中国の養豚産業は、豚群の再構築へ向けた取組みを継続しているが、2021年の生産量は依然としてASF発生前(2017年)の水準を下回りそうだ。
中国では、新たな大型の繁殖施設が増設されているが、子豚の生産効率の低さと繁殖豚の導入コストの高さに加え、繁殖豚・子豚はASF以外の疾病の影響も受けている。これらが要因となって、2021年から2022年にかけての豚飼養頭数は、大幅な拡大は抑制される見通しだ。
一方、家きん類の生産は拡大すると予測される。しかし、飼料価格の高騰や他の食肉との競合、鶏肉価格の安さなどから、成長率は3%増にとどまる見通しだ。
中国農業部は、2021年2月現在の豚の飼養頭数について、2020年末にASF発生以前の水準の92%に回復し、2021年6月までに同水準を回復するとの見通しを示していたが、業界では懐疑的な見方が根強かった。
飼料穀物価格は、養豚産業からの需要の強さから上昇を続けると予測されるが、一方でASFおよび他の疾病の発生により、豚肉生産の回復は遅れるとの情報も少なくない。最近の業界報告では、11月に再びASFが発生し、子豚の死亡率が3カ月連続で急上昇。母豚の飼養頭数は中国北部で20%減、中央部で10%減、南部では30%減と大幅に減少したことが報告されている。
中国の飼料用穀物の生産量は、2020年に2億5280万トン(前年比10.4%増)に達した。このうち、養豚用は35.3%(前年33.5%)、家きん類用は49.6%(同50.6%)。養豚用の生産量は8920万トン(同16.4%増)。史上最多記録(2018年)の86%相当に達している。前年比で採卵鶏用は7.5%、ブロイラー用は8.4%、反すう動物用は18.9%増加した。
中国のトウモロコシ輸入量―20/21年度は2800万トン予測
中国のトウモロコシの輸入先は、米国とウクライナがほぼ独占している。更新された輸入予測では、20/21年度の輸入量は、過去最高の2800万トンに達すと推定している。過去の推定値から増加した要因は、飼料需要が継続拡大していること、そして備蓄の積み増しが不足していることだ。
21/22年度の輸入量は、国内生産量が前年度水準を超えて増加するものの、不足分を補うために1500万トンになると予測されている。21/22年度の中国の穀物消費量は前年度比で1700万トン、6.7%増加すると予測されている。
トウモロコシの価格は依然高く、商業用に保有されている在庫は過去15年間に類を見ない水準にある。古米と小麦の在庫量は記録的に多く、高騰するトウモロコシの代替品として、飼料や高度加工工場(デンプン、エタノール等)に流入している。
価格高騰に連動して、輸入量は低関税率割当数量(※)を超えて急増している。業界関係者は、トウモロコシの需給状況は2021年から2022年後半までは現状のままで推移すると予想している。
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