印刷する
 

TRADER'S Be & Po

vol.397 Mar.14.2022
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
トピック ウクライナ戦争で穀物や燃料費高騰、食肉価格の上昇要因に
市況ニュース ビーフカットアウト価格続落、生体牛は続伸
生産減少で豚先物上昇、需要堅調も国内供給は低下
業界ニュース 食肉処理能力の拡充強化に2億1500万ドル―USDA
プライムの生産拡大続く、チョイスとセレクトの価格差縮小
生産動向 深刻化する干ばつ、影響拡大の恐れ
ポーク関連ニュース 豚肉の月末在庫、依然として低水準
フードサービス ハードロックカフェがメッシ氏考案のバーガーを全世界発売
USMEFインフォメーション アメリカンビーフ外食向けウェビナー、3月22日生配信
マーケット・データ 生体牛・豚価格、カットアウトバリュ、穀物先物価格
ファクト・シート ポーク(2022年1月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
定期購読(無料)の登録はこちら バックナンバーはこちら
 
トピック

ウクライナ戦争で穀物や燃料費高騰、食肉価格の上昇要因に

 
 

ウクライナに侵攻したロシアに対する経済制裁が世界の食肉貿易に与える影響について、いくつかの予想が考えられる。ロシアはかつて、世界の食肉貿易で主要な輸入国だった。米国産チキンレッグやブラジル産牛肉、EU産豚肉の価格に大きな影響力を持つ買い手だったが、もはやそれは当てはまらない。

ロシアはこの10年間、食肉の自給自足を目指して生産を拡大してきた。下図は、USDA(米国農務省)のデータを基に、2000年以降のロシアの牛肉・豚肉・鶏肉の消費量と、それぞれの国産と輸入の割合を示したものである。

ロシアは、2010年には豚肉消費量の約3分の1を輸入に依存していた。そして2021年の国産豚肉の消費量は、2010年よりも26%多くなっている。この間にASF(アフリカ豚熱)が発生したにもかかわらず、国内生産量は86%増加し、輸入に依存しない純輸出国になった。

鶏肉は消費量と国内生産が増加しており、輸入割合は約5%でしかない。牛肉は高いコストと限られた可用性により、消費量自体が大幅に減少。輸入は一定のシェアを占めているが、輸入先は同盟国のベラルーシとパラグアイの2カ国がほとんどを占める。

このため、ロシアへの制裁が直ちに世界の食肉取引に影響を及ぼすとは考えづらいが、飼料とエネルギーコストの上昇が家畜の生産に大きな影響を及ぼすことが予想される。

  ロシアの食肉消費量の国産と輸入の割合(枝肉換算ベース)
 

ロシアとウクライナは、穀物の生産と輸出において世界の大国だ。USDAによると、ウクライナは2021〜22年に世界市場で取引されたトウモロコシ供給の16.4%を占める。ロシアのシェアは2.2%と少ないものの、黒海地域の港湾が閉鎖されると、ウクライナはトウモロコシの輸出が困難になり、輸入国はウクライナ以外の国からの輸入に切り替える必要に迫られるだろう。

ウクライナはトウモロコシの植え付けシーズンを迎えるが、戦争が長引いた場合は時季を逸する可能性があり、今春の作付面積については不透明だ。これを見越して、トウモロコシの先物相場は急騰しており、すでにブッシェル当たり7ドルを超えている。

ロシアとウクライナは、小麦と大麦などトウモロコシ以外の主要な飼料穀物についても世界市場、特にヨーロッパ市場で大きなシェアを持っている。飼料コストの上昇は家畜生産者の損益分岐点を上昇させ、結果的に食肉の卸売・小売価格の上昇に繋がるだろう。

 

※2022年3月2日 Pork Merchandizer’s Profit Maximizer

  世界のトウモロコシ輸出量における主要国のシェア(左)/世界の穀物市場におけるロシアとウクライナのシェア(右)
  2022年7月期のトウモロコシ先物価格
 
市況ニュース

ビーフカットアウト価格続落、生体牛は続伸

 
 

ビーフのカットアウト価格は続落している。2月第2週のカットアウト価格の全体平均は、前週比3.68ドル安の276.13ドルだったが、第3週は前半4日間でチョイスが6.61ドル安の259.24ドル、セレクトは同8.08ドル安の254.55ドルとなった。ただし前年同週比では19%高と、依然として高値にある。

