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TRADER'S Be & Po

vol.402 May.30.2022
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
市況ニュース 肥育牛価格は横ばい、カットアウトは強気配
豚カットアウト、需要面のリスク懸念で下方調整
ワールドトレード 中国の4月の食肉輸入量、前年比36%減
トピック インフレが小売・外食の食肉需要を変化させる
生産動向 米国のトウモロコシは生産・輸出とも減少予想
消費動向 食肉の購買行動、経済状況に合わせた変化続く
USMEFインフォメーション 米国のサステナビリティ対応「プロテインPACT」をWeb掲載
マーケット・データ 生体牛・豚価格、カットアウトバリュ、穀物先物価格
ファクト・シート ビーフ(2022年3月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
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市況ニュース

肥育牛価格は横ばい、カットアウトは強気配

 
 

肥育業者は現金相対取引において積極的な出荷を続けている。この3週間の主要5州の販売頭数は31万2628頭に達しており、5月10日も活発な取引が行われ、4万6160頭が取引された。

生体牛の最高値は、ネブラスカの100ポンド当たり144ドル。その他の地域では140ドル、北部の枝肉価格は230ドルで取引された。5月第2週の生体牛平均価格は143.42ドル、枝肉価格は230.69ドル。それぞれ前週比8セント高、1.62ドル安で、横ばい圏内の値動きとなっている。

一方、カットアウトの平均価格は、同週が100ポンド当たり261.65ドル、前週比4.46ドル安だったが、第3週は前半4日間でチョイスが2.76ドル上昇。いよいよ例年のような5月の上昇相場が始まりそうだ。

アナリストは、「小売業者は4月まで牛肉価格を値上げして牛肉マージンを確保してきた。7月4日(独立記念日)へ向けて販促を増やす余地は十分にある」という。4月のチョイスの平均小売価格はポンド当たり7.74ドルで、前月(7.69ドル)より上昇。前年(6.76ドル)を1ドル近く上回っている。

牛肉の売れ行きは改善しているが、インフレによる消費パターンの変化が現れてきている。4月の豚肉の平均小売価格は同4.89ドル、ブロイラーは2.39ドルで、牛肉同様に記録的な高値にある。

前年比の上昇率は牛肉14.4%、豚肉13.2%、ブロイラー18.3%。ブロイラーが最も値上がりしているが、消費者が同じ価格で購入できる量は、鶏肉3.2ポンドに対し、牛肉1ポンドだ。中間層から低所得者層の消費支出をめぐる競争で鶏肉へのシフトが顕著になりつつある。

 

※2022年年5月16日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

豚カットアウト、需要面のリスク懸念で下方調整

 
 

急速なインフレにより、すべての食肉の価格が上昇している。これまでは需要も堅調だったが、今後12〜18カ月以内に景気後退に陥る可能性があるとの予想から、食肉の需要も下方局面に向かう懸念が出始めた。

これを受けて株式市場では、この2週間でS&P指数が8%減少したが、家畜の先物市場、特に肉豚の先物市場でも、需要の低下局面を想定して急激な修正が見られた。多くの場合、供給への影響に焦点が当てられがちだが、劇的な価格上昇の反動や下振れリスクを考慮すると、今後は需要面の影響が重要になってくる。

下図は、国民一人当たりの豚肉消費量とカットアウト価格の相関関係を表したものだ。あくまで国内需要であり、輸出の影響は含まれないことに注意が必要だが、豚肉の需要曲線と需要に大きな影響を与えた出来事など、供給の変化が価格に与える影響を視覚化するのに役立つ。

価格はすべて2021年をベースに、各年のインフレ率を調整して換算した。2021年のカットアウト価格は104ドル。2001年は66.9ドルだったが、これはインフレ率を調整して2021年のドルに換算すると96.97ドルに相当し、グラフにもそう示されている。

米国商務省が毎月末に公表する消費者物価の動向指標であるPCEデフレーターは、2022年6%、2023年は4.5%と想定している。これを基に予測すると、2023年のカットアウト価格は103ドル、2021年のドル換算で93ドルに相当する。

下記のグラフは、豚肉の需要が変化した時期を理解する手がかりにもなる。2004年はBSE、2014年はPEDvの蔓延が大きな影響を与えている。2002年は不況により、前年に比べて需要が大幅に減少。2008〜09年の大不況も、需要の大幅な減少をもたらしたことを表している。

