米国の肉牛生産者は、ここ数年にわたって、牛飼養頭数の減少と旺盛な牛肉需要による黒字を享受してきた。しかし、今後の大きなワイルドカードとなるのが、次期政権の関税政策だ。カナダとメキシコからの全商品に25%、中国からの全輸入品に10%の追加関税、BRICS諸国からの輸入品に100%の関税を課すという、トランプ大統領の”脅し”が実行に移されるかどうか注視される。
一方、牛肉加工業者は今年も赤字になりそうだ。2024年はすべての等級の肉牛が記録的な価格をつけた。生体牛価格も主要5州の去勢牛平均が186.68ドルとなり、前年比で6.3%上昇した。
USDAは、2025年の生体牛価格を昨年より2.3%高い平均191ドル、肥育素牛の平均価格を同8.1%高の272.50ドルと予想している。生産者は再び価格上昇の恩恵を享受することになるが、その上昇幅は2024年よりも小さくなる。
供給サイドの大きな問題は、価格の上昇を追い風に、繁殖農家が未経産牛の保留を増やし、目に見える形で牛群が拡大し始めるかどうかである。これには干ばつ・関税・牛肉需要減の3つが、潜在的なマイナス要因として考えられる。
2025年の牛肉生産量は、前年比5%減と予測されている。これによって牛肉の小売価格が上昇し、需要がより豚肉や鶏肉にシフトするようになるかもしれない。関税の発動によって、価格予測が覆る可能性もある。税率が低くとも関税が発動されれば、米国の企業や消費者の様々なコストが急激に上昇する可能性がある。農業団体は、「食肉を含む米国産農産物の輸出販売が難しくなると同時に、農家・食品メーカー・消費者のコストも上昇する」と指摘する。
前述の3カ国が米国の食肉輸出に報復関税を課した場合、食肉業界にとって不可欠な貿易に深刻なダメージを与える可能性がある。北米3カ国の結びつきの強さを考えれば、関税の経済的影響は計り知れない。2024年の農産物輸出先で、メキシコは初めて第1位になった(300億ドル)。2位はカナダ(290億ドル)、3位は中国(257億ドル)だった。
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