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TRADER'S Be & Po

vol.387 Oct.11.2021
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
市況ニュース 牛カットアウト急落、高値で小売の売れ行き鈍化
供給動向 豚肉需要堅調、第3四半期も継続の見通し
ワールドトレード 中国の肉豚価格、さらに下落
トピック 培養肉がもたらす問題点
サスティナブル関連 NAMIが持続可能な生産実行Gに参加、食肉協定提出
メタン抑制目標でオープンな対話を要請―NCBA
生産動向 キャトルサイクルは市場に影響を与える基本要素
リテール 食肉の小売価格、ほとんどの品目が前年上回る
マーケット・データ 生体牛・豚価格、カットアウトバリュ、穀物先物価格
ファクト・シート ポーク(2021年8月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
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市況ニュース

牛カットアウト急落、高値で小売の売れ行き鈍化

 
 

ビーフのカットアウト価格は、予想通り急落している。8月から9月初めに高騰した反動で、この急落は小売市場の牛肉販売に悪影響を与えた。小売業者は7・8月、季節的傾向に反して牛肉販売価格を値上げし、牛肉の売れ行きが鈍化した。

牛肉小売価格は9月も値上がりし、10月までは下がらない見通しだ。パッカーがカットアウト価格の軟化を先送りしようと生産を抑える可能性もあるが、チョイスのカットアウトはすでに100ポンド当たり300ドルに向けて下げている。

小売店での"値札ショック"によって、今後数週間の牛肉販売は鈍化すると予想される。ミドルミート(ロイン系)は、小売での売れ行き鈍化でも価格を維持するだろうが、小売の牛肉マージンが平均的水準に戻るには、チョイスのカットアウト価格が285ドルまで下がる必要があり、最初の関門は300ドルだ。

9月17日までの1週間のカットアウト全体(カット・ひき材・トリム)平均価格は314.61ドル。前週比8.67ドル安だが、前年同週比では47%高と依然として高い。

特に牛ひき肉の価格が高い。50CL(赤身率50%の牛ひき肉)は138.38ドル、前年比221%高。90CLは277.73ドル、同27%高。

同週の日次ベースのカットアウト価格は続落した。チョイスは前半4日間で8.87ドル下げ、木曜日には305.60ドルとなった。セレクトは4.76ドル安の274.99ドル。前半4日間の取引量は458ロード(≒コンテナ)でほぼ前週並みだった。

 

※2021年9月27日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
供給動向

豚肉需要堅調、第3四半期も継続の見通し

 
 

米国農務省(USDA)が発表した9月1日現在の豚の総飼養頭数は、7535万2000頭(前年同期比3.9%減)。アナリストの事前予想(平均2%減)よりも大幅に減少したことを受けて、今年の秋冬の供給予想が見直され、マーケットは強気となった。

肥育豚は6916万2000頭、前年同期比で290万頭少ない。減少の主因は、この冬に出荷見込みの120ポンド未満の頭数が大幅に減少していることだ。50〜119ポンドは、前年同期比6%減・127万頭減。50ポンド未満は同5.6%減・128万9000頭減。これは11月下旬から来年1月中旬までのと畜頭数が、かなり減少することを示している。

180ポンド超は1289万9000頭(同1.3%減)。アナリストの事前予想の平均は2%減だが、ここ数週間のと畜頭数から判断すると、今回の調査結果は、重量級の肉豚を過大に見積もっているとの指摘もある。

10月中旬から11月中・下旬にかけて出荷される120〜179ポンド級の頭数は、1465万6000頭(同1.4%減)。週間平均と畜頭数は265万頭前後になると推定されるが、前年の同期間の平均は269万頭であり、年末のホリデーシーズンに向けた供給は適切な水準を維持するだろう。

  米国の豚の総飼養頭数(各年9月1日現在)
 

調査結果が示したもう一つの強気要因は、繁殖豚と子豚生産頭数の減少だ。繁殖豚の飼養頭数は619万頭(同2.3%減)。これは6月1日現在に比べて0.6%減。例年、9月期の繁殖豚頭数は6月期よりも増える。9月期が6月を下回ったのは、現在と同様に飼料価格が値上がりしていた2013年以来のことだ。

繁殖豚が縮小した要因は、飼料価格の高騰、中国の需要の不透明感、そして今後に控えるカリフォルニア州の出荷規定変更(2022年1月1日発効予定の提案12=母豚の妊娠ゲージ使用禁止など)により、生産者をとりまく多くのリスクがあることだ。未経産豚の保留率は低く、母豚のと畜が比較的多いことも重なって、繁殖豚が大幅に減少した。

6-8月期の子豚生産頭数は3390万頭(同6%減)、2019年比では6.8%減。減少の主因は分娩頭数が6.6%減少したことだ。6月1日の繁殖豚頭数に対する分娩率は49%。この比率の過去5年平均は51%。分娩率の低下はPRRS(豚繁殖・呼吸障害症候群)の影響も指摘されている。

