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TRADER'S Be & Po

vol.483 Dec.8.2025
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
市況ニュース カットアウト、生体牛ともに下落
供給増で豚先物下落、来春のイースター商戦に影響か
トピック スペインで1994年以来初のアフリカ豚熱確認
韓国、養豚場でASF発生受け警戒レベル引き上げ
中国の母豚群、10月に4000万頭を下回る
ワールドトレード 逆風下でも堅調な米国産食肉の輸出需要
USMEFインフォメーション USMEF新役員選出、新会頭にジェイ・タイラー氏
ファクトシート ポーク(2025年10月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
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市況ニュース

カットアウト、生体牛ともに下落

 
 

牛肉生産量が前年を下回る中で、年末年始用の需要期を迎えたものの、カットアウト価格が上昇する兆候は見られない。11月9日週の総合カットアウト価格は100ポンド当たり375.03ドルで、前週比2.83ドル安。チョイスは平均371.78ドル(前週比2.56ドル安)、セレクトカットアウトは平均358.70ドル(同0.21ドル安)だった。

11月16日週は、前半4日間でチョイスが0.55ドル高の371.28ドルとなったが、アナリストは、「現在の価格を維持するには、牛肉需要の維持が欠かせない。しかし、牛肉の購入量を減らしたり、もっと安い肉にシフトしたりしている消費者も多く、他の食肉との競合がさらに激化するだろう」と指摘する。

生体牛の現物価格は続落した。11月9日週の生体牛平均価格は225.06ドル、枝肉価格は350.94ドル。前週比でそれぞれ3.64ドル安、7.39ドル安だった。11月16日週も続落傾向で推移した。水曜日までは取引が少なく、アイオワで生体牛724頭が220ドルで取引された。水曜日には比較的活発な取引が行われ、北部では生体牛が217〜220ドル、枝肉344ドル、南部では生体牛が222〜224ドルで取引された。

 

※2025年11月21日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

供給増で豚先物下落、来春のイースター商戦に影響か

 
 

米国農務省(USDA)は9・10月の生産統計の一部をまだ更新していないが、11月9日週の週間豚と畜頭数は、270万1000頭で前週より約7万頭多く、週間としては今年最高となった模様だ。

季節的な供給増加によって、価格も下押しされている。政府機関の閉鎖でデータ提供が停止する前の9月末時点では、投機資金はネットロングポジション(買い持ち高)を大幅に保有していたが、ここ数週間で大きく縮小した可能性が高い。

カットアウトのチャートには、夏季に形成された価格トレンドが反映されている。当初は、季節的な下落を含むこの傾向が継続した場合、12月初旬のカットアウト価格は100ポンド当たり100ドル近辺と予想されていた。12月限のホッグ先物は91ドル前後で取引されていたことから、先物市場もこの前提で動いていたようだ。

しかし、カットアウト価格がこの傾向から乖離するにつれて、市場の価格予想も変化した。生体豚の現物価格は、前年比で約8ドル低い水準にある。この二つの要素が組み合わさり、12月限のホッグ先物は現在80ドルを下回って取引されている。これは9月の先物価格が示唆した水準より13%も安い。

豚の供給が増加する中で、今後のカギとなるのはモモの価格だろう。例年、モモの価格は100ポンド当たり100ドルを上回り、感謝祭まで同水準を維持した後、クリスマス直後に底を打つことが多い。

しかし、2月限のホッグ先物は80ドルを下回っており、供給業者がリスクヘッジを行う余地が生じている。また小売業者にとってもモモ価格が80ドル台前半なら、来年のイースター(4月6日)の計画策定を始める好機になるかもしれない。

 

※2025年11月17日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

  米国の週当たり豚と畜頭数の推移
  ポークカットアウト価格の推移
   
トピック

スペインで1994年以来初のアフリカ豚熱確認

 
 

スペイン農業省は11月28日、バルセロナ近郊で死骸が発見された2頭のイノシシからASF(アフリカ豚熱)のウイルスが検出されたと発表した。同国でASFが確認されたのは、1994年以来初めてのことだ。

同省は欧州連合(EU)に通知し、感染地域で緊急措置を発動したと述べた。調査官が感染源を調査する間、養豚場に対し安全対策を強化するよう要請した。スペインの豚肉生産量はEU域内で第一位。欧州でのASFは、ドイツやクロアチアの豚肉生産にも影響を与えている。

