ラボバンク社のレポートで、アナリストのケビン・グリアー氏は「米国の肥育牛供給と牛肉処理能力のバランスは、2022年以降につり合いがとれ始める可能性がある。これは、と畜能力の拡大と肉牛減少の双方によってもたらされる」と指摘している。肥育業者の視点でとらえると、少なくとも2021年までは厳しい状況が続くことを意味するが、2023年までには肥育業者の優位性が強まるだろう。
そのためには、2021〜2022年の間の合理化が重要なステップとなる。1日当たりのと畜処理能力が5000〜6000頭増加すれば、肥育牛の供給と処理能力のバランスが是正される。問題は、いつ、どのようにしてバランスがつり合うかだ。
本紙調査のビーフパッカー上位30社を基にすると、米国の1日当たりの最大と畜能力は2019年で12万6400頭。2020年は緩やかに増加し、工場の新設や拡大を通じて、2022年までに約12万8000頭になる。しかし、10年以上前と比べれば、はるかに少ない。2012〜2014年の期間に、大手パッカーの工場閉鎖や合理化が相次いだからだ。
グリアー氏は「市場のバランスを評価する一つとして、近年、パッカーマージンの拡大がアンバランスさの象徴とされ、生産者が適正なマージンを確保できていないとの見方がある」と指摘する。そうした見方が正しいかどうかは別として、パッカーマージンは確かに
上昇している。
2018年以前の5年間は平均で1頭200ドルだったが、2017年以降から急増している。大手パッカーの工場火災やCOVID-19による混乱がなかったとしても、1頭400ドルのマージンが恒常化している。
肥育牛に限定して考えると、2010年から2017年までの年間上位30社のと畜能力に対し、1月1日時点の去勢牛・未経産牛の飼養頭数は約97%。つまり、年始時点の肥育牛の供給は、年間の処理能力より約3%少ないことになる。2018年から2020年までのこの比率は102%だとグリアー氏はいう。
近年では、処理能力に対して供給が増大している。2018年以前は供給が処理能力を下回っていたのに対し、現在は供給が能力を超えていることを示している。実際の価格交渉でも肥育業者の影響力が弱っている。同氏は、2022年までに去勢牛・未経産牛の飼養頭数が2020年1月の合計値から約3%減少すると予想し、アグリビーフとFPLフードの能力拡大とも相まって、供給と処理能力の比率は98%まで下げられるはずだと予想する。
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