第2週の取引で特筆すべき点は、総販売量7457ロード(≒コンテナ)のうち、フォワード取引(相対先渡)が1107ロード・14.8%を占めたことだ。これに近い記録は、2019年11月初旬の1119ロード、過去最高は2010年第1週の1957ロード。特に50CL(赤身率50%の牛ひき材)のフォワード取引が420ロードを超え、2020年12月以降で最多となった。昨年の週当たりの平均取引量は25ロード前後でしかない。

アナリストは、「これは、大手QSR(クイックサービスレストラン)チェーンがビーフパティ製造業者にフォワード取引で価格の固定を要請する際に時々起こることだ。5月以降の受け渡しと予測される」という。

一方、生体牛の現金取引価格は上昇を続けている。2月第2週の主要5州の去勢牛平均価格は100ポンド当たり142.36ドル、前週比1.88ドル高。枝肉の平均価格は226.04ドル、同2.00ドル高だった。

第3週には、水曜日までの主要5州の取引頭数は2万7085頭にとどまった。取引価格は北部で生体牛が平均144ドル、枝肉は226〜227ドル。南部では生体牛が142ドルとなっており、総じて前週の横ばいから2ドル高の範囲で取引された。

 

※2022年2月28日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

生産減少で豚先物上昇、需要堅調も国内供給は低下

 
 

ポークのカットアウト価格の先物取引は、100ポンド当たり123ドルを少し超えて取引されている。これは、歴史的な高値を記録した1年前に比べて2%高、COVID発生前の5年間平均との比較では45%高だ。高値の要因は、出荷頭数が予想外に少ないことだ。中西部での冬季の病気の流行が、予想よりもはるかに深刻なようだ。

肉豚の供給は季節的に春から夏に向けて低下するため、市場関係者は今後の生産予測を下方修正している。高い飼料コストと輸出の不確実性、カリフォルニア州のPro12施行に対する潜在的な混乱などが、養豚業者の生産拡大意欲を妨げている。

6〜8月の豚肉供給について、USDAは楽観的な見方(前年同期比2.8%増)を示しているが、シュタイナー・コンサルティング社の最新予測では、同期間の豚肉生産量は64億8000万ポンド(同0.8%減)に下方修正された。

米国産豚肉の輸出は、2019年・2020年に比べて減少している。中国の輸入が激減しているためだが、他の市場、特にメキシコへの輸出は堅調に推移しており、今年のメキシコへの輸出量は20億ポンドを超えて、2010年の2倍以上になる予想だ。

生産の減少と堅調な輸出は、米国内の流通量が減少することを意味する。同社は、今年の国民一人当たりの国内消費量は前年比2.4%減、2019年比7%減と予想する。

現在、豚肉の価格は他の食肉よりも価格競争力が強く、国内需要は依然として良好だ。ボンレスのポークチョップの卸売価格は、鶏むね肉より1.20ドル安く、牛ひき肉(80CL)よりも1.40ドル安い。5年前は、それぞれ25セント安、40セント安だった。

 

※2022年3月2日 Pork Merchandizer’s Profit Maximizer

  米国の第3四半期の国民1人当たりの豚肉供給可能量
 
業界ニュース

食肉処理能力の拡充強化に2億1500万ドル―USDA

 
 

米国農務省(USDA)は2月25日、食肉・家きん類の処理能力を拡大することで、食品のサプライチェーン強化と農村地域における雇用および経済機会を創出するために、最大2億1500万ドルの助成金やその他の支援を提供するとを発表した。

バイデン大統領の大統領命令14017「アメリカのサプライチェーン」の1周年に発表された今回の支援策では、USDAの農村地域開発(Rural Development)が食肉・家きん類処理能力拡大プログラム(MPPEP)を通じて、食肉処理施設の新規建設ならびに既存施設の拡張等に資する助成金として、米国救済計画法の資金1億5000万ドルを利用できるようになった。

国立食品農業研究所(NIFA)には、同セクターの労働力開発と訓練に4000万ドル、農業販売促進局(AMS)には、食肉・家きん類の処理に関連したリソースを求める申請者等への技術支援として2500万ドルが予算化された。

バイデン・ハリス政権は2021年9月に「食肉処理業界の集中に対処するためのステップ」を発表し、2021年12月には食肉・家きん類処理能力の拡大を目的とした融資(5億ドル)と保証付きローン(1億ドル)を措置。2022年1月には「食肉・家きん類のサプライチェーンをより公平で、より競争力があり、より弾力性のあるものにするための行動計画」を発表している。