9-11月期の分娩見込み頭数は前年比4.2%減、2019年比6.2%減と推定される。9月1日の繁殖豚頭数に対する分娩率は48.5%と推定され、過去5年平均の50.2%を下回っている。12-2月期の分娩頭数は前年比1.4%増と推定される。

 

※2021年9月27日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

  米国の繁殖豚の飼養頭数
  米国の6-8月期の子豚生産頭数
 
ワールドトレード

中国の肉豚価格、さらに下落

 
 

ASF(アフリカ豚熱)の影響で2年間高騰した中国の豚肉価格は、現在、逆の問題に直面している。卸売価格は今年1月以降続落しており、9月はキロ当たり20.24元(3.13ドル相当)とさらに下落し、今年最低の水準となった。

中国の豚の飼養頭数は、一時的に前年の4割近くにまで減少し、国産豚肉の供給不足と輸入の急増を引き起こした。豚肉供給の正常化に向けて生産回復への取り組みが推進されてきた結果、現在の飼養頭数は4億3900万頭と、昨年の3億7000万頭から大幅に増加している。

中国では豚肉需要の最盛期となる旧正月用の手当が近づいているものの、アナリストは「大幅な反発は起こりそうにない」という。ラボバンクのシニアアナリストは、「旧正月は豚肉消費が増加するが、これに伴う反発は限定的だろう。ゼロコロナ政策で、旅行や大人数での食事が制限されており、これが肉豚価格にも影響している。この半年間の肉豚価格は、生産者の損益分岐点を下回って推移した。養豚における収益性を表す一つの指標である肉豚対穀物の価格比率も、ここ数カ月間下落している」という。

6月下旬、中国政府機関はその比率が「過度な下落」に入ったと警告し、豚肉の価格安定化のために備蓄用豚肉を購入した。安値によって一部の小規模生産者は撤退に追い込まれ、それが供給のひっ迫や価格上昇につながるとの見方もあるが、中国の豚肉生産の大部分は大規模・大資本企業で構成されており、価格下落の中でも生産は継続されるだろう。

 

※2021年9月28日 FoodMarket.com

 
トピック

培養肉がもたらす問題点

 
 

近年、動物細胞由来の培養肉が、家畜の苦痛回避とエネルギーコストの削減へ向けた代替品として注目されている。しかし、Meat Atlasレポート(*)によると、そうしたサ ステナビリティ上の利点は、いまだ期待の域を出ず、むしろサステナビリティ上の問題を引き起こす可能性があると指摘している。

培養肉の提案者や推進派は、研究成果として以下のことが実証されているという。

  • ●培養肉は、欧州の従来型の食肉生産に比べて7〜45%少ないエネルギーで生産できる。
  • ●温室効果ガス排出量は78〜96%削減、土地は99%、水は82〜96%の削減が可能。
  • ●研究室で完全に管理された環境によって生産される製品は、従来の食肉より安全で、食品媒介疾患のリスクを低減し、抗生物質の必要性もない。

だが、Meat Atlasレポートでは、FAOと最新の業界データを基に、「こうした利点には誇張がある」とし、培養肉の生産は非常にエネルギー集約型であるとする最新の研究も紹介している。

製品のライフサイクル全体を考慮した場合、培養肉は、従来の食肉生産よりも消費されるエネルギーや温室効果ガスの排出量が高くなる可能性がある。その理由は、家畜の排出するメタンは、温室効果ガスには影響するものの、大気中には長期的に残留しないためだ。一方で、培養肉の生産過程では二酸化炭素が生成され、何百年も残る。このため、排出の点で培養肉に期待される利点は不明確だという。

もう一つの潜在的問題は、病原体だ。研究室で生成した食肉からは、病原体が本当に除去されているのか、あるいは自然に変化しているのか、すぐに判別することは不可能だ。また、体外で生成された筋肉量の品質が、家畜が時間をかけて生成したものと同じかどうかもわからない。培養肉が、動物製品特有のビタミンB12や鉄といった微量の必須栄養素を含有するための方法も開発されていない。レポートでは、「近い将来に、従来の食肉から培養肉への急速な移行が起こることはないだろう」としている。
*Meat Atlasレポート:ハインリッヒ・ベル財団とフレンズ・オブ・ザ・アース・ヨーロッパが発行した、工業的畜産と食肉産業の生産方法の影響に関する年次報告書。

 

※2021年9月27日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
サスティナブル関連

NAMIが持続可能な生産実行Gに参加、食肉協定提出

 
 

北米食肉協会(NAMI)は9月23日、米国政府の主導の下で組織される「食品安全と資源保全のための持続可能な生産性成長に関する合同実行グループ」に参加する意向を発表した。同グループは、バイデン政権が国連の食料システムサミット(FSS)で立ち上げる見通しだ。

NAMIがFSSに提出した「サステナビリティ・フレームワークに関する草案」および「Protein PACT for the P eople, Animals, and Climate of Tomorrow」(明日の人々、動物、気候のための食肉協定)については、7月に実施したパブリック・コメントで96%以上が支持するとしており、NAMIは11月のFSSで、サステナビリティ・フレームワークにおける100の指標の進捗状況を公に確認するためのデータ主導型の目標を発表する予定だ。

