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TRADER'S Be & Po

Extra Edition May.20.2021
 
米国食肉輸出連合会
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中国の穀物需給とトウモロコシ輸入予測
世界の主要穀物生産国の輸出状況

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トピック

USDA・FAS(米国農務省・海外農業サービス局)の北京発のGAINレポートで、今年の中国のトウモロコシの輸入予測が更新されことを機に、中国のトウモロコシ大量輸入への関心が一層高まった。更新された予測では、中国の穀物需要は飼料用はじめ食品・種子・工業用のすべてで高まっており、USDAの従来予測(2月時点・2400万トン)を上回る可能性が示された。

一方、主要な穀物生産国では、気候・通貨安・国境紛争などによる供給への懸念が増大している。世界の穀物輸出市場における主要輸出国のシェアは、米国が21%で最も多い。次いでウクライナが約12%を占め、小麦、トウモロコシ、大麦などを輸出している。ロシアも10%を超えている。以下、中国の穀物輸入の最新予測と、主要生産国の状況をレポートする(エリン・ボアーUSMEFエコノミスト)。

なお、各国の穀物年度は世界・米国が9月〜翌年8月、ウクライナ・中国が10月〜翌年9月、アルゼンチン・ブラジルは3月〜翌年2月。

 
  主要輸出国の穀物輸出量の推移(トウモロコシ、小麦・大麦含む)
 

中国の穀物・飼料に関する最新情報

FASのGAIN(国際農業情報ネットワーク)の北京発レポート「中国の穀物と飼料に関する報告」によると、中国の2021/22年度の飼料・その他用の穀物消費量は、前年度に比べて1700万トン、6.7%増加すると予測される。同レポートは、中国の国家統計局(NBS)が公表した20/21年度の穀物生産量に関する公式統計(表1〜2)を反映して更新された。

  中国の2020/2021年度の穀物生産見通し(作付面積、生産量、単位収量)
  中国の2020/2021年度の穀物生産見通し(作付面積、生産量、単位収量)
 

中国の養豚産業は、豚群の再構築へ向けた取組みを継続しているが、2021年の生産量は依然としてASF発生前(2017年)の水準を下回りそうだ。

中国では、新たな大型の繁殖施設が増設されているが、子豚の生産効率の低さと繁殖豚の導入コストの高さに加え、繁殖豚・子豚はASF以外の疾病の影響も受けている。これらが要因となって、2021年から2022年にかけての豚飼養頭数は、大幅な拡大は抑制される見通しだ。

一方、家きん類の生産は拡大すると予測される。しかし、飼料価格の高騰や他の食肉との競合、鶏肉価格の安さなどから、成長率は3%増にとどまる見通しだ。

中国農業部は、2021年2月現在の豚の飼養頭数について、2020年末にASF発生以前の水準の92%に回復し、2021年6月までに同水準を回復するとの見通しを示していたが、業界では懐疑的な見方が根強かった。

飼料穀物価格は、養豚産業からの需要の強さから上昇を続けると予測されるが、一方でASFおよび他の疾病の発生により、豚肉生産の回復は遅れるとの情報も少なくない。最近の業界報告では、11月に再びASFが発生し、子豚の死亡率が3カ月連続で急上昇。母豚の飼養頭数は中国北部で20%減、中央部で10%減、南部では30%減と大幅に減少したことが報告されている。

中国の飼料用穀物の生産量は、2020年に2億5280万トン(前年比10.4%増)に達した。このうち、養豚用は35.3%(前年33.5%)、家きん類用は49.6%(同50.6%)。養豚用の生産量は8920万トン(同16.4%増)。史上最多記録(2018年)の86%相当に達している。前年比で採卵鶏用は7.5%、ブロイラー用は8.4%、反すう動物用は18.9%増加した。

中国のトウモロコシ輸入量―20/21年度は2800万トン予測

中国のトウモロコシの輸入先は、米国とウクライナがほぼ独占している。更新された輸入予測では、20/21年度の輸入量は、過去最高の2800万トンに達すと推定している。過去の推定値から増加した要因は、飼料需要が継続拡大していること、そして備蓄の積み増しが不足していることだ。

21/22年度の輸入量は、国内生産量が前年度水準を超えて増加するものの、不足分を補うために1500万トンになると予測されている。21/22年度の中国の穀物消費量は前年度比で1700万トン、6.7%増加すると予測されている。

トウモロコシの価格は依然高く、商業用に保有されている在庫は過去15年間に類を見ない水準にある。古米と小麦の在庫量は記録的に多く、高騰するトウモロコシの代替品として、飼料や高度加工工場(デンプン、エタノール等)に流入している。

価格高騰に連動して、輸入量は低関税率割当数量(※)を超えて急増している。業界関係者は、トウモロコシの需給状況は2021年から2022年後半までは現状のままで推移すると予想している。

 

※2020年の輸入枠は720万トン(関税率1%、超過した場合は65%)。

  中国の米国&ウクライナからのトウモロコシ輸入量
  中国のトウモロコシ輸入量(主要国別)
  中国のトウモロコシ価格(週当たり)
 

主要生産国の穀物輸出―2020年は米国17%増、ウクライナ10%減

米国の2020年の穀物輸出量は8800万トン(同17%増)と大幅に増加した。内訳はトウモロコシが59%、小麦30%、ソルガム7.5%。輸出量全体に占める中国のシェアは17%で、2019年の2%から急拡大した。中国向けの輸出量はトウモロコシが690万トン、ソルガム557万トン、小麦250万トン。

  米国の穀物輸出量(主要輸出先別)
 

ウクライナの2020年の穀物輸出量は5130万トン(同10%減)。全体の輸出量が減少する中で、中国向けに特化したことから、他の国への輸出量は大幅に減少した。輸出穀物の内訳はトウモロコシ54%、小麦35%、大麦10%。ウクライナは欧州、韓国、東南アジアにも多く輸出している。

ロシアの輸出穀物では小麦が83%を占め、次いで大麦が11%、トウモロコシ5%。輸出先はトルコ、エジプト、サウジアラビア、バングラデシュなどである。

黒海周辺地域ではロシアとウクライナ東部の国境で緊張が高まっている。ウクライナは、トウモロコシの対中国輸出で米国に次ぐ供給国であり、事態の成り行き次第で直接的な影響がある。ロシアは小麦の最大輸出国であるが、小麦は同国の主食であることから、食料安全保障に関する潜在的な懸念がある。

  ウクライナの穀物輸出量(主要輸出先国別)
 

ブラジルは昨年半ば以降、トウモロコシ価格が高騰し、輸入関税を一時停止している。同国は2期作目(6〜9月)の収穫を控えているが、価格高騰の背景には、レアル安による輸出拡大とエタノール需要の増加があり、価格高騰の長期化が懸念される。

  ブラジルのトウモロコシ価格の推移
 

FASのGAINレポートは下記からダウンロートできます。このレポートはUSDAの公式予測ではありません。
https://apps.fas.usda.gov/newgainapi/api/Report/DownloadReportByFileName?fileName=Grain%20and%20Feed%20Annual_Beijing_China%20-%20People%27s%20Republic%20of_04-01-2021