04肉を食べて免疫力を上げよう

肉を食べて免疫力を上げよう

歳を重ねると免疫力が低下してくると言われていますがそれを改善する方法の1つが肉を摂取することです。
今回、肉食と健康について研究を重ねる日本応用老年学会理事長の柴田教授にお話を伺いました。

Tips01 粗食長寿説は迷信?!

日本では長い間、歳を重ねると粗食に努めることで健康で長生きできるという「粗食長寿」説が浸透しています。 しかし、これは大きな誤解で、 実は粗食が低栄養を招き、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなる恐れがあるのです。
20世紀初頭、日本人の動物性たんぱく質の摂取量は5%、95%が植物性たんぱく質でした。 時代と共にその摂取量は変化し、1979年に1対1になっています。これは、日本人が平均寿命世界一になった時点と一致します。

日本人の1人1日あたりの植物性たんぱく質と動物性たんぱく質摂取の推移 出典:柴田博『生涯現役「スーパー老人」の秘密』技術評論社、2006

日本人の平均寿命が50歳を超えたのは、1947年。
この時代から徐々に動物性たんぱく質の量が増加している。

Tips02 肉を食べると元気で長生きする

日本の長寿者の特徴を調べてみると、たんぱく質、特に動物性のたんぱく質の割合が高いことが分かります。たんぱく質は、心臓をはじめ各臓器、筋肉、神経伝達組織など、体を形づくり、生命を維持する上で欠かせない栄養素。 特に、肉に含まれる動物性たんぱく質が免疫力をあげるのです。 肉に含まれるたんぱく質の一種である、アルブミンは感染症、脳卒中、心筋梗塞に効果的であり、アルブミンが低い人ほど早期に死亡します。肉の摂取が高くなるほど、免疫力が高くなり、病気のリスクが低くなるのです。

日本人の1人1日あたりの植物性たんぱく質と動物性たんぱく質摂取の推移 出典:Shibata H et al:Nutrition and health 8:1651992

センチナリアンとは100歳を超えるお年寄りのこと。
日本人の平均と比べて動物性たんぱく質の割合が高い。

Tips03 肉が防ぐ、様々な疾患

肉は免疫力をあげるほかに、様々な病気を予防する成分が豊富に含まれています。例えば、精神安定を保つ役割があるセロトニンを増やす必須アミノ酸のトリプトファンが豊富に含まれており、脳神経機能を高めて、うつ予防に役立ちます。また、60歳を過ぎた頃から減ってくる脂肪酸の一種であるアラキドン酸は、 学習能力や記憶など能の働きに重要な役割を果たし、ボケ防止に効果的です

その他にも、血圧を下げる作用があるタウリン、そして動脈硬化を予防するオレイン酸も含まれています。また、エネルギーの代謝や酵素の働きを助けるビタミン・ミネラルも含有しているので、 皮膚や粘膜の角化を防いだり、ガンの予防 にも役立ちます。

食肉の特徴 (柴田博作成)
脳内物質のセロトニン(うつや自殺予防の働き)の原料である
「トリプトファン」が多く含まれている。
多幸感をもたらす「アナンダマイド」が含まれている。
肉の赤い色に含まれる「ミオグロビン」という「鉄」を含む成分が、野菜などの鉄の吸収もしやすくなる。
牛肉に多く含まれる「カルニチン」は、脂肪酸の代謝を促進しダイエットのためにもスタミナ源としても有効に働く。
「ビタミンA」「カルノシン」などの抗酸化物質が多い。
オリーブ油などをあまり摂らない日本人の場合、一価不飽和脂肪酸の供給源となる。

Tips04 血中のコレステロールが低いと死亡率が上がる

脂肪の一種であるコレステロールや飽和脂肪酸が下がると 脳卒中や脳梗塞になる可能性が高くなる ので、脂肪不足も問題です。

小金井市70歳住民の血中コレステロール値と10年間の総死亡率 出典 : 柴田博編『元気に長生き元気に死のう』(保険同人社、1994年)

沖縄県浦添市に次ぐ長寿市であった小金井市では、
コレステロール値が高いほど死亡率が低い。

Tips05 ビーフとポークの違い

主として、どの肉も免疫力を向上させますが、脂肪の量のちがいにより効果が異なります。

アメリカンビーフ

  • 脂肪燃焼でダイエット効果
    ビーフの赤身には、余分な脂肪の分解を促進してエネルギーに変えるカルニチンが多く含まれる。
  • 貧血予防
    鉄分は、ほうれん草の10倍の吸収力があるので貧血予防に役立つ。
  • うつ予防

アメリカンポーク

  • 食品の中で最もビタミンB₁が含まれている。
    ビタミンB1が不足すると、精神が不安定になってイライラしやすくなる。また、運動能力や集中量の低下を招く。
  • 疲労回復効果

美味しく食べて健康に生きる

従来、美味しい食べ物は体に悪い、美食は太りすぎるので短命になるといわれてきましたが、美味しいものを味わうことこそが 腸内細菌を活性化し、免疫力を上げる最大の秘訣です。 肉には旨味成分と多幸感をもたらす至福物質「アナンダマイド」が多く含まれているので、精神的な観点からみても健康に良い食品です。

中高年は年を重ねるにつれ、若い世代より肉を食べる量が減ってしまうので意識的に量を増やしていかなければなりません。一日に約60〜100g摂取することが目安です。 その点、アメリカン・ビーフは赤身とサシのバランスが良く、たんぱく質の割合も十分。また、やわらかくて食べやすいので、肉の摂取量が少ない高齢者には最適です。
健康で長生きするために、おいしく、栄養がある肉をよく食べることを心がけていきましょう。

PROFILE

桜美林大学名誉教授
柴田博教授

1937年北海道生まれ。北海道大学医学部卒業後、東京大学医学部で循環器疾患と疫学を学ぶ。現在は、桜美林大学名誉教授・特任教授、医学博士、日本老年医学会認定専門医、日本内科学会認定医。日本応用老年学会理事長をはじめ3つの学会の理事、5つの公益財団法人の役員を務めている。生涯をかけて学際的老年学の研究と教育に尽力。著書に「スーパー老人のヒミツは肉だけじゃない-室井摩耶子に注目-」(社会保険出版社)などがある。