「Dow Jones」の報道によると、消費者の食費を巡る食料品店と外食店の競争が、激化の様相を示している。特に食肉においては熾烈だ。外食店は「価値」で食料品店に挑戦し、「外食の方が自炊するより得になる」と主張している。
労働局によると、7月の消費者価格は、食料品店が前年比13.1%高、外食店は同7.6%高。二者間のインフレ格差がここまで拡大したのは、1970年代以来だ。ファストフードチェーンやイートイン型外食店の広告には、価格の優位性や総合的な価値が強く打ち出されているという。
反対に、スーパーの食肉部門は最も好調な分野の一つだとする報道もある。2020年の記録的な伸びは下回っているが、食肉はパンデミック以降の成長軌道上にある。Nielsen IQのデータによると、今年の食肉の売上高は、5月28日までの52週間で852億ドル。これは年率5.8%増の成長で、2021年の5.9%増にほぼ匹敵する。
群を抜いているのは鶏肉の152億ドル・10.6%増。好調だった前年(139億ドル・4.6%増)をさらに上回る急激な伸びだ。次いで豚肉が6.2%増、七面鳥5.3%増、牛肉4.5%増と、いずれも2021年を上回っている。
イリノイ州に本社を置き、10州で71店舗を展開する「Fresh Thyme Market」の生鮮担当副社長は、「シーソルトをまぶしたショルダーローストやマリネしたテンダーロインなど、付加価値のある豚肉製品が支持されている。消費者は価格よりも、独自性と多様性を重視している。自宅で食事をする機会が増える中で、夕食にスパイスを利かせるための様々な選択肢が求められている」という。
◎付加価値型食肉の重要性高まる
インフレ、労働力不足、サプライチェーンの課題が相まって、今年は多くの消費者が支出を抑えているが、付加価値型の食肉製品はこれまで以上に重要になってくるとDow Jonesは指摘する。多くの小売業者が、より手軽に購入できるスライス、サイコロ、キューブなどのカット済み、あるいはシーズニングやマリネで味付けした調理済みの食肉製品の販売を強化している。
FMI調査の「2022 Power of Meat」によると、付加価値型食肉の売上額は4.7%増加し、2021年の販売額は50億ドルを超える勢いだ。食肉購入者の約67%が、付加価値型の製品を「頻繁に」または「時々」購入すると回答している。購入動機は「時短のため」28%、「味が良いため」22%、「目先を変えるため」20%。
Midan Marketingのアニー・ヘンネン氏は、「パンデミックによる自炊の増加から2年が経ち、消費者は新たな味を求めて、調理手順が簡単かつ簡便で、目新しくおいしい食品を探している」と説明する。
「付加価値型の食肉は、食の体験をもたらす時短アイテムだ。付加価値型食肉に効果的なマーケティング手法は、製品を“探してもらう”こと。例えば、利便性を求めている消費者に対して、ラベルの訴求は効果が薄い。しかし、クーポンや店内のクロス・マーチャンダイジングは有効な手法になる」と指摘する。
消費者の経済的懸念が続く限り、素材としての食肉の売上は減少するとの見方もあり、付加価値型製品へのシフトを推し進めることが重要だ。しかし同時に、より多くの消費者が安売りを待ち望み、ノーブランド製品に切り替える傾向も強まってきている。
◎消費者の予算意識高まる、自炊と外食どちらが得か
パデュー大学が行った調査では、5カ月前に比べて、食品価格の上昇に備えたアメリカ人の行動の変化が顕著になっているという。安売りや値引き品を探している消費者の割合は、過去最大の28%にのぼり、ノーブランド製品に切り替える人も増えている。
パデュー大学の食品需要分析・サステナビリティセンターを率いるジェイソン・ラスク氏は、「値引き品やノーブランド品の購入は、消費者の間で節約意識が高まっている明確な兆しだ。食費は、上半期の数か月間で増加した後、現在は比較的一定している。これは、食料品にかける金額を上げずに済む方法を、消費者がより意識していることを示している」と分析する。
一方でDow Jonesは、バーガーキング、マクドナルド、チーズケーキ・ファクトリー、アップルビーズの最近の決算報告では、「消費者は、家で料理するよりも外食することに価値があると考えるようになっている」と述べている。「厳しい環境にあっても、素晴らしい食事、サービス、価格を提供しなければならない」とバーガーキングのCEOはコメントする。
外食上位企業の中で5〜8月に最もアクセスされた広告を分析したところ、その58%がお買い得品や価格、モバイルアプリ、ロイヤリティに対する報酬を強調したもので、その割合は1〜4月よりも12%上昇している。ウエンディーズとバーガーキングは今年、5ドルメニューを打ち出した。ブリトーやタコスを1ドルの低価格で販売しているタコベルでは、前四半期の既存店売上高が8%増加した。
普通であれば、自炊の方が外食よりも安上がりだ。しかし、小売食品の価格上昇により、ノースカロライナ州出身のブローク・タッカーさん(25才)は、「毎日の食事のほとんどを、食料品店からファストフードに切り替えている。KFCのセットは7ドルだが、食料品店ではチップス、ディップ、寿司セットで19ドルになる」という。彼女は最近、より給料の高い仕事を得たものの、高騰する食費に危機感を強めている。
消費者は、過去40年以上で最も急激な食品インフレのただ中にいる。3月以降、消費者の食費は年率で10%上昇しており、これは1981年に労働局が統計を開始して以降最も大幅な上昇だ。
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