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TRADER'S Be & Po

vol.383 Aug.10.2021
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
トピック ドミニカ共和国でASF確認、支援を表明―USDA
業界ニュース 食肉小売価格の上昇続く、外食の食材コストも上昇
ワールドトレード 中国の上半期の食肉輸入、7%増の510万トン
市況ニュース チョイスビーフの需要が肥育牛価格を下支え
リテール 牛肉の小売価格はピーク間近に、豚肉9カ月連続上昇
消費動向 ひき肉需要で経産牛値上がり、消費者は本物の牛肉好む
マーケット・データ 生体牛・豚価格、カットアウトバリュ、穀物先物価格
ファクト・シート ポーク(2021年6月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
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トピック

ドミニカ共和国でASF確認、支援を表明―USDA

 
 

米農務省(USDA)は7月28日、既存の共同監視プログラムを通じて、ドミニカ共和国の豚から採取したサンプルからASF(アフリカ豚熱)を確認したことを発表し、同国のASF対策への支援を表明した。

現在、米国はCSF(豚熱)に関する規制により、ドミニカ共和国からの豚肉および豚肉製品の輸入を禁止している。

USDAの動植物検疫局は、ASFの米国への侵入を予防するために、多数の連動した予防策を実施。また国土安全保障省税関国境保護局(CBP)は、入国者がこれらの製品を米国へ持ち込まないよう、ドミニカ共和国からの入国検疫を強化するとともに、航空機由来の残飯が適切に処理されていることを確認し、ASFの侵入を防いでいる。

USDAは、ドミニカ共和国のASF対策への支援を表明し、継続的な検査支援の意向を示しており、被害抑制策の支援へ向けた追加手順や措置について同国と協議する予定。また、同国と隣接するハイチに対しても同様の支援を行う意向だ。

USDAはCBPや米国の豚肉業界をはじめとするパートナーとともに、ASFの米国への侵入を防ぐための対策を徹底する。USDAの取組みの詳細情報は下記参照。

https://www.aphis.usda.gov/aphis/ourfocus/animalhealth/animal-disease-information/swine-disease-information/african-swine-fever/seminar.

なお、ドミニカ共和国は8月2日、11州でASFを確認したとして、数万頭の殺処分と生産者の救済策など、国際機関の協力を得て「ASF根絶のためのサンチェス・ラミレス危機管理計画」を実行すると発表。3日には、メキシコもAFS侵入防止策の強化措置を発表した。

Plan de Contingencia Sánchez Ramírez para la Erradicación Peste Porcina Africana (PPA) República Dominicana. - Ministerio de Agricultura de la República Dominicana

 
業界ニュース

食肉小売価格の上昇続く、外食の食材コストも上昇

 
 

米国の6月の消費者物価指数(CPI)は、前月比0.9%高、前年同月比では5.3%高となり、2008年以降最大の上昇率となった。宿泊費、レンタカー料、航空料金が大きく上昇、自動車は新車・中古車とも値上がりしており、経済の再開がインフレ率を押し上げた。

食品価格も上昇したが、品目によって上昇率には違いがある。昨年6月は、コロナ禍により家庭で消費される食品の価格が大幅に上昇したことから、今年6月の家庭消費向け食品の価格は前年比0.9%高、2019年同月比6.5%高。これに対して、外食の食材コストは同4.2%高、2019年比7.5%高と大幅に上昇した。

グラフは、食肉主要3品目の消費者物価指数の長期的推移を示している。牛肉の小売価格は過去10年間、豚肉および家きん類の価格に比べて速いペースで上昇している。6月の牛肉価格は、2011年の平均小売価格より51%高い。豚肉小売価格は2011年6月より19%高く、家きん類は22%高となっている。

  牛・豚・鶏肉の小売価格の上昇(2011年を100とした場合の指数)
 

食料品店とフードサービスの食品コストのインフレにおける前年比の推移をみると、インフレの加速基調は両セクターに共通しているが、食料品店の方が明らかに価格の変動性が高く、卸売価格に連動して上下している。

フードサービスでは構造的問題、特に人件費の圧力がより深刻であることから、インフレ率は引き続き食料品店を上回ることが予想される。経済が回復し、労働力が徐々にパンデミック前の労働パターンへと回帰するにしたがって、レストランのインフレ圧力が強まるだろう。

下段のグラフが示す通り、小売価格の変動幅は、卸売価格(PPI)が示すものよりはるかに低いが、卸売価格のインフレ率が低下していることから、小売価格のインフレ率も鈍化することが予想される。

全体的なインフレのペースは緩む見通しだが、長期的な上昇傾向が続くと予想される。過去10年間で、小売価格が上昇トレンドを迎えた時期が2回ある。2014〜2015年と現在である。2016〜2019年においては、生産者の収益増加と飼料コストの低下に後押しされて食肉生産が拡大し、結果的に食肉価格のインフレ率が抑制された。

