ラボバンク社のアナリストによるレポート「The Case for Capacity」によると、牛肉工場のと畜能力を1日当たり5000〜6000頭拡大することで、肥育牛供給と処理能力のバランスが是正され、かつ、パッカーも利益を確保できる可能性があるという。
同レポートは「最近の収益性、就業環境、輸出市場へのアクセス向上、そして消費者主導による製品の差別化が相まって、ビーフパッカー業界にはこの数十年で最大の革新的拡大のチャンスが到来している」と指摘する。
既存工場の能力拡大には、施設の拡張・改善が解決策となる一方で、中小規模(1000〜2000頭処理)においては、新規建設による能力拡大が最も効果的だという。米国の牛肉パッキング能力の拡大は、その双方から生じるかもしれない。
2010年代前半には、干ばつによって雌牛群が縮小し、結果として肥育牛が減少したため、肥育牛価格は記録的水準に上昇して、効率の低い工場は事業閉鎖に追い込まれた。残ったのは、最適な地理条件、サプライチェーンとの連携、規模の経済を通じてコストの効率化を図ってきた工場群だ。
同氏は、能力拡大がまだ実現していない理由の1つとして、キャトルサイクルのタイミングを示唆する。このところの雌牛群の縮小は、肥育牛供給がひっ迫する予兆だ。COVID-19によって発生した生体牛の滞留が解消されると、この傾向はより鮮明になるという。
新規施設の開設コストは、1日当たりのと畜能力1000頭につき1億〜1億2000万ドルと推定される。マージンが良好に見えるタイミングで工場のプロジェクトを開始しても、建設や規制上の要件に数年かかれば、キャトルサイクルが反転して供給がタイトになり、操業開始から数年間は赤字になってしまう可能性もある。
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