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TRADER'S Be & Po

vol.461 Jan.14.2025
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
年頭所感 アメリカンミートの新たな『VALUE』を訴求
市況ニュース 生体牛横ばい、枝肉重量が過去最高を記録
肉豚供給は予想外に少ない、パッカーの利益圧迫
トピック 次期政権の関税、市場見通しの不確実性増す
生産動向 フィードロット飼養頭数、今後は減少傾向に
リテール 食肉販売で2025年に注目すべきトレンド
マーケット・データ 生体牛・豚価格、カットアウトバリュ、穀物先物価格
ファクト・シート ビーフ(2024年10月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
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年頭所感

アメリカンミートの新たな『VALUE』を訴求

米国の食肉業界を代表し、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

2024年は、日本の食肉業界が多くの変化に直面した一年でした。コロナ禍からの回復が進む中、外食産業の需要回復が見られた一方、円安が進みあらゆるモノの値段が高騰し、家庭内消費では節約傾向が見られました。

2025年の米国の生産予測については、牛は引き続きキャトルサイクルの減少局面が続く予測で、いつ牛群の再構築が始まるか注目されます。ビーフの生産量は4%ダウンする予測です。ポークについては生産効率が向上していることもあり、生産量は2%増える予測です。

2025年の日本のマーケット予測は困難ですが、ある経済研究所は円安傾向が一服し、賃金が上昇して、物価は2024年ほど上昇せずに、個人消費は緩やかに回復するという比較的楽観的な予測をしています。日本経済を再び成長軌道に乗せる好循環を生み出せるかどうか重要な年になるのではないでしょうか。

そのような中、弊会では2025年に日本市場で以下のチャレンジを行いたいと考えております。

  • 外食産業でのアメリカンビーフ、ポークの販促拡大
  • 日本の各エリアでの販促強化
  • アメリカンスタイルのスモークBBQの提案(ブリスケット、ポークリブ等)
  • CVS、惣菜向け提案拡大
  • とんかつプロジェクト

これらのチャレンジを通じて、食肉業界の方々、消費者の皆様にアメリカンビーフ、ポークの新たな『VALUE』を訴求していきたいと思います。
最後に皆さまにおかれましては、本年もこれまで同様のUSMEFの活動にあたたかいご支援をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

米国食肉輸出連合会(USMEF)
ジャパンディレクター 加藤 悟司

 
  アメリカンビーフ及ごちポロゴ画像
 
市況ニュース

生体牛横ばい、枝肉重量が過去最高を記録

 
 

年末年始の生体牛の現物取引は、パッカーがフル稼働週に向けた買い付けを行ったにもかかわらず、鈍い滑り出しとなった。12月第4週の主要5州の去勢牛平均価格(100ポンド当たり)は194.81ドル、枝肉価格307.05ドル。それぞれ前週比で8セント高、1.41ドル高だった。

12月30〜1月4日までの週は、月・火曜日の取引量が極めて少なく、生体牛はアイオワで196〜197ドル、カンザスで192〜193ドル、木曜日には南部平原で生体牛が195ドルで取引された。

一方カットアウト価格は、クリスマス週にチョイスが6.53ドル上昇して322.38ドル、セレクトは5.22ドル高の291.13ドルをつけた。年末年始の週は、前半3日間でチョイスがさらに1.10ドル上昇、セレクトは3.10ドル上昇した。

12月第3週のカットアウト(カット、ひき材、トリム)平均価格は316.19ドルで、前週比5.79ドル高だったが、同週の牛枝肉重量は過去最高を更新した。全体の平均重量は873ポンドで、前週比5ポンド増、前年比25ポンド増。これは、同週のと畜頭数61万5629頭に1万8150頭を追加したに等しい。

未経産牛の平均重量は871ポンド(同5ポンド増・同23ポンド増)、去勢牛は953ポンド(同3ポンド増・11ポンド増)。枝肉重量はこの10年間でかなり重くなっている。2014年10月まで、去勢牛が900ポンドを超えることはなかったが、昨年10月中旬に950ポンドまで上昇。未経産牛の平均重量も2014年10月は821ポンドだったが、昨年10月に863ポンドまで上昇した。

 

※2025年1月3日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

肉豚供給は予想外に少ない、パッカーの利益圧迫

 
 

