印刷する
 

TRADER'S Be & Po

vol.380 Jun.21.2021
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
市況ニュース サイバー攻撃の影響で牛肉価格が一時的に急伸
豚肉価格の上昇続く、需要増と供給タイトで
ワールドトレード 中国の5月の食肉輸入、3.3%減の78万9千トン
販売動向 牛肉の売れ行き好調、輸出も急増続く
出荷動向 フロントエンドの牛の供給、10月以降は縮小へ
ポーク関連ニュース 繁殖豚の淘汰進む、飼料コストの高さを懸念
生産予想 2022年の肥育牛価格は122ドル予想―USDA
マーケット・データ 生体牛・豚価格、カットアウトバリュ、穀物先物価格
ファクト・シート ビーフ(2021年4月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
定期購読(無料)の登録はこちら バックナンバーはこちら
 
市況ニュース

サイバー攻撃の影響で牛肉価格が一時的に急伸

 
 

ロシアの犯罪グループによるJBSグループへのサイバー攻撃は、全米の食肉業界に大きな警鐘を鳴らした。JBSの各工場はすでに通常営業を再開しており、市場の混乱は短期的だったが、最も大きな影響を受けたのはビーフカットアウト価格で、急激に値上がりした。

JBSがサイバー攻撃を確認したのは5月30日の日曜日。翌31日の月曜日はメモリアルデーで、もともと全工場が休みだった。火曜日(6月1日)の牛と畜頭数は推定9万4000頭。これは前週火曜日に比べて22.2%・2万7000頭少ない。豚のと畜頭数は推定39万頭、同19.6%・9万5000頭の減少。

JBSが稼働を再開した水曜日(2日)の牛と畜頭数は10万5000頭、豚は47万頭に回復した。木曜日(3日)には、牛は12万頭とさらに増加し、豚も47万頭を維持したため、市況への影響は火・水曜日の先物取引と牛肉卸売価格にとどまった。

火曜日の先物取引では、6月限の生体牛価格が232ポイント安の100ポンド当たり113.55ドル、8月限は200ポイント安の116.60ドルとなった。しかし水曜日には、「影響は短期的」との認識が市場関係者に広がり、先物価格はいずれも回復。6月限の生体牛価格は457ポイント高の117.12ドル、8月限は265ポイント高の119.25ドルで取引を終えた。

ボックスビーフ価格は急上昇した。火曜日にチョイスのカットアウト価格は3.59ドル高、セレクトは5.55ドル高。水曜日にはさらに大幅続伸し、チョイスは5.60ドル高、セレクトは5.43ドル高となった。

今回の攻撃で、USDAへの食肉卸売価格の報告が大幅に遅れたとのメディアの報道は誤りだ。生体牛の現金取引では、肥育業者とパッカーが影響を考慮したことから、火曜日の取引は行われなかった。

 

※2021年6月7日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

豚肉価格の上昇続く、需要増と供給タイトで

 
 

世界最大の食肉処理企業であるJBSへのサイバー攻撃は、もともと連休で稼働日数の少ない週の豚肉供給をさらに減少させた。JBSの工場の稼働停止で、6月第1週の豚と畜頭数は200万頭を割り込み、前週より40万頭近く減少した。このため、小売業者は連休明けの補充買いを予定通りに進めることができなくなった。

豚と畜頭数の減少は、スポット市場の供給に明らかな影響を与えた。スポット市場で取引された豚肉のコンテナ数は前週比15%減。食肉販促にとって重要な2つの祝祭日週(父の日、独立記念日)を前に、未成約の供給はすでにタイトになっていたため、今回の生産停止はスポット市場の価格により大きな影響を与えた。

しかし、すでにと畜能力の上限近くで稼働している牛とは違い、ポークパッカーは処理能力にゆとりを持っている。5月の週間平均と畜頭数は240万頭前後。これに対して3月は255万頭、1・2月は能力上限に近い270万頭だった。ここ数週間のパッカーの課題は、生体豚の集荷にあったのが実情だ。

6月第1週の肥育豚のと畜重量が増加していることから、一部の出荷豚に滞留が生じたと見られるが、第2週の豚と畜頭数は250万頭を超える可能性があり、製品不足の解消を促すだろう。だが、豚肉市場が依然としてタイトな供給状況にあることに変わりはない。供給が増加して需要とのバランスが取れるのは、夏季以降になると見るべきだろう。

