ビーフ : BSE対策について

BSEについてQ&A

BSEとは

BSEとはどのような病気ですか?

BSE(Bovine Spongiform Encephalopathy の略。日本語では牛海綿状脳症)とは、 異常化したプリオンたんぱく質が病原体となって引き起こされる牛の病気で、1986年に英国で発見されました。 BSEに感染した牛は、中枢神経系組織に蓄積されたBSE病原体によって徐々に神経細胞を破壊され、死に至ります。 BSEに感染した牛の脳を顕微鏡で見ると、非常に細かい穴がたくさんあいたスポンジに似ているので、海綿状脳症と名付けられました。 狂牛病は俗称で、牛がよろよろ歩きをする様子からこう呼ばれるようになりました。

潜伏期間はどのくらいですか?

2年から8年の潜伏期間の後、発病します。牛は麻痺、歩行困難、起立不能などの症状で死に至ります。その経過は2週間から6ヵ月です。

BSEの原因はなんですか?

異常プリオンたんぱく質とよばれる特殊なたんぱく質が、病原体といわれています。

羊には、BSEとよく似たスクレイピーという脳の病気が200年以上前からあったようです。このスクレイピーもプリオンが原因となっています。

英国では、1970年代後半から80年代前半まで、羊を牛の飼料にしていました。BSEは、スクレイピーにかかった羊の組織が混じった飼料(肉骨粉)を与えたために発生したとされています。 プリオンには正常なものと異常なものがあり、異常なプリオンだけがBSE病原体になります。

BSEはどのように牛から牛へ感染するのですか?

BSEは細菌やウイルスによる他の感染症のように空気や飛沫により感染するものではないため、 鳥インフルエンザのように群れの中で爆発的に広がったり、集団発生するようなものではありません。 多くの調査・研究では異常プリオンに汚染された牛の肉骨粉を牛に飼料として与えたことが原因と考えられています。 アメリカでは、牛に肉骨粉を食べさせることを1997年から法律で禁止しています。

BSEは人間にうつるのですか?

BSEが人間にうつった場合は、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD=新型ヤコブ病)を発症すると考えられていますが、その確率はかなり低いものです。英国の研究によると、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病は、BSE病原体を含む食品を食べた場合に発症すると考えられています。 また、BSE病原体は、牛の脳や脊髄といった特定危険部位(SRM)のみでしか発見されていませんので牛肉を食べても人間にはうつりません。

諸外国でのBSE発生状況はどのようになっていますか?

BSEは世界的に飼料規制や特定危険部位(SRM)除去などの対策が講じられた結果、近年の発生頭数は急激に減少しています。全世界でこれまでに19万672頭(国際獣疫事務局OIE / 2017年2月2日現在)が確認されていますが、発生のピークは25年前の1992年(世界計3万7316頭、うちイギリスが3万7280頭)でした。2010年は45頭、2016年は2頭の発生にとどまっており、飼料規制の導入・強化により各国でのBSE発生リスクは大幅に低下しています。

アメリカでは過去に4頭が報告されていますが、このうちの1頭はカナダで生まれた生体輸入牛でした(2003年、カナダの統計に含まれる)。残りの3頭はいずれも10歳(120カ月齢)以上の牛で、すべて非定型BSE*であることが確認されています。

一方、日本では過去に36頭が報告されていますが、2009年1月(2000年生まれ、101カ月齢の死亡牛)以降の報告はありません。なお、日本で確認された21、23カ月齢の非定型BSEは感染性が認められず、人への感染性は無視できると判断されています。この2頭を除く、と畜場におけるBSE検査で陽性となった牛の月齢範囲は57~185カ月齢、平均は88.0カ月齢。死亡した牛のサーベイランス結果ではBSE感染牛と確定された牛の月齢範囲は48~102カ月、平均75.7カ月齢となっています。

2012年に食品安全委員会が審議した日本、アメリカ、カナダ、フランス、オランダの5カ国では、飼料規制措置が講じられており、2004年9月以降に生まれた牛でBSE感染牛は確認されていません。

  • *非定型BSE
    非定型BSEは、発症の時期及び頻度が定型BSEとは異なっているため孤発性のプリオン疾患と考えられています。
    これまでに日本を含め世界の13ヶ国から約60頭の非定型BSEが発見されています。主に高齢牛に見られ、発生した非定型BSEのほとんどが8歳以上の高齢牛でした。 感染性については、定型BSEと同様に飼料からの要因で感染することも否定できませんが、非定型BSEには伝達性がないというのが一般的な見方となっています。

世界のBSE発生件数の推移

  • 発生のピークは1992年
  • BSE対策の進展により、発生頭数は大きく減少

BSE検査について

BSEにはどんな検査方法があるのですか?