 

※2022年2月26日 Foodmarket.com

 
 

プライムの生産拡大続く、チョイスとセレクトの価格差縮小

 
 

米国では高品質な牛肉生産の歴史的な拡大が続いている。背景には、肉牛生産における遺伝子工学の改善・肥育技術の革新と、進歩・パッカーのグリッド方針による割高な価格設定、そしてより高品質な牛肉を求める消費者ニーズの強まりがある。

結果として、プライムおよびチョイスの格付割合は、20年前には考えられないほど高い割合となった。2021年のグレード別の格付割合は、プライム10.08%、チョイス72.48%、セレクト14.36%、その他3.08%だった。

この傾向は今年も継続している。2月第2週の週間平均はプライム10.03%、チョイス74.40%、セレクト11.82%。チョイス以上の合計は84.43%と、過去最高(2021年2月第3週の86.07%)に近い水準にある。

今年の特徴的な現象の一つは、チョイスの生産拡大によって、チョイスとセレクトの価格差が縮小していることだが、2月8日にはチョイスよりセレクトの価格が100ポンド当たりで2ドル高となった。

こうした逆転減少が以前に起きたのは、2017年9月12日(7セント安)と2014年1月31日(1.36ドル安)だ。アナリストは、「チョイスのリブ、ショートロイン、テンダーロインなどの品目が、ボリュームの少ないセレクトより安値で大量に取引されたためだ」と説明する。同日の取引量は、チョイスの82ロードに対して、セレクトは12ロードだった。

 

※2022年2月28日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
生産動向

深刻化する干ばつ、影響拡大の恐れ

 
 

干ばつの影響で、2021年の全米の牛群は予想以上に縮小した(飼養頭数188万8000頭減)。アナリストは、今年のさらなる減少を危惧している。米国の牛肉生産にとって、少なくとも今後2年間は、干ばつが最も注視される要素の一つになるだろう。

新たな研究報告によれば、東部の大規模な干ばつは、昨年大幅に悪化した。これは、現在進行する気候変動シナリオの中でも最悪のケースだ。「2021年の劇的な干ばつは、同地域で2002年に観測された過去最大の干ばつとほぼ同じ規模だった。2022年も干ばつが継続すると、1500年代後半に観測された大規模干ばつの記録を塗り替える可能性がある」とNature Climate Change誌が報じている。

オクラホマ州立大学のダレル・ピール氏は、干ばつが2022年の養牛業界の行方を左右する決定要素になるという。気候予測センターの見通しでは、現在の東部および北部平原地域の干ばつは、今後も継続する見通しだ。最近は、南部平原で進行した干ばつも持続する見通しで、今後中部平原地域にまで拡大する可能性もある。一部地域では、2020年から干ばつの影響を受け続けている。

2022年に干ばつが拡大すれば、以前にも増して雌牛群の淘汰につながる可能性がある。同氏は、「2020年から2021年に干ばつの影響下にあった地域には、適応力はほとんどないだろう。例えば12月1日時点、モンタナ、ワイオミング、ノースダコタ、サウスダコタの干し草の在庫は、前年比40.2%減少している」と指摘する。

これらの地域では、2020年以降に牛群が8.0%減少しているが、さらなる大規模な一掃に直面する可能性があり、4月あるいは5月の、いわゆる春子の生産を注視する必要がある。この地域の生産頭数は、全米の繁殖用雌牛の15.1%を占める。

コロラド、ニューメキシコ、アリゾナ、ユタの4州にわたるこの地域は、2020年以来干ばつにあえぎ、過去2年間で繁殖用雌牛が11.6%減少した。長引く干ばつの結果、今年も減少する可能性がある。この地域には、国内の繁殖用雌牛の5.3%がいる。

南部および中部平原に位置するテキサスとオクラホマの干ばつは、肉用経産牛の53%以上、およそ1600万頭に影響する可能性がある。2022年の干ばつが大規模になれば、肥育素牛の生産とフィードロットの導入時期が変化し、今後数年間にわたって様々な影響をもたらす可能性がある。