先物価格でも明らかにそうした見方が支配的だ。ポークカットアウトの先物取引は6月契約分が100ポンド当たり132ドル、7月分は130ドルをつけている。これはバラやモモといった加工用原料に限らず、リブ、バット、ロインにも明らかなプレミアムがあることを示している。競合する他の食肉の高値やコロナ後の需要回復、6月後半から7月にかけて供給が減少する季節的な傾向などを要因に、豚肉価格は引き続き高値で推移するだろう。

 

※2021年6月7日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

  ポークカットアウトバリューの推移(日次ベース)
 
ワールドトレード

中国の5月の食肉輸入、3.3%減の78万9千トン

 
 

中国の5月の食肉輸入量は78万9000トン(前年同月比3.3%減)と前年同月を下回った。国内の豚肉価格が下落したことで、輸入需要が減少し、前月(92万2000トン)から急速に減少。2020年11月(77万5000トン)以降で最低となった。

中国では、2018年のアフリカ豚熱発生以降、国内の豚肉生産は落ち込み、豚肉や他の食肉の輸入増加が続いてきたが、2020年を通して生産体制の再整備や拡大のための集中的な取り組みが行われ、今年の国内生産は大幅に増加している。

国内生産の回復と昨年末以降の大量輸入により、豚肉価格は1kg当たり22元(3.44ドル)と、今年の年始の価格に比べて半分以下にまで低下している。ただ1〜5月累計の食肉輸入量は434万トン(前年同期比12.6%増)と、依然として前年を上回っている。

 

※2021年6月7日 Foodmarket.com

 
販売動向

牛肉の売れ行き好調、輸出も急増続く

 
 

ビーフのカットアウト価格が高騰を続ける中にあっても、牛肉の取引は国内外で活発だ。先週のカットアウト価格の上昇は、JBSの牛肉処理工場がサイバー攻撃によって一時的に停止したことが主因だった。火曜から木曜までの間に、チョイスのカットアウトは100ポンド当たり9.58ドル高の340.55ドルに、セレクトは同12.26ドル高の313.16ドルに達した。

この高値に対して、小売業者は牛肉販売価格の値上げ、あるいは6月後半から7月にかけての販促を縮小することも懸念されるが、それは今後のカットアウト価格の反落スピードと下げ幅次第だろう。

アナリストは「メモリアルデーの連休中、小売の牛肉の売れ行きは増加傾向にあった。値上がりに対する消費者の抵抗の兆しも現れ始めているが、工場再開で牛肉の生産流通が正常化すれば、カットアウト価格は反落することが予想される。これに並行して、小売業者はマージンを再構築するだろう。短期的・季節的な需要の落ち込みはあっても、相対的に牛肉需要は好調が続くだろう」と予想する。

一方で牛肉輸出は、海上輸送等の制約にもかかわらず、5月最終週も引き続き活発だった。同週の輸出量は合計1752ロード(≒コンテナ)。これは同週の総販売量7064ロードの24.8%に相当する。その前の週の輸出割合も23.9%だった。通常、月間の牛肉生産量に占める輸出割合は15%程度だ。

輸出割合は増加しているものの、USMEFダン・ハルストロム会長兼CEOは「港湾の混雑・冷蔵コンテナの不足・コンテナを運ぶシャーシの不足・運賃の値上がり・船便の遅延などが、引き続き輸出拡大の制約となっている。これは輸送上の制約であるだけではなく、世界で牛肉・豚肉の最も信頼できるサプライヤーとしての米国の長年の評判を危険にさらす可能性もある」とし、USMEFは業界パートナーと協力して、連邦規制当局の間でこれらの課題に対する認識を強め、海外向け貨物の流れを改善するための解決策を提案しているという。

 

※2021年6月7日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
出荷動向

フロントエンドの牛の供給、10月以降は縮小へ

 
 

この1年を通して、生体牛価格の下落誘因として懸念されてきたフロントエンド(肥育期間150日以上)の牛の供給は、10月以降に前年割れに転じる見通しだ。4月のフィードロット出荷頭数193万8000頭と、4月としては2008年以降最多を記録した。

5月1日時点のフィードロット飼養頭数は1172万5000頭(前年同月比4.7%増)。2019年同月比では0.7%・8万2000頭の減少。5月としては2019年に次いで過去2番目に多く、過去5年平均と比べると45万6000頭多い。

アナリストは「5月の出荷率は期待外れの水準となったが、フロントエンドの牛の供給の全体的なトレンドは損なわれていない。この区分の牛は今四半期の初めにピークに達し、以降は減少傾向にある。この傾向はさらに加速し、10月には2019年と過去5年平均を下回る見通しだ」という。