2022年のカットアウト予想価格は、当初の112ドルから108ドル(名目ドル値)に下方修正されたが、需要は依然として「通常」の水準を上回っている。2023年のカットアウト価格は、過去20年間に見られた需要曲線の下方に近付くと予想されるが、経済不況に陥った場合、価格はさらなる下振れの可能性がある。金利引き上げやインフレ抑制策は、需要面のリスクを顕在化させる恐れがある。

 

※2022年5月9日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

  豚肉のカットアウト価格と国民一人当たりの豚肉消費量(枝肉換算)の相関
  豚肉ロインプライマルの価格推移(日次ベース)
 
ワールドトレード

中国の4月の食肉輸入量、前年比36%減

 
 

中国の4月の食肉輸入量は59万2000トン(前年同月比35.7%減)。豚肉の国内生産の急増と、ゼロコロナ政策による上海のロックダウンの長期化で、物流の混乱が生じたことも減少の要因となった。

1〜4月累計の食肉輸入量は約226万トン(前年同期比36%減)で、前年同月を大幅に下回って推移している。

 

※2022年5月9日 Foodmarket.com

 
トピック

インフレが小売・外食の食肉需要を変化させる

 
 

米国の食品市場の調査・分析・情報提供の大手プロバイダー「Urner Barry」は、急激なインフレが小売と外食の食肉需要を変化されるとの特集を発表した。ポイントは以下のとおり。

消費者物価は上昇を続けている。今なお続くCOVIDの混乱や世界のサプライチェーン問題、そしてロシア・ウクライナ紛争が、上昇の要因となった。FRB(連邦準備理事会)によるインフレ抑制のための金利上昇に、引き続き懸念が強まる中、小売およびフードサービス業は、物価上昇にともなう消費者需要の変化に直面するかもしれない。

  消費者物価指数の推移(季節調整済)
 

BLS(労働統計局)のレポートによると、2022年3月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比で8.5%上昇、季節的調整を加味すると8.6%上昇した。前月比では1.2%の上昇。2月の前月比0.8%よりもさらに上昇した。

エネルギーおよび食品の価格高騰が、CPIに多大な影響を及ぼしている。3月のガソリンおよび食品の価格は、それぞれ前年比で約48%高と8.8%高。食品とエネルギー価格を除いたコア指数は、季節的調整後ベースで前年同月比6.4%上昇した。

  食料品の消費者物価指数(季節調整済)
 

3月の家庭用食料品の物価上昇率は、前年同月比10%増と2ケタの上昇。これは1981年3月以来の大幅な上昇だ。外食価格も同7%近く上昇し、1981年12月以来最大の上昇幅となった。食肉、家きん類、魚、卵に関する消費者物価指数は、同13.7%増。1979年5月以降で最高の上昇幅を記録した。

  食肉小売価格インデックス
 

パンデミック以降、食肉の小売価格は急速に上昇している。USDAによると、2022年3月の小売価格は、チキンブレスト3.87ドル、ポークチョップ4.13ドル、ビーフステーキ9.79ドル。2018年1月の価格を基準にした場合の上昇率(グラフ参照)をみると、チキンブレストとポークチョップは、ビーフステーキに対して比較的なだらかだが、ビーフステーキはすでに下方調整局面を迎えているように見える。

調整の兆候があるにもかかわらず、ビーフステーキや他の多くの食肉は、依然として過去最高値に近い。このため、これら多くのプレミアム品目の需要が引き続き堅調を維持していると考えがちだ。

パンデミック以来、移動や娯楽が規制され、消費者の食費にかける可処分所得は増えた。しかし、消費者の支払い能力にインフレが圧迫を加え続けるに従って、消費者の需要はより安価な選択肢へとシフトするだろう。
小売やフードサービスにとって重要なのは、インフレが消費者の意思決定に影響を及ぼすかどうかではなく、それが「いつ起きるか」だ。

 
生産動向

米国のトウモロコシは生産・輸出とも減少予想

 
 

米国農務省(USDA)が発表した最新の世界農業需給予測(WASDE)レポートによると、2022-23年度の米国の飼料穀物は、生産量・国内使用量・輸出・期末在庫のいずれも減少し、価格の上昇が見込まれている。トウモロコシの予想収穫量は145億ブッシェル(前年比4.3%減)。

USDAは、「ロシアによるウクライナ軍事侵攻で、同地域および世界の農作物の需給状況は不透明感が急激に増している。今回のレポートは、それによって発生あるいは現在進行中の短期的な影響を評価した」と特記している。