ポークのカットアウト価格は、年末年始の需要とメキシコのモモ需要がけん引しているが、価格上昇の第一要因は、と畜頭数が予想外に少ないことだ。例年、豚のと畜頭数は第4四半期にピークを迎え、感謝祭の2週間後に最多となるが、2024年は予想外の展開となっている。

9月の豚飼養動向調査では、9〜11月に出荷される豚の増加率は2%増(3〜5月期の子豚生産頭数)から4%増(9月1日時点の肥育豚飼養頭数)までの間と予想されたが、同期間の週間と畜頭数は前年をわずかに下回った。感謝祭後の2週間のと畜はそれぞれ260万2000頭・256万頭で、前年比ではそれぞれ2.5%減、5.0%減となった。

さらに、春夏季には前年を上回っていた生体豚の重量は、その後横ばいになり、現在は前年と同水準となっている。この供給不足がカットアウト全体を下支えし、特にモモやトリムなど、短期的な需要に弾性のない品目は強い影響を受けている。

一方で、ロインプライマルは前年より安い価格で推移している。クリスマス需要が終わると、モモの価格は下落すると予想されるものの、ここ数週間でパッカーのマージンはかなり圧縮されている。今後は土曜日のと畜頭数を減らして回復を図る動きが強まるだろう。12月第2週の土曜日のと畜頭数は15万頭で、前年の半分だった。

 

※2024年12月14日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

  ポークパッカーの粗利益計算値の推移
 
トピック

次期政権の関税、市場見通しの不確実性増す

 
 

米国の肉牛生産者は、ここ数年にわたって、牛飼養頭数の減少と旺盛な牛肉需要による黒字を享受してきた。しかし、今後の大きなワイルドカードとなるのが、次期政権の関税政策だ。カナダとメキシコからの全商品に25%、中国からの全輸入品に10%の追加関税、BRICS諸国からの輸入品に100%の関税を課すという、トランプ大統領の”脅し”が実行に移されるかどうか注視される。

一方、牛肉加工業者は今年も赤字になりそうだ。2024年はすべての等級の肉牛が記録的な価格をつけた。生体牛価格も主要5州の去勢牛平均が186.68ドルとなり、前年比で6.3%上昇した。

USDAは、2025年の生体牛価格を昨年より2.3%高い平均191ドル、肥育素牛の平均価格を同8.1%高の272.50ドルと予想している。生産者は再び価格上昇の恩恵を享受することになるが、その上昇幅は2024年よりも小さくなる。

供給サイドの大きな問題は、価格の上昇を追い風に、繁殖農家が未経産牛の保留を増やし、目に見える形で牛群が拡大し始めるかどうかである。これには干ばつ・関税・牛肉需要減の3つが、潜在的なマイナス要因として考えられる。

2025年の牛肉生産量は、前年比5%減と予測されている。これによって牛肉の小売価格が上昇し、需要がより豚肉や鶏肉にシフトするようになるかもしれない。関税の発動によって、価格予測が覆る可能性もある。税率が低くとも関税が発動されれば、米国の企業や消費者の様々なコストが急激に上昇する可能性がある。農業団体は、「食肉を含む米国産農産物の輸出販売が難しくなると同時に、農家・食品メーカー・消費者のコストも上昇する」と指摘する。

前述の3カ国が米国の食肉輸出に報復関税を課した場合、食肉業界にとって不可欠な貿易に深刻なダメージを与える可能性がある。北米3カ国の結びつきの強さを考えれば、関税の経済的影響は計り知れない。2024年の農産物輸出先で、メキシコは初めて第1位になった(300億ドル)。2位はカナダ(290億ドル)、3位は中国(257億ドル)だった。

 

※2025年1月3日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
生産動向

フィードロット飼養頭数、今後は減少傾向に

 
 

米国農務省(USDA)が発表したフィードロット飼養動向(COF)によると、12月1日時点の総飼養頭数は1198万2000頭(前年同月比0.3%減)。11月の導入頭数は179万6000頭(同3.7%減)、出荷頭数は172万5000頭(同1.5%減)だった。

アナリストは、「例年COFは5月下旬から6月に季節的な底を迎えるため、今後6カ月間は減少傾向をたどるだろう。過去5年間の年初から季節的な底までの減少頭数は平均64万7000頭だった」という。

飼養頭数は減少するものの、「フロントエンド(肥育日数150日以上の牛)は6月に入っても前年を上回ると予想される。2024年は、1月から6月にかけてフロントエンドの牛が48万3000頭増加したが、今年は61万6000頭増加すると推定される。前年比では13万3000頭、27.5%の増加になる」と予想する。

