USDA−ERS(米国農務省経済調査局)は、2021年の肥育牛の平均価格(100ポンド当たり)を116.30ドル、2022年はさらに5%高い122.00ドルと予想している。これは2017年以降で最高値となる水準だ。需要の強さと肥育牛の供給がタイトになることを要因にあげている。
肥育素牛(去勢)価格は、牧草地の状況悪化と飼料コストの上昇により、繁殖・育成農家がフィードロットへの出荷を早める(売り急ぐ)傾向が強まると予想されることから、従来予想に比べて2021年の第2四半期は1ドル、第3四半期は2ドル下方修正し、年間予想価格は139.30ドルに修正された。2022年はフィードロット外の牛が減少するため、肥育素牛価格は前年より高くなり、2020年比で3%高の144.00ドルと予想している。
5月6日の全米干ばつモニターの報告では、国土の66%が「ある程度の水準」の干ばつにさらされており、さらに国土の23%がカテゴリー2にあたる「非常に強い」または「特に強い」干ばつ下にある。前年同期のこの比率は1%未満だった。牛の飼養頭数は36%が干ばつの地域で、うち14%カテゴリー2の地域にある。
加えて、USDA−NASS(国立農業統計局)の最新の収穫進行状況レポートによると、牧草地の44%が「悪い」または「非常に悪い」条件にあるという。前年同週のこの比率は16%だ。こうした牧草地の影響で、干し草の使用が増え、結果として干し草の価格が上昇する可能性がある。
同レポートの干し草の在庫は、5月1日時点で前年比12%減と予想される。2019年と比べて21%多いものの、過去5年平均および過去10年平均を下回っている。干ばつ状況の進行、牧草地の条件悪化、干し草・飼料コストの上昇により、2021年はフィードロットへの導入ペースが早まり、その反動で2022年の導入頭数は前年を下回ることが予想される。さらに、牧草の生育が進まない場合、2021年は経産牛のと畜が増え、2022年には繁殖用雌牛の飼養頭数が減少する可能性がある。
これらの要因により、2021年の牛のと畜ペースも早まる見通しで、結果的に2021年の牛肉生産量は279億ポンドと従来予想よりも2億6000万ポンド増加すると予想。その反動で2022年の肥育牛の供給は減少し、牛肉生産量は273億ポンドと前年を下回ることが予想される。2021年の牛肉輸出は32億2700万ポンド、2022年は32億2500万ポンドと予想している。
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