 

※2021年7月19日 Pork Merchandiser's Profit Maximizer

  食料品店とフードサービスにおける食品コストの前年比の推移
  豚肉の卸売価格(PPI)と小売価格(CPI)の前年比の推移 / 牛肉の卸売価格(PPI)と小売価格(CPI)の前年比の推移
 
ワールドトレード

中国の上半期の食肉輸入、7%増の510万トン

 
 

中国の2021年1-6月の食肉輸入量は約510万トン(前年同期比7%増)となった。上半期では前年を上回ったが、5月は3%減、6月は17%減と減少傾向にある。6月の輸入量は74万3855トンで、旧正月の影響で例年通関手続きが遅れる2月を除くと、2020年1月以降で最少となった。

豚肉(バラエティーミート含む)の上半期の輸入量は284トン(同4%増)。5月は9%減、6月は19%減の42万6184トンだった。ASFによりドイツからの輸入が停止されたにもかかわらず、EUの上半期のマーケットシェアは前年の60%弱から63%に拡大している。

主な要因はスペインからの輸入増加で、スペイン産のシェアは17%から31%近くにまで拡大した。米国産のシェアは15%。米国産豚肉は依然として通商拡大法232条に基づく報復関税に直面しており、関税率は他国に比べて25%高い。

牛肉(同)の上半期の輸入量は115万トン(同14%増)、輸入額は55億ドル(同5%増)。6月の輸入量は9%減の16万3043トンで、過去1年間で最少となった。

米国からの輸入量は約8倍の5万6512トン。シェアは5%に上昇した。豪州からは7万7104トン(同53%減)と半減。豪州の上半期の穀物肥育牛肉の中国向け輸出は20%減の3万1373トンにとどまり、穀物肥育牛肉では米国が最大の供給国となった。

中国の牛肉輸入の鈍化は、世界的に牛肉供給がタイトになっていることも影響している。6月はブラジル、NZ、豪州のいずれも前年を下回った。今後はアルゼンチンの輸出規制も中国の牛肉輸入に影響を及ぼす見通しだ。

上半期の羊肉輸入量は24万3000トン(同18%増)。6月は、輸入価格が過去最高を記録したことで、3万3000トン(同4%減)にとどまった。

中国の直近の肉豚平均価格はキロ当たり15.4元(同57%安)だが、ASFの散発がみられることや、未経産豚のとう汰や河南省での豪雨・洪水による被害により、一部では肉豚価格が今年後半には反発するとの見方もある。

 

※2021年7月 USMEFマーケットアップデイト

 
市況ニュース

チョイスビーフの需要が肥育牛価格を下支え

 
 

生体牛の現金取引価格は、この数週間で下落したものの、予想以上の水準を維持している。例年の季節的なパターンでは、価格は第1四半期に上昇し、9月後半に向けて下落基調をたどり、その後反発する。過去10年の価格指標でも、明らかに第3四半期が底値となっている。

LMIC(家畜マーケテイング情報センター)のアナリストは、「今年のサザンプレーンズの去勢牛価格は、4月頃から底堅さをみせており、100ポンド当たり120ドル近辺で推移している。これはチョイスビーフの需要の強さが一因だ」と指摘する。

7月第3週のチョイスのカットアウト価格は100ポンド当たり267.94ドル。6月上旬の最高値からは約70ドル値下がりしているが、パッカーマージンが歴史的な高水準にあることから、ハッカーは肥育牛の高値購入を継続しているという。

LMICの試算によると、生体牛とカットアウト価格の価格差は、7月第3週時点の去勢牛で1000ポンド当たり732ドル。過去20年間の平均164ドル、過去10年間の平均188ドルを大きく上回っている。

7月第4週の生体牛の平均価格は122.82ドル、前週比0.66ドル高だが、枝肉価格は0.53ドル安の197.80ドルだった。第3週の主要5州における取引は6万905頭にとどまっており、パッカーはフォワード取引やフォーミュラ取引で手頃な牛を入手し、必要に応じて現金取引市場を利用していると見られる。

枝肉重量が低下していることも、生体牛価格にはプラス要因となっている。7月10日までの去勢牛の週間平均重量は885ポンド、前週比1ポンド増だが、前年同週比17ポンド減。未経産牛は平均812ポンド、同1ポンド増、17ポンド減。全体平均は814ポンド、同2ポンド減、24ポンド減。この減少分をと畜頭数に換算すると、同週の総と畜頭数(58万744頭)から1万6635頭がマイナスされることに相当する。

 

※2021年7月26日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
リテール

牛肉の小売価格はピーク間近に、豚肉9カ月連続上昇

 
 

牛肉の小売価格は5〜6月に高騰し、7月も同水準を維持する見通しだ。しかし、7月中旬までの6週間に、チョイスのカットアウト価格が100ポンド当たり48ドル下落したことを受け、牛肉小売価格は8月にはピークに達する可能性がある。