◎中国がバルセロナ産豚肉の輸入を禁止

中国は、スペインで約30年ぶりにASFが確認されたことを受け、バルセロナ県からの豚肉輸入を禁止した。発生地域にある12社の工場からの豚肉輸入が停止された。これには主要輸出業者であるコスタ・フード・ミートやマタデロ・フリゴリフィコ・アビニョも含まれる。

中国はEU産豚肉に反ダンピング調査に伴う関税を課しているが、スペインは中国との関係強化と豚肉市場でのシェア拡大を図ってきた。スペインはEU最大の豚肉生産国であり、生産量の約4分の1を占める。年間豚肉輸出額は約35億ユーロ(40億5000万ドル)にのぼる。

スペイン農業省の高官は、「スペインと中国は、ゾーニング協定を締結しているため、発生地域以外の生産者は、今回の禁止措置の影響を受けないはずだ。予防措置として中国向けの豚肉輸出を全て停止するが、中国がプロトコル発動を宣言すれば、ウイルス影響を受けていない地域からの輸出を再開できる」と述べた。同高官は、制限と特別監視は12カ月間以上続くと付け加えた。

韓国と米国もスペインと地域化協定を結んでいるため、14の食肉加工工場があるバルセロナ県を除いて、スペインの他地域からの輸入は継続される。しかし、メキシコと日本への輸出は制限される。両国はスペインと地域化協定を結んでいない。

◎苦境に立つ欧州の豚肉産業

フランスの商品調査機関の食肉アナリストは、「欧州の豚肉市場は、7月以降に価格が20%下落したことで、既に苦境にある。EU最大の豚肉輸出国であるスペインが禁輸措置を受ける影響は大きく、特に中国を始めとするアジア市場での影響が懸念される」と予想する。

スペインの豚肉業界団体「Interporc」は、野生のイノシシが発見された地点から半径20キロメートル(12.4マイル)圏内の養豚場は、操業と製品販売に制限を受けると発表した。同国農業省によれば、この範囲内には39の養豚場が存在する。

農業団体「Asaja」は、業界は発生に備えているとしながらも、当局に対し、家畜への感染リスクがあるイノシシやウサギなど野生動物の「制御不能な存在」に対処するよう求めた。

ASFウイルスは、人間には無害だが、豚には致命的であり、近年ヨーロッパで西へと拡大している。大規模な豚肉産業を持つドイツでも既に感染が確認されており、多くの国々がドイツ産豚肉の輸入禁止措置を取っている。ここ数ヶ月、クロアチアも発生の封じ込めを試みている。

スペインの2024年の中国向け豚肉輸出量は54万トン超で、輸出額は11億ユーロ(12億8000万ドル)に上る。

  中国向け豚肉輸出量の上位7カ国(各年1−7月累計、内臓含む)
 

※2025年11月28日・29日 Foodmarket.com、Reuters MADRID/BEIJING

 
 

韓国、養豚場でASF発生受け警戒レベル引き上げ

 
 

韓国は11月25日、国内最大の養豚地域にある忠清南道唐津市の養豚場でアフリカ豚熱(ASF)が発生したことを発表した。これを受けて、当局は警戒レベルを四段階で最も高い「深刻」に引き上げた。

農林畜産食品省の声明によると、養豚場での発生に伴って約1423頭の豚が殺処分され、現在は拡大の危険性がある約140の関連養豚場を厳重に監視している。また、感染拡大のリスクを抑えるため、国内の全ての養豚場およびその他の畜産施設に対して、48時間の「移動制限」命令を発令した。

今年これまでに韓国では6件のASF発生が確認されているが、国内最大の養豚地域である忠清南道では初の発生事例だという。農林畜産食品部は、ASFの拡大を防ぐため、利用可能な全ての資源を動員するよう命じた。

 

※2025年11月25日 Foodmarket.com

 
 

中国の母豚群、10月に4000万頭を下回る

 
 

中国農業農村部は、10月末時点で中国の母豚群が4000万頭を下回ったと発表した。中国は過剰生産能力の抑制に向けた取り組みを強化している。前回のデータによると、9月末時点の中国の母豚群は4035万頭だった。

中国は、豚肉の生産過剰と消費低迷に直面する中、主要生産者に対して生産削減を要請している。会議において同省は養豚生産能力の規制強化を求め、母豚群の全国目標を「動的に」調整すると述べ、また急激な市場変動を防ぐために、市場サイクルに反した調整を先回り実施する必要性も強調した。大規模養豚業者に対して品質と効率の向上を指導すると同時に、中小規模の農場が「適切な規模」の経営を展開できるよう支援すると付け加えた。