アナリストは、「干ばつの状況で、フィードロットへの導入が引き続き早まっている。さらに、フィードロット外にいる子牛の頭数も減少している。穀物価格の高値にもかかわらず、肥育素牛と子牛は前年比約30ドル高で取引されている。今年予想される子牛の生産規模(前年比およそ35〜40万頭減)を踏まえると、今年は肥育素牛・子牛が100〜110万頭不足するだろう」と推測している。

 

※2022年2月21日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
ポーク関連ニュース

豚肉の月末在庫、依然として低水準

 
 

1月末の豚肉在庫は4億2850万ポンド(前年同月比6.3%減)、過去5年平均比では22%減と依然として低い。ハム(モモ)の在庫は4460万ポンド(同43%増)と前月より17%増加したが、過去5年平均比では4.4%増の水準だ。

パッカーは労働力不足によって、骨抜きラインの稼働に苦労しており、ボンレスハム(骨抜きモモ)の入庫は4930万ポンド(同21%減)と減少。一方で骨付きハムの入庫は2440万ポンド(同12%増)と増加した。

ベリーの在庫は、通常1月から4月の間に増加するが、今年は価格が昨年8月以来の高値で推移しており、2〜3月の在庫積み増しは限定的になる見込み。リブの在庫は前年とほぼ同水準で、過去5年間平均比では20%減。例年、エンドユーザーは春の終わりから夏場の需要を見越して、第1四半期中にリブの在庫を増やすが、今年はと畜頭数が減少しており、夏場に向けてのリブの価格上昇が予想される。

 

※2022年3月2日 Pork Merchandizer’s Profit Maximizer

  米国の豚肉の月末在庫量の推移
 
フードサービス

ハードロックカフェがメッシ氏考案のバーガーを全世界発売

 
 

ハードロックカフェは、世界のサッカー界のレジェンド、リオネル・メッシ氏とパートナーシップを結び、世界で「LIVE GREATNESS」キャンペーンを展開し、最新メニュー「MESSI BURGER(メッシ・バーガー)」を発売する(日本では3月1日〜5月31日までの期間限定販売、1個1800円)。

メッシ

インターナショナルのジョン・ルーカスCOOは、「世界的に有名なサッカースター、リオネル・メッシ氏とLIVE GREATNESSキャンペーンを打ち出せることを光栄に思う。メッシ氏は、ハードロックカフェを代表するメニューを、まさに彼自身の手で次のレベルに引き上げてくれた。メッシ氏自身のお気に入りからインスパイアされたこのメニューは、彼のファンだけでなくすべての顧客にとって、ユニークで忘れられない体験になるだろう」とコメント。

「MESSI BURGER」は、メッシを象徴する背番号と同じ10種類の食材を使用。2枚の最上級牛肉パテを、ハードロックカフェ特製のスモーキーソースと共に、トーストしたブリオッシュバンズでサンドしている。クォリティ、テイスト、ボリュームの三つ揃えのハットトリックバーガーだ。

ハードロックカフェは世界中に店舗を展開しており、年間数百万人が利用している。

 

※2022年3月2日 Foodmarket.com

 
USMEFインフォメーション

アメリカンビーフ外食向けウェビナー、3月22日生配信

 
 

米国食肉輸出連合会(USMEF)は3月22日15時〜16時20分まで、アメリカンビーフ外食向けセミナー『新業態やるならホルモン酒場』〜ホルモン酒場が増える理由〜」(主催:フードリンクニュース)をYouTubeにて生放送・配信します(参加費無料・申し込み制)。

2020年から卓上レモンサワーのホルモン店が飲食業界を賑わしていますが、現在はホルモンをウリにしたホルモン酒場が増加しております。今回は特別ゲストとして、2021年に「ホルモン放題 ツキホル」を開店して話題になっている、株式会社平城苑の近藤専務取締役を招いています。

同ウェビナーの主なプログラムは以下のとおりです。

  • テーマ① ホルモン市場のトレンドについて
    (株)フードリンググループ 第一営業局 植村太一局長
  • テーマ② アメリカンビーフのホルモン活用法
    米国食肉輸出連合会マーケテイングスペシャリスト 高梨正稔
  • テーマ③ 話題の”ツキホル”について
    (株)平城苑 近藤昭人専務取締役経営企画室長

詳しい内容、参加登録の申し込みフォームは下記より。
https://www.foodrink.co.jp/foodrink_seminar/2022/03/hormone/

 
 

マーケット・データ

 
 
 
 
 
 
 

ビーフ・ファクト・シート