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TRADER'S Be & Po

vol.355 Mar.25.2020
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
市況ニュース 需給ひっ迫、メモリアルデーに向け小売製品高騰
牛肉の供給縮小、工場再開で緩やかな回復へ
トピックス 食肉の安定供給確保へ、工場再開計画を公表―USDA
COVID-19関連 CDCとOSHAが食肉工場稼働のガイドライン
供給減で購入点数や販売メニューの制限も
ポーク関連ニュース 3月の豚肉類輸出、前年比40%増、中国向け急増
マーケット・データ 生体牛・豚価格、カットアウトバリュ、穀物先物価格
ファクト・シート ポーク(2020年3月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
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市況ニュース

需給ひっ迫、メモリアルデーに向け小売製品高騰

 
 

食肉供給が短期的にひっ迫し、牛肉・豚肉ともに卸売価格が暴騰している。5月第1週の牛肉生産量は、3億6700万ポンド(前年同週比31%減)。3月最終週に比べると1億9700万ポンド・35%減。豚肉生産量も3億8100万ポンドで同2億1600万ポンド・36%減と激減した。

大幅かつ急激な供給減少によって実需者の必需買いが殺到し、先物取引で販売された製品やフォーミュラ取引の製品を含めて、近年に類を見ない大規模な買い戻しラリーが展開された。

供給減少が劇的だったため、スポット市場での取引に回る供給量は最小限にとどまり、この数日間、牛肉・豚肉製品の取引はオークション(競り上げ)状態となって急上昇した。

数週間前、ポークベリー価格は100ポンド当たり30ドル台だったが、今や200ドル超をつけている。下図が示す通り、現在の価格高騰は、供給不足と需要の固定化の相関によるものだ。

農場の家畜は不足していない。問題は処理能力がどれだけのスピードで回復できるかだ。それによって今夏の価格動向も左右される。今後のリスクは、と畜頭数が回復し始めた時に、現在の価格水準と需要にギャップが生じて変動性が増大し、乱高下につながる可能性があることだ。

最も懸念されるのは、と畜頭数の急激な減少によって生体の在庫が膨らんでいることだ。170万〜190万頭の豚の出荷が滞留しており、5月のと畜頭数が必要水準に達しないと、その数は増加し続ける可能性が高い。

先物市場は現在、見通しが非常に不安定だ。一方で、カットアウト価格に連動するフォーミュラ取引では、カットアウト価格の高値が生体豚価格の下支えに役立っているが、メモリアルデーの需要は不透明感が強い。

モモの価格は、全体のラリーより遅れて推移している。除骨やトリミングに必要な労働力が不足しているためだ。加工ラインの人手不足は一部のカットの価格を高止まりさせる可能性がある。

 

※2020年5月13日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

  米国の牛と畜頭数とチョイスのカットアウト価格の推移(週間) / 米国の豚と畜頭数とカットアウト価格の推移(週間)
 
 

牛肉の供給縮小、工場再開で緩やかな回復へ

 
 

牛肉・豚肉の供給が記録的な低水準まで縮小している。5月第1週の生産量は、牛肉・豚肉ともに前年同週比35%減。4月最終週の工場の稼働率は豚肉55%、牛肉58%だった。

一時的に閉鎖していた食肉処理工場が、相次いで稼働を再開した。まだ通常には戻っていないが、先週の牛と畜頭数は45万2000頭と緩やかな回復を見せている。ネブラスカ州では1日4800頭の処理能力をもつ工場が2週間閉鎖したが、一方で7000頭の能力をもつ工場が稼働を再開した。

パッカーは、従業員を新型コロナウイルスから守るためにさまざまな措置を講じている。各種の対策に先行して取り組んできた大手パッカーは「工場が安全に働ける場所であるという認識が徐々に広がっている。だが、子供のケアも課題の一つだ。食肉業界、特に加工や再加工部門では数千人の女性が働いている。その多くが子供の面倒を見るために出勤できない状況にある」という。

例年、5月の牛と畜頭数は週当たり平均で66万頭を処理しているが、今