 

※2025年11月21日 FOODMARKET.com

 
ワールドトレード

逆風下でも堅調な米国産食肉の輸出需要

 
 

米国の食肉産業は、国際市場で重大な障壁に直面しているが、主要な輸出先では、米国産食肉の品質と安定性を求める顧客が多く、需要は依然として堅調だ。これは、米国食肉輸出連合会(USMEF)のダン・ホルストロム会長兼CEOが、USMEF戦略計画会議で伝えたメッセージだ。

米国の豚肉輸出量は、昨年の記録的なペースをわずかに下回っているが、減少の理由は今年前半の中国との報復関税のエスカレートによるものだ。

政府機関閉鎖の影響で、豚肉の輸出データは7月分までしか入手できないが、主要市場であるメキシコ向けの出荷量は記録的なペースで推移している。一方で、中国における障壁により、牛肉輸出が受ける打撃は深刻だ。米国産牛肉は報復関税に直面しているだけでなく、工場登録の不当な抹消や、大多数の米国産牛肉加工工場・冷蔵施設に対する登録更新の拒否といった問題にも直面している。

中国が米国産牛肉を完全に再開するには、中国側での複数の措置が必要であり、この閉鎖状態は来年まで続く可能性がある。これは明らかに中国が握っている政治的なカードだ。

同会長は、「米国通商代表部(USTR)がこの状況をよく認識かつ理解して、十分な情報を得ていると我々は確信している」と述べた。一方で、「複数の貿易相手国との継続的な交渉を行うことで、特に東南アジアにおいて新たなビジネスチャンスを得られる可能性がある。また、既存の自由貿易協定(FTA)の保護と防衛も喫緊の優先課題だ。過去10年間で、FTA加盟国への米国の食肉輸出量は30%以上拡大し、現在では総輸出量の76%を占めている」と述べた。

 

※2025年11月21日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
USMEFインフォメーション

USMEF新役員選出、新会頭にジェイ・タイラー氏

 
 

米国食肉輸出連合会(USMEF)は11月14日、新役員を選出した。2025-26年度のUSMEF会頭には、アイダホ州ボイジーに本社を置くアグリ・ビーフ社のコーポレート・アフェアーズ担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、ジェイ・タイラー氏が就任した。就任にあたって、同氏は以下のように述べた。

アグリ・ビーフ社に入社した当初、米国内市場のみの販売では、処理する家畜1頭あたりの価値を最大化できないと認識した。最大の価値を得るには、国際市場に進出して販路を拡大する必要があった。2000年代初頭から数多くの海外出張を重ね、日本を含むアジア諸国を訪問する際には、USMEFのスタッフとコンタクトして現地の流通網の全体像を把握するとともに、商談や会議の設定を支援してもらった。USMEFは、当社の企業史とブランド史において、まさに不可欠な存在だった。今日この話をしたのは、他社のビジネス成長やUSMEFの支援方法に関する参考になると思うからだ。

米国産食肉が世界的な顧客基盤の拡大を続ける上で、今後も品質の差別化が不可欠だ。世界が米国産食肉を購入するのは、単に供給があるからではない。卓越した品質があるからだ。米国産食肉は品質、味、安全性、持続可能性、信頼性の最高基準だ。世界の所得が上昇するにつれ、米国産の牛肉、豚肉、羊肉に対する需要はさらに高まっている。しかし、国際市場で他国との競合が高まってきているのも事実であり、我々はマーケティングへの投資を継続しなければならない。輸出先の多様化と同時に、既存の貿易相手国との努力によって獲得したマーケットシェアを維持ことも重要だ。

長年のパートナーを当たり前のものと思ってはならない。日本、韓国、台湾、メキシコといった市場は極めて重要であり、数十年にわたって信頼関係を築いてきた貿易相手国だ。我々はこうした関係を保持・強化して、彼らの信頼と信用を引き続き勝ち取らなければならない。

 

※2025年11月14日 USMEF news release

 
 

写真左=新会頭就任にあたり挨拶するジェイ・タイラー会長。右=2025-26年度USMEF役員チーム(左からロス・ヘイブンズ書記兼会計、ダリン・パーカー副会頭、デイブ・ブランツ次期会頭、ジェイ・タイラー会頭)。

 
 

ポークpファクト・シート