになりました。国際獣疫事務局(OIE)は、特定危険部位(SRM)を摂取しない限り感染しないとしています。BSEの発生を防ぐ有効な方法は、飼料規制とSRMの除去です。OIEの基準では、筋肉は特定危険部位ではないとされており、牛肉の安全性には問題がないとされています。
アメリカのBSE対策
飼料規制
アメリカでは、BSEの感染原因とされている肉骨粉の使用禁止については、1994年から業界での自主規制をはじめ、1996年の世界保健機構(WHO)の勧告以降、1997年に反芻動物への使用を法律で禁止しています。また、アメリカでは、個々の畜産業者に対して「安全な飼料を与えて育てた」という誓約書にサインをしなければ牛を販売できない仕組みになっています。この誓約書に違反があった場合は契約違反として罰せられます。
また、2009年から飼料規制への追加規制が実施されたことにより、肉骨粉は反芻動物だけでなく全ての動物用飼料に使用することが禁止されました。
特定危険部位(SRM)除去
特定危険部位(SRM)とはBSEに自然感染あるいは実験的に感染した牛での伝達性が実証されている部位であり、BSEの原因とされる異常プリオン蛋白が蓄積されやすい部位です。米国では以下のSRMを食品として使用することが禁止されています。
30カ月齢以上の牛 | 頭蓋、脳、三叉神経節、眼球、脊柱(尾椎・胸椎・腰椎横突起・仙骨翼を除く)、脊髄、背根神経節、扁桃、小腸(SRMとしては回腸遠位部のみ) |
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30カ月齢未満を含む すべての牛 |
扁桃、小腸(SRMとしては回腸遠位部のみ) |
日米におけるBSEの発生状況
アメリカでは、2003年12月にカナダから輸入・肥育されていた牛にBSEの感染が確認され、その後2018年までに計5頭の症例が確認されました。最初の症例は古典的なBSEでしたが、そのほかの5例はいずれも非定型BSEでした。OIEは2015年に、非定型BSEについては、すべての牛集団で自然発生的に低率で発生するもので「BSEリスクから除外される」と判断しました。
日本では、2001年9月に最初のBSE感染牛が確認され、2009年までに合計36頭(2001年の1例目及び死亡牛検査で確認された13例を含む)の感染が確認されています。
BSEに関わる日米の貿易条件の経緯
2003年12月、アメリカで始めてBSEが確認されたのを受け、日本は同年12月26 日、米国産牛肉の輸入停止措置をとりました。その後、日米間の専門家による現地視察、詳細な協議が行われ、2005年に内閣府食品安全委員会プリオン専門調査会が「生後 20カ月以下の若齢牛に限定し、脳やせき髄などの特定危険部位を除去するなどの条件が順守されれば、日本産牛肉と比べリスクの差は非常に小さい」という答申を提示しました。
この答申を受けて、日本政府は同年12月に、月齢20カ月以下の牛に限定して米国産牛肉の禁輸措置を解除しました。この際に、農務省(USDA)の農業マーケティング局(AMS)は日本向けの輸出認証(EV)プログラムを導入しました。
2013年2月1日に月齢制限は30カ月齢未満に変更となり、2019年5月17日以降のと畜分からは、月齢制限が撤廃されました。月齢を確定することは、本来安全性を決定するものではありません。OIEが定める国際基準では、「特定危険部位が除去されたすべての骨なし牛肉(機械的除去肉を除く)に対しては、(輸入国の)獣医当局は、BSEに関連する条件をどのようなものであっても付加すべきでない」としています。