USDA-ERS(米国農務省経済統計局)が新たに行った調査研究で、中国の主要農畜産物4種(牛肉・豚肉・トウモロコシ・小麦)の国産物の価格が、米国産の輸入価格を大きく上回っていることが明らかになった。
2020年の中国の国産牛肉価格は、米国産牛肉の輸入価格を80〜90%も上回り、豚肉価格では200〜300%もの開きがあった。豚肉価格の格差は、中国でのASFの発生で国内供給が減少したことも影響している。トウモロコシは60%高、小麦は40%高。
ERSは、これらの価格差を踏まえ、貿易障壁を撤廃することで中国の米国産食肉と穀物の輸入はさらに増加するとして、短期・中長期の2つのシナリオで予測を示した。@短期的シナリオ(1年程度)は、リソースの流動性が規制されているため、生産および貿易の反応はやや限定的と見るもの、A中長期的シナリオ(5〜10年程度)は、農業生産者の土地、労働力、資本が流動化することを前提にしており、予測のポイントは以下のとおり。
牛肉:短期的シナリオでは、中国の輸入は25.2%増加する。中長期的シナリオでは、より大幅な輸入増加が生じる(46.3%)。
豚肉:極端な価格差があるため、輸入に相当な制約がかかることになる。このモデルでは、3ケタ台の輸入増加が推定される(短期的:117%、中長期的:402%)。ベースとなった2020年は、中国の豚肉価格が異例の高さだったことから、ERSはより価格の平坦な他の年をベースに、より価格差の少ない想定でも予測したが、その場合でも、貿易障壁が撤廃されれば2ケタ台の輸入増加の実現が可能だという。
トウモロコシ:短期的シナリオで推定される中国の輸入増加は12.5%、対して中長期的シナリオでは90.9%増。これは中国の関税割当制度(TRQ)の枠を超えており、超過分には65%の関税が課される。割当超過分に関税が適用される場合、推定結果は過大となる可能性がある。
小麦:短期的シナリオで48.2%、中長期的シナリオで248.9%増と推定される。
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