4月の導入頭数は182万1000頭(同27.2%増)。2019年比では1.1%減。1〜4月の導入頭数も2019年比で1.9%減少している。フィードロット飼養頭数は依然として多く、今後数カ月間に出荷可能な牛が潤沢であることに変わりはないが、4月の導入では、干ばつの影響もあって軽量級の素牛導入が増加している。

今年の肥育業者の推定利益は、一頭当たり40ドルの黒字から60ドルの赤字まで振れており、上下動の激しい年になっている。飼料コストの上昇も一因ではあるが、例年と違う点は肥育素牛の導入コストだ。カンザス州の750ポンドの去勢牛の平均価格は、1月の134.69ドルから4月には141ドルに上昇している」という。

 

※2021年6月7日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
ーク関連ニュース

繁殖豚の淘汰進む、飼料コストの高さを懸念

 
 

母豚のと畜頭数は、ここ数週間でペースダウンしたが、依然として2019年を上回って推移している。豚肉価格は高騰しているものの、生産者にとっては飼料価格の上昇が最大の懸念材料となっているようだ。

3・4月の繁殖豚(母豚および種雄豚)のと畜頭数は63万2500頭、2019年同月比で10.8%・6万2000頭の増加。5月は2019年同月より1万4000頭少ない27万2000頭前後と見込まれる。四半期(3〜5月)累計では依然として4万8000頭近い増加となる。

3月1日時点の繁殖豚飼養頭数に対すると畜頭数の比率は14.5%と、2019年同期比で1ポイント高い。繁殖豚飼養頭数に対すると畜頭数の比率がこれほど高まったのは、昨年の春夏期以来のことだ。

 

※2021年6月7日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

 
生産予想

2022年の肥育牛価格は122ドル予想―USDA

 
 

USDA−ERS(米国農務省経済調査局)は、2021年の肥育牛の平均価格(100ポンド当たり)を116.30ドル、2022年はさらに5%高い122.00ドルと予想している。これは2017年以降で最高値となる水準だ。需要の強さと肥育牛の供給がタイトになることを要因にあげている。

肥育素牛(去勢)価格は、牧草地の状況悪化と飼料コストの上昇により、繁殖・育成農家がフィードロットへの出荷を早める(売り急ぐ)傾向が強まると予想されることから、従来予想に比べて2021年の第2四半期は1ドル、第3四半期は2ドル下方修正し、年間予想価格は139.30ドルに修正された。2022年はフィードロット外の牛が減少するため、肥育素牛価格は前年より高くなり、2020年比で3%高の144.00ドルと予想している。

5月6日の全米干ばつモニターの報告では、国土の66%が「ある程度の水準」の干ばつにさらされており、さらに国土の23%がカテゴリー2にあたる「非常に強い」または「特に強い」干ばつ下にある。前年同期のこの比率は1%未満だった。牛の飼養頭数は36%が干ばつの地域で、うち14%カテゴリー2の地域にある。

加えて、USDA−NASS(国立農業統計局)の最新の収穫進行状況レポートによると、牧草地の44%が「悪い」または「非常に悪い」条件にあるという。前年同週のこの比率は16%だ。こうした牧草地の影響で、干し草の使用が増え、結果として干し草の価格が上昇する可能性がある。

同レポートの干し草の在庫は、5月1日時点で前年比12%減と予想される。2019年と比べて21%多いものの、過去5年平均および過去10年平均を下回っている。干ばつ状況の進行、牧草地の条件悪化、干し草・飼料コストの上昇により、2021年はフィードロットへの導入ペースが早まり、その反動で2022年の導入頭数は前年を下回ることが予想される。さらに、牧草の生育が進まない場合、2021年は経産牛のと畜が増え、2022年には繁殖用雌牛の飼養頭数が減少する可能性がある。

これらの要因により、2021年の牛のと畜ペースも早まる見通しで、結果的に2021年の牛肉生産量は279億ポンドと従来予想よりも2億6000万ポンド増加すると予想。その反動で2022年の肥育牛の供給は減少し、牛肉生産量は273億ポンドと前年を下回ることが予想される。2021年の牛肉輸出は32億2700万ポンド、2022年は32億2500万ポンドと予想している。

 

※2021年5月31日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

マーケット・データ

 
 
 
 
 
 
 

ビーフ・ファクト・シート