アメリカン・ミートの安全性管理の基本情報残留物質検査プログラム(NRP)

食品安全検査局(FSIS)は、1967年に制定された「全米残留物質検査制度(NRP=National Residue Program)」に基づき、食肉中に残留する化学物質(農薬、動物用医薬品、添加物、加工助剤など)について常に監視し、違法に残留している食肉の流通を防止しています。

食品医薬品局(FDA)によって認可された動物用医薬品は、認可後もFDAが獣医と協力して監視と評価を継続しますが、動物用医薬品が実際に家畜に使用される段階になると、食肉における残留物などの規制はFSISが責任を負うことになります。
NRPでは、検査官が食肉処理施設でサンプルを採取し、食肉に残留物が出ないかを検査します。毎年、FSISの検査官は、去勢牛、未経産牛、経産牛、肉豚など18種類の家畜区分からサンプルを採取し、動物用医薬品や殺虫剤、化学物質など150種類以上ついて、残留物のモニタリングを行っています。

NRPには二つの要素があります。端的にいうと、次年度のサンプリング実施計画を示す「ブルーブック」と、前年度の検査結果を報告する「レッドブック」です。ブルーブックには、サンプル対象となる特定の物質や製品を示し、検査方針や残留物質検査を対象施設でどのように実施するかが定められています。

一方、レッドブックには、前年度のサンプリングで陽性、あるいは違反となった残留物質の検査結果について、化学物質や家畜の区分ごとに、また輸入品については輸出国ごとに報告されます。

食肉工場での残留物質検査のサンプリング

食肉工場で毎年行われるサンプリングは、複数の階層に分かれています。第一階層は、計画的サンプリングです。前年度に決定される年間計画に基づいて行うサンプリングで、サンプル数は統計学的モデルに基づき決められています。一定の信頼区間において1%の違反率を検出するために必要なサンプル数を、数学に基づく統計アルゴリズムを用いて決定しています。

第二階層は、対象を選定したサンプリングあるいは検査官主導型のサンプリングといえます。通常の食肉の安全性検査において枝肉を査察する中で、何らかの理由によって残留物質の可能性が疑わしいとされた場合に行われるサンプリングです。

第三階層は、牛、豚、羊等の家畜群全体を対象とするサンプリングです。生産者が残留違反を繰り返してきた場合等に行われます。家畜群が処理施設に送られる前にサンプルを採取し、残留物質が出ないかを検査します。

米国の輸入品に対する検査は、全て無作為のサンプル抽出が行われます。ただし、繰り返しの違反歴がある海外の生産者や特定の輸出国に対しては、拡大サンプリングや強化サンプリングのプログラムを実施しています。