米国のトウモロコシ使用量は、輸出および国内使用量の低下により、前年比2.5%減の予想。輸出量は、生産・供給の減少と国内需要の強さを反映して4%減少する見通し。期末在庫は、8000万ブッシェル減。年度平均価格はブッシェル当たり6.75ドルの見通しで、2012-13年度以来の最高値となる。

世界のトウモロコシ生産量は、ウクライナ・米国・欧州・中国での減産によって前年を下回り、期末在庫は前年比1.4%減の3億510万トンになる見通し。このレポート発表後、トウモロコシの期近の先物取引は一時的に5〜9%高となった。

米国の2023年の食肉および家きん肉の生産量は、牛肉の減産によって全体でも前年を下回ると予想される。2023年の牛肉輸出量は、減産と価格上昇を主因に減少が予想される。豚肉については、子豚生産頭数の増加と生産性の向上によって生産量が増加するものの、輸出量は微減と予想される。

2023年の肥育牛価格は、供給のひっ迫によって前年を上回る見通し。肉豚・ブロイラー・ターキーの価格は、生産の増加によって下落すると予想される。

 

※2022年5月13日 Foodmarket.com

 
消費動向

食肉の購買行動、経済状況に合わせた変化続く

 
 

米国の消費者の食肉購買行動は、過去2年間の経済的激変の余波によって引き続き変化している。北米食肉協会(NAMI)と食品業界協会(FMI-The Food Industry Assn)が開催したウェビナーで、210 Analyticsのアン・マリー・ローリンク会長は、「2022 Power of Meat」の調査結果からその変化を明らかにした。

同調査によると、消費者の75%が食肉製品の値上がりに気づき、43%が特売の減少に気づいたという。その反応として、61%が外食や宅配の機会を減らすことで食費を節約し、62%が外食の代わりに自宅でレストランのような体験を再現しようとしている。

販促が減少した半面、買い物客は「食肉の特売に目を光らせている」という。75%が事前に特売をチェックし、80%が店内商品の価格や販促を見比べており、89%が予算通りのパッケージ価格を探し求めているという。特売品を見つける方法では、従来の主流であったチラシよりも、店内表示・デジタル広告、そしてストアアプリの利用が増加している。

食料品全体の値上がりの中で、「付加価値のある製品」や「PB(プライベートブランド)製品」が消費者に好まれる選択肢として成長した。生鮮肉では、メーカーブランド指向が過去17年間で最も高い29%に達したが、PB指向は生鮮肉(31%)、加工肉(26%)ともに過去最高を記録した。

食肉の購入量は2020年比で5.6%減少したが、販売額は0.3%増の818億ドルと記録を更新。購入頻度は減ったものの、一回当たりの購入金額が増加した。世帯への食肉普及率は98.5%と、依然として高い。

食肉の購入に際して、消費者が最も関心を寄せているのは「利便性」。シーズニングや味付けした付加価値型商品(68%)、調理済み商品(59%)、ミールキット(64%)、食肉惣菜のバラエティー(67%)などへの関心が高い。

ローリング会長は、「献立や買い物、調理や片付けなど、消費者を手助けすることが2022年の最大の伸びしろになる」と強調した。なお、米国の人口に占める食肉消費者の割合は74%と、昨年(71%)よりも増加。セミ・ベジタリアンは16%、ヴィーガンまたはベジタリアンは6%にとどまるという。

 

※2022年5月16日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
USMEFインフォメーション

米国のサステナビリティ対応「プロテインPACT」をWeb掲載

 
 

米国食肉輸出連合会(USMEF)は、米国の食肉業界のサステナビリティ(持続可能性)への取り組みに関する情報提供の一環として、北米食肉協会(NAMI)が推進する「プロテインPACT」と「NAMIサステナビリティ・フレームワーク」(仮訳版)を公式Webに掲載しました。

「プロテインPACT」は、NAMIおよびメンバー・パッカー等が一丸となって取り組んでいるプロジェクトで、産業界初のデータフレームワークを構築し、個々の食肉企業と業界全体でのサステナビリティの達成を目指しています。

達成目標を設定し、進捗状況を測定し、評価・検証・報告するために、5つの重点分野=「動物福祉」「環境」「食品安全」「健康・ウェルネス」「労働者と人権」=で100の指標を設けています。詳細は下記で閲覧できます。
URL:https://www.americanmeat.jp/trd/database/report/pdf/ProteinPACT.pdf

 
 

マーケット・データ

 
 
 
 
 
 
 

ビーフ・ファクト・シート