
米国では、食肉の衛生と安全性を確保するために、
の3つの政府機関が主要な役割をはたしています。 この3つの政府機関は、それぞれが所管している法律に基づいて様々なプログラムを実施するとともに、合同の委員会を設けて協議し、緊密な連携プレーにより、食肉の安全性を厳しく規制しています。
米国では、食肉生産に使われる動物用医薬品について、FDAが休薬期間と残留基準を設定し、FSISがモニタリングや迅速テストなどによって、効果的に監視しています。モニタリングの結果は、FSISが実施する残留物質検査制度(NRP:National Residue Program)に反映されるため、家畜の種類別、化学物質の種類別に年間を通して残留違反の発生率に関する情報が収集されています。検体は、生体検査および解体時の検査に合格した家畜の中から、統計学的根拠により無作為に抽出されます。
食肉の検査結果については、毎年FSISが作成している「Domestic Residue Data Book, National Residue Program」で見ることができ、FSISに請求すれば直接入手することができます。
肉牛の肥育用に使用されているホルモン剤は、タンパク同化ホルモンとも呼ばれ、体タンパク質の合成を促進する作用があります。適度に脂肪の蓄積した赤身の多い肉質を作るので、体重の増加が早く、飼料効率も向上するため、アメリカだけでなく、オーストラリア、カナダなどでも使用されています。
米国では使用方法を規制するため、可食部ごと、ホルモンの具体的な製品ごとにFDAが残留基準を設定し、FSISがその残留実態を検査・監視しています。 因みにホルモンはヒトの体内でも作られるもので、野菜やミルクなどにも存在するものです。食生活や体内で作られるホルモンの量には個人差があり、食肉での残留レベルを一律に規定することはきわめて難しいため、使用する薬物ごとに人体に影響のない範囲を割り出しその範囲内で数値を決定しています。
米国養豚業界の全国組織である全米豚肉生産者協議会では、独自にHACCPの考え方に沿った「豚肉品質保証(PQA)プログラム」を策定し、豚の疾病を予防し、動物用医薬品や農薬の正しい使い方を推進するために活用しています。
豚肉品質保証プログラムは、全米豚肉生産者協議会が作成したレベルⅠ~Ⅲまでの指導用ブックレットに従って、段階的に生産者を教育するシステムになっています。養豚業者は在宅で豚肉の品質保証のためのマニュアルを習得することができるのです。
レベルⅠ~Ⅱで、動物用医薬品の取扱いと適正な使用方法の習得を目指し、レベルⅢでは、生産者各自が独自に工程の改善を行えるように、必要なサポートを提供します。PQAプログラムでは、養豚における動物用医薬品の残留違反防止のために、以下のような10の管理点を挙げています。
PQA Plusは2007年6月にそれまでのPQA等を統合して導入された新しいプログラムで、2つの要素が一本化されています。ひとつはPQAレベルⅢによる「PQAとしての食品の安全性」。もうひとつは肉豚福祉確保プログラム(SWAP: Swine Welfare Assurance Program)による「家畜の適正管理」です。
豚の適正管理は、動物管理、栄養、取扱い、適期の安楽死及び適切な治療法が重要という考えに基づいています。米国および海外の消費者の要望をともに満たすことが重要であるとして、策定されたプログラムです。
1989年にPQAが導入されて以来、PQAは養豚業界での啓発プログラムの最重要課題とされてきました。PQA Plus・プログラムは、豚肉生産と豚の適正管理を目的として、生産者に農場での適正生産計画(GPPs:Good Production Practice)に関する情報を提供しています。また、2008年からは第三者機関による農場の査察を開始しており、プログラムの有効性が評価されています。
BQAは、全国肉牛生産者協会(NCBA:The National Cattlemen’s Beef Association)が、有害物質の残留のない、安全で、衛生的な牛肉を生産するために開発したものです。カリキュラムとして、消費者の意向、牛群健康管理のためのチーム・アプローチ、獣医師の診断と援助、牛の個体識別、動物用医薬品の適切な取り扱いと管理、貯蔵、注射と処置、残留テスト、記録の保持、飼養管理と牛の取り扱い、環境との関連、そして、関連する規制と機関、などがあげられます。
牛の適正な飼養管理方法は、現在まで各州や関連団体でそれぞれ開発されてきましたが、今後はこのBQAを、統一的な食肉生産者の品質保証プログラムとして普及させていくことを目指しています。そのためにNCBAは、まずBQAを生産者のトレーニング・プログラムとして位置づけ、教育材料の提供等を推進しています。以上のような生産者独自の品質・安全性確保に加え、生産者と地元の大学にある畜産専門サービス機関との連携により、常に新しい飼養管理法、薬物情報などを収集することでより品質と信頼性の高い家畜生産を目指しています。つまり、生産者は自らも消費者であることで、消費者の要望が何であるかを常に認識しようとしています。
FSISでは、生産から流通、消費までの一連の流れの中で、病原菌の低減化を図るために病原菌低減化プログラムを推進しています。
病原菌の低減化を推進するにあたり、まずは生鮮食肉の実際の微生物レベルのデータを得るために、微生物数についての基礎的な調査を1992年10月より実施しました。 牛肉に関しては、1993年10月から1年間調査した結果、解体直後の牛肉には病原菌がほとんど存在していないことが確認されましたが、その後の取り扱いについては、監視が必要であることが示唆されました。
これにあわせて、1993年8月には、公衆衛生上重要なと体の病原菌検出のための、迅速微生物試験のガイドラインが発表されました。例えば抗原抗体反応を応用した迅速試験法などは、早ければ数時間、遅くとも2日くらいで結果が判定できるので、流通過程などでもいつでも微生物検査を行うことが可能です。
FSISでは、食肉中にどのような化学物質がどのくらい残留しているかを監視し、残留のある食肉の流通を防止する目的で、National Residue Program(NRP)という全国残留検査プログラムを1967年に発足させました。 NRPでは、モニタリング(通常検査)とエンフォースメント・テスト(強化検査)の2つの検査方法を使い分けて、安全性を確保しています。
HACCPの利点としては、
などが挙げられます。
食品の残留農薬や環境化学物質などの量を表す単位として、よくppm、ppb、pptなどが使われます。本当は、これは量の単位ではなくて、濃度の単位であり、日常生活でもよく使うパーセントの仲間です。
ppmは100万分の1、ppbは10億分の1、pptは1兆分の1で、パート・パー・ミリオン(ppm)、パート・パー・ビリオン(ppb)、パート・ パー・トリリオン(ppt)の略。ちなみに、センチメートルのセンチのもととなるセントは100分の1(1メートルの100分の1が1センチ、1ドルの100分の1が1セント)。なのでパート・パー・セントでパーセント。
とはいっても、やはりピンときません。そこで、目に見えるものに例えてみました。
| ppm | ppb | ppt |
|---|---|---|
| 甲子園球場のなかの1枚のはがき | 東京渋谷区のなかの1枚のはがき | 岩手県のなかの1枚のはがき |
| 12日間のなかの1秒 | 32年間のなかの1秒 | 32,000年間のなかの1秒 |
