アーカンソー大学のジェームス・ミッチェル氏は、「ビーフカウ(肉用種の経産牛)はと畜頭数が急増しているにもかかわらず、牛ひき肉の強い需要で価格が上昇している」と指摘する。
ビーフカウは、赤身率90%の低脂肪トリミングの原料となり、赤身率50%のトリミングと混合して、牛ひき肉やハンバーガーに仕向けられる。低脂肪トリミングの原料は、この他にデイリーカウ(乳用種の経産牛)と輸入の牛ひき材がある。
米国全体の牛ひき材原料に占めるビーフカウとデイリーカウの割合は2019年が28.4%、2020年は27.6%。特にビーフカウのトリミングは、2020年の赤身率50%の低脂肪トリミングの原料として41.3%を占めたという。
今年のビーフカウの平均と畜頭数は、前年同期比9.9%増、2019年比では12.4%増。低脂肪トリミングの原料に占める割合はさらに拡大していると推測されるが、と畜頭数の増加にもかかわらず、サザンプレーンズにおけるビーフカウの平均価格は前年比8%高、2019年比14.7%高。
ビーフカウの高値は、デイリーカウのと畜減少と輸入牛肉の減少も要因の一つだ。今年これまでのデイリーカウの平均と畜頭数は同0.9%減、2019年比3.7%減。USDAの今年の牛肉輸入量予測は10%減。
赤身率90%の低脂肪トリミングの卸売価格は前年比4%安だが、2019年比では11%高。小売価格は5月までの平均で同1.6%高、2019年比9.9%高。ミッチェル氏は「経産牛のとう汰と低脂肪トリミングの供給を増加させ、価格も押し上げているのは、牛ひき肉需要が強いことの証だ」と述べている。
◎消費者は植物由来より本物の牛ひき肉を好む
カンザス州立大学の研究者による2年間の調査で、消費者は植物由来のひき肉に比べて、圧倒的に本物の牛肉のひき肉を好むことが明らかになった。
調査では、赤身と脂肪の割合が「7対3」「8対2」「9対1」の牛ひき肉と、「小売で販売される代替製品」「フードサービスで使用される代替製品」「従来の大豆由来の代替製品」を用いて、パティの見た目とともに、ジューシーさ、やわらかさ、テクスチャー、口当たり、全体的な味覚―など実際に食べた時の官能調査を行った。
いずれの項目でも、消費者は植物由来製品より牛肉の方が良いと回答した。代替製品には風味はあるものの、牛ひき肉とは全く異なると感じている。消費者パネル調査の要点は以下のとおり。
①見た目:3つの牛ひき肉カテゴリーが、代替製品のいずれに比べてもはるかに良い。
②ジューシーさ:フードサービスの代替製品は「7対3」の牛ひき肉と、「同等」と評価されたが、小売および大豆代替製品はいずれも「乾燥している」と評価された。
③味わい:消費者は3つの代替製品の風味は、牛肉らしさが非常に低いと回答。本質的に、代替製品は牛肉に似た味とは評価されず、消費者は真似してつくられた味を好まないとの結果になっている。
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