これは牛肉の生産・供給面における明るい材料の一つだが、さらに、年初の枝肉重量は前年を大幅に上回ると予想されている。しかし、2024年には限定的だった未経産牛の保留が加速すれば、2025年に導入可能な肥育素牛と子牛はさらに制限されるだろう。

 

※2024年12月3日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

 
 
リテール

食肉販売で2025年に注目すべきトレンド

 
 

肉に特化したマーケティング会社Midan’s社が選んだ2025年の食肉産業における注目すべきトップトレンドとその要点は以下の通り。

1. 健康とウェルネス:食肉産業における大きなチャンス

  • 消費者の健康志向が高まり、ウェルネス産業の規模は、2023年末に約6兆3000億ドル(世界の製薬業界の約4倍)に達した。
  • 食品を「薬」として捉える動きが高まり、消費者は高たんぱく質食品を求め、食肉が持つ栄養価の高さを評価している。
  • 食肉業界にとって、特にGLP-1薬(糖尿病や減量治療用)の利用者増加(成人1500万人以上)は、優れたタンパク源である栄養密度の高い食品として食肉を宣伝する絶好の機会である。

2. 「サステナビリティ愛好者」を知る

  • 同社の独自調査では、食肉消費者のほぼ3分の1が食肉を購入する際にサステナビリティを考慮している。
  • 消費者はサステナビリティを重視する一方、企業の「グリーン・ウォッシング(取り組みの誇張)」には懐疑的である。
  • 再生農業に注目が集まる中、透明で誠実な取り組みが求められる。

3. 健康と持続可能性が融合する「訴求型食肉」

  • 有機・放牧・グラスフェッドなど、特定の認証ラベル付きの肉への関心が増加している。
  • 特定の生産表示を特徴とする食肉を時折購入する消費者は、食肉消費者の4割にのぼる。
  • 訴求型食肉を求める消費者は、自然や環境に関する訴求に非常に意欲的で、健康志向と環境意識を満たす食肉製品が成長分野である。

4. 経済:根強いインフレ

  • 食品価格が上昇し、消費者は鶏肉や豚肉など、より安価な選択肢にシフトしている。
  • 牛肉価格が高止まりする中、挽肉は引き続き需要を牽引する。
  • 小売業者は、栄養価の面で食肉がお買い得であることを消費者に再認識させる必要がある。バリューカット、プレミアムカットといったターゲット層の掘り下げが重要である。

5. ソーシャルコマースの急成長

  • TikTokやInstagramのようなプラットフォームを利用したソーシャルコマースが拡大している。
  • 顧客の98%が今年一度はソーシャルコマースを利用する予定であり、昨年の68%から大きく跳ね上がっている。
  • 特に若い世代をターゲットにしたマーケティングに有効である。

6. Z世代:TikTok世代以上の存在感

  • Z世代はオンライン活動が活発である一方、ブランド志向ではなく、持続可能性や価値に基づく購買行動が特徴である。
  • 視覚的で楽しいだけでなく、信頼性と高い目的意識を持ったキャンペーンが求められる。

7. 進化し続ける小売体験

  • コストコなどの会員制ストアが若年層を惹きつける一方、Walmartはオンライン・プラットフォームで富裕層にリーチしている。
  • 消費者は複数の店舗で買い物をする傾向が強まり、価格と利便性が依然として重要である。

8. 小売大手によるオムニチャネルの進化

  • WalmartとAmazonは、個別化されたショッピング体験や迅速な配達を提供している。
  • あらゆる小売業者も、消費者選択の多様化に対応する必要がある。

9. AIによるデジタルマーケティングの変革

  • AI技術が顧客行動を予測し、マーケティング効果を向上している。
  • ソーシャル・データを活用して消費者行動を先読みすることが可能になる。

10.ソーシャルメディアはマイクロインフルエンサーの時代へ総括

2025年は、健康志向、持続可能性、経済的課題、テクノロジーの進化などが消費者行動を形成する重要な要因となる。特に食肉産業には、これらのトレンドに対応したプロモーションと製品開発が求められる。

 

※2024年12月16日 FOODMARKET.com

 
 

マーケット・データ

 
 
 
 
 
 
 

ポーク・ファクト・シート