世界と米国の獣医学関係者が、ベトナムで試験中のASF(アフリカ豚熱)ワクチンが承認間近であることを発表した。承認されれば、世界の養豚で甚大な被害を出している家畜伝染病の解決に向けた大きな突破口となることが期待される。
ASFは、過去数年間で世界の豚肉市場に2500億ドルの損害をもたらしてきた。最悪のケースは2018〜19年、世界最大の豚肉生産国である中国で発生した。国内の豚の約半数が死亡し、その被害総額は推定1000億ドルを超えた。
国際獣疫事務局(WOAH)の科学部門責任者であるグレゴリオ・トーレス氏は、ロイター通信の電話インタビューに対し、「ウイルスの複雑さゆえに、長きにわたり失敗が続いたが、米国の科学者が共同開発した2つのワクチンは、ベトナム企業による大規模なパイロット・スキームでテストされ、『非常に有望』との結果を示している」と語った。
トーレス氏は、「有効である可能性がこれほど高まったことはない。2つのワクチンは成功の可能性が最も高い」とし、世界的な承認の可能性を示した。両ワクチンは、ベトナムで試験的商業利用の承認を完了、次のステップとしてASFワクチンとしては初となる世界的な認可と、海外での販売の可能性が見据えている。
USDAのトーマス・ヴィルザック長官は、ロイターのインタビューで「米国はこのウイルスを防御しているが、予防的な措置としての購入にも関心がある」と述べている。米国にはASFウイルスが存在せず、開発が不可能だったため、ワクチン試験は、ASFが継続的な脅威となっているベトナムで実施されてきた。
現在、ASFの大規模な発生は見られないものの、ラボバンクは4月に、「世界の豚肉産業における最大のリスクはASF、特に中国でこの疾病が拡大する可能性がある」と警告している。
USDAの研究者によれば、ベトナムのNAVETCO社と共同開発したワクチンの1つである「NAVET-ASFVAC」は、試験で高い有効性と安全性が確認されたため、ベトナムの養豚農家に60万回分の販売が許可され、そのうち最初の4万回分は「安全性に問題なく実施されたという。
その後、昨年夏に妊娠中の母豚など接種すべきでない豚にワクチンの適応外使用を行った農場で数十頭の豚が死亡し、ワクチンの使用は一時停止された。「獣医師の適切な監視のもとで使用が再開された後は、問題は発生していない」という。
「NAVET-ASFVAC」は、世界中の子どもたちの定期接種に使用されているワクチンと同様、弱毒化された生ワクチン。ベトナムで試験が実施された2番目のワクチン「AVAC ASF LIVE」は、米国の研究者が発見し、ベトナム企業のAVAC社が商品化したもの。試験的利用の下、NAVET-ASFVACよりも多くの豚に投与されているが、USDAはまだ詳細なデータを確認していないとしている。
|