NAMIのジュリー・アンナ・ポッツ会長兼CEOは、「高品質な動物性タンパク質は健康な食事の中心だ。経済・社会・環境上の持続可能性に関わる我々もまた、健康な将来へ向けた解決策の中心にいる。持続可能な農業生産性における合同グループに参加できること、FSSで食肉協定が脚光を浴びることを誇りに思う。この食肉協定は、世界中の人々を毎日支える牛肉・豚肉・家きん類・乳製品の持続可能性を確保するために、透明性の高いコミュニケーション、持続的な改善、そして意欲的なコミットメントに向けた最初の取り組みとなるものであり、共通のビジョンを持った農業従事者と処理業者が結束する最初の成果だ」としている。

 

※2021年9月24日 FOODMARKET.com

 
 

メタン抑制目標でオープンな対話を要請―NCBA

 
 

全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、バイデン政権が9月17日に世界のメタン排出を2030年までに30%抑制するための国際的な取り組みの一環として「国際メタン誓約(Global Methane Pledge)」を発表したことを受けて、農業の専門家とのオープンな対話を維持するように要請した。

NCBAは、8月に米国の肉牛産業が2040年までに気候中立性を実証するための取り組みを発表しているが、誓約の目標を達成するためは、関係者の自主的な参加、科学的研究および肉牛生産者の実践的な知識が必要になると指摘。米国の肉牛業界は、農業社会・経済において、責任ある資源管理をリードし続ける体制が整っているとしている。

NCBAの政府担当副会長は、「牛の生産者の賛同なしに、永続する資源の維持を達成することはできない。牛は食物を消化する時にメタンを放出する。これは、反芻動物である牛の特殊な消化器系が原因だが、牛はこれによって、食物の生産に適さない土地に生えた牧草を消化することができる。メタンガスは9〜12年のうちに大気中で分解され、土壌や草によって自然の放牧サイクルの一部として反芻動物に消費される」としている。

 

※2021年9月17日 NCBA news release

 
生産動向

キャトルサイクルは市場に影響を与える基本要素

 
 

米国の牛群は、2019年から2020年に周期的な減少に転じ、2021年1月時点の総飼養頭数は9360万頭に低下した。今年は干ばつの発生で、牛群の一掃がさらに進むことが予測されている。オクラホマ州立大学のダレル・ピール氏は、キャトルサイクルは引き続き米国の肥育牛市場に影響を与える重要な基本要素であるとして、その歴史の概要を以下のように記している。

キャトルサイクルが出現したのは、1800年代後半である。飼養頭数のデータによると、南北戦争直後の1867年、米国の牛群は2860万頭だった。これが1890年の6000万頭までに継続して拡大し、最初のサイクル上のピークを迎えた。

その後、飼養頭数は1896年までに4920万頭へ縮小した後、再度拡大をたどる。これが、以後続くことになるサイクルの始まりだ。牛群のサイクルは、ピークからピークまで、あるいは底から底までの期間で割り出される。1890年に起きた最初のピーク以降、合計12のサイクルのピークと11の底があった。10年サイクルと言われることが多いが、ピークから底までの期間は平均12.8年間である。

飼養頭数は、1867年の2860万頭から1975年の1億3200万頭まで拡大傾向で推移し、108年間で361%増加した。1975年以降は、概ね縮小傾向にある。2021年は9360万頭と、1975年のピークに比べて29.1%減少しているが、1867年の水準と比べると226.8%拡大している。

2014年から2019年までの最新の拡大期は、1990年〜1996年以降最初に確認された拡大サイクルだった。1996年から2014年までの18年間のうち、15年間は飼養頭数が減少していた。最新のサイクルは、飼養頭数の底である2014年の8824万頭から始まり、2019年の9480万頭まで増加している。

 

※2021年9月27日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
リテール

食肉の小売価格、ほとんどの品目が前年上回る

 
 

米国農務省経済調査局(USDA・ERS)の最新データに基づいて、畜産物の小売・卸売価格と生産者価格の平均価格を比較すると、2020年に比べて、2021年(1-8月)はブロイラーを除く全ての製品の小売価格が高くなっている。

2021年の卵の平均小売価格は1ダース1.60ドル、前年比9セント高。ブロイラーはポンド当たり1.52ドル、前年比4セント安。豚肉は同4.33ドル、同30セント高。牛肉は同6.86ドル、同32セント高。豚肉・牛肉の生産者価格と卸売価格も、同じく今年の方が高くなっている。

ERSは、2021年の牛肉生産量の予想を前月時点の予想よりも1億3千万ポンド少ない277億4200万ポンドに下方修正。一方で、2021年の年間牛肉輸入量は31億4200万ポンド、年間輸出量は34億1400万ポンドと、それぞれ上方修正した。

 

※2021年9月27日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

マーケット・データ

 
 
 
 
 
 
 

ポーク・ファクト・シート