昨年6月の牛肉小売価格は、新型コロナの影響で多くのアイテムが最高値を記録した。このため、今年6月の生鮮牛肉の小売価格はポンド当たり7.11ドル(前年同月比1.2%安)と前年を下回ったが、これは昨年6月(7.56ドル)と5月(7.59ドル)に次いで過去3番目に高い。

牛ひき肉の価格は8.0%安の4.36ドル、チャックローストは7.4%安の6.64ドル、ラウンドローストは5.1%安の6.21ドルだが、チョイスのサーロインステーキは3.4%高の10.78ドル、シチュー用ビーフは6.80ドル、未調理ビーフステーキは9.75ドルで、いずれも1年前の最高値を更新した。

一方、豚肉の小売価格は、年始から前年水準を超えて推移しており、9カ月連続で上昇している。6月は4.55ドルで、1960年以降で最高値を記録した。スライスベーコンは前年比15.6%高の6.67ドル、ボンレスハムは6.8%高の4.92ドル。

ポークチョップは全体平均で4.09ドル、2.4%安。チョップ(センターカットボンイン)とボンレスチョップがそれぞれ4.2%安の4.35ドル、3.2%安の4.54ドルと値下がりした。

ブロイラーの小売価格は2.06ドルと過去2番目に高いが、前年比では1.1%安。チキンレッグ(ボンイン)、ボンレスチキンブレストはそれぞれ0.6%高の1.61ドル、0.1%高の3.35ドルとなっている。

 

※2021年7月26日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
消費動向

ひき肉需要で経産牛値上がり、消費者は本物の牛肉好む

 
 

アーカンソー大学のジェームス・ミッチェル氏は、「ビーフカウ(肉用種の経産牛)はと畜頭数が急増しているにもかかわらず、牛ひき肉の強い需要で価格が上昇している」と指摘する。

ビーフカウは、赤身率90%の低脂肪トリミングの原料となり、赤身率50%のトリミングと混合して、牛ひき肉やハンバーガーに仕向けられる。低脂肪トリミングの原料は、この他にデイリーカウ(乳用種の経産牛)と輸入の牛ひき材がある。

米国全体の牛ひき材原料に占めるビーフカウとデイリーカウの割合は2019年が28.4%、2020年は27.6%。特にビーフカウのトリミングは、2020年の赤身率50%の低脂肪トリミングの原料として41.3%を占めたという。

今年のビーフカウの平均と畜頭数は、前年同期比9.9%増、2019年比では12.4%増。低脂肪トリミングの原料に占める割合はさらに拡大していると推測されるが、と畜頭数の増加にもかかわらず、サザンプレーンズにおけるビーフカウの平均価格は前年比8%高、2019年比14.7%高。

ビーフカウの高値は、デイリーカウのと畜減少と輸入牛肉の減少も要因の一つだ。今年これまでのデイリーカウの平均と畜頭数は同0.9%減、2019年比3.7%減。USDAの今年の牛肉輸入量予測は10%減。

赤身率90%の低脂肪トリミングの卸売価格は前年比4%安だが、2019年比では11%高。小売価格は5月までの平均で同1.6%高、2019年比9.9%高。ミッチェル氏は「経産牛のとう汰と低脂肪トリミングの供給を増加させ、価格も押し上げているのは、牛ひき肉需要が強いことの証だ」と述べている。

◎消費者は植物由来より本物の牛ひき肉を好む

カンザス州立大学の研究者による2年間の調査で、消費者は植物由来のひき肉に比べて、圧倒的に本物の牛肉のひき肉を好むことが明らかになった。

調査では、赤身と脂肪の割合が「7対3」「8対2」「9対1」の牛ひき肉と、「小売で販売される代替製品」「フードサービスで使用される代替製品」「従来の大豆由来の代替製品」を用いて、パティの見た目とともに、ジューシーさ、やわらかさ、テクスチャー、口当たり、全体的な味覚―など実際に食べた時の官能調査を行った。

いずれの項目でも、消費者は植物由来製品より牛肉の方が良いと回答した。代替製品には風味はあるものの、牛ひき肉とは全く異なると感じている。消費者パネル調査の要点は以下のとおり。

①見た目:3つの牛ひき肉カテゴリーが、代替製品のいずれに比べてもはるかに良い。
②ジューシーさ:フードサービスの代替製品は「7対3」の牛ひき肉と、「同等」と評価されたが、小売および大豆代替製品はいずれも「乾燥している」と評価された。
③味わい:消費者は3つの代替製品の風味は、牛肉らしさが非常に低いと回答。本質的に、代替製品は牛肉に似た味とは評価されず、消費者は真似してつくられた味を好まないとの結果になっている。

 

※2021年7月26日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 

マーケット・データ

 
 
 
 
 
 
 

ポーク・ファクト・シート