BSE検査はエライザ法、ウエスタンブロット法、免疫組織化学検査 (IHC) 、病理組織検査があります。日本ではエライザ法をBSEのスクリーニング検査として採用し、残りの3種類を確定診断に使っています。 現在の検査方法はと畜したあと、牛の脳の一部を採取して検査をする方法であり、生きている牛を検査しているのではありません。

全頭検査を行わないのはなぜですか?

特定危険部位(SRM)を取り除けば牛肉は安全であることなどの科学的根拠に基づいて、全頭検査を実施していません。 BSEの発症は、異常プリオンが長い間に蓄積して起こるものですが、脳に蓄積している異常プリオンが少ないうちは検査しても見つけることができません。異常プリオンは長い年月をかけて次第に増加・蓄積し、その後BSEを発病します。現在の検査では、若い牛の脳を検査しても異常プリオンの蓄積が少ないため検出されないことが多いことから、検査の対象を世界的な基準でもある30ヵ月齢以上にしています。 日本では、BSEに対する不安を収束させるために、食用牛の全頭検査を開始しました。

すべての牛に対してと畜前の検査が行われるのですか?

アメリカにおける連邦政府の検査施設でと畜されるすべての牛と牛肉は、米国農務省(USDA)の動植物検査局(APHIS)の獣医官と食品安全検査局(FSIS)検査官の検査の対象になります。 中枢神経系の障害の疑いを含む疾病の兆候を特定するために、牛に対する慎重な検査が行われます。 次に、疑いのある牛に対しては、APHISの獣医による再検査が行われ、と畜の可否が決定されます。全身疾患の症状が見られる動物が人間の食品として供給されることは認められていません。

BSE用語解説

プリオン

ヒトでは第20番染色体に存在するプリオン遺伝子が産出するたんぱくのことです。哺乳動物から酵母に至るまでプリオン遺伝子をもっています。プリオンは、運動を支配する神経細胞の維持や睡眠調節に関係するらしいという研究もあり、正常なプリオンは病気を起こすとは考えられていません。異常プリオンが増加して発生する脳疾患をプリオン病といい、BSEもその一つです。

肉骨粉

牛を解体するときに出る食用に適さない臓器や骨などを加熱処理し、乾燥させ作った粉末状のものです。以前は飼料として使用されていたところもあります。

特定危険部位(SRM)

国際獣疫事務局(OIE)では、BSE規定においてBSEリスクの国別評価に応じて特定危険部位(SRM)の範囲を定めています。日本やアメリカなど「管理されたリスクの国」では全月齢の「扁桃」「回腸遠位部」、30カ月齢以上の「頭蓋(骨格、脳、眼など)」、「せき髄」「せき柱(背根神経節を含む)」が特定危険部位(SRM)の範囲として規定されています。 2012年の食品安全委員会の答申では、日本が現行「全月齢」としている頭部(扁桃を除く)、せき髄およびせき柱を「30カ月超」とした場合のリスクの差は『あったとしても非常に小さく、人への健康影響は無視できる』と結論付けられました。

非定型BSE

非定型BSEの発生原因の詳細は不明です。定型BSEと同様に飼料からの要因で感染することも否定できませんが、発症の時期及び頻度が非定型BSEと定型BSEとは異なっているため孤発性のプリオン疾患と考えられています。これまでに日本を含め世界の13ヶ国から約60頭の非定型BSEが発見されています。主に高齢牛に見られ、これまでに発生した非定型BSEのほとんどが8歳以上の高齢牛でした。非定型BSEの感染性については、現在も研究が進められていますが、非定型BSEには伝達性がないというのが一般的な見方となっています。

国際獣疫事務局(OIE)

国際獣疫事務局(OIE:Office International des Epizooties)。動物の伝染病に関する国際機関。国際動物検疫に関する国際基準を策定する国際機関として位置付けられ、世界貿易機関(WTO)の諮問機関の一つ。178の国と地域が加盟し、日本は1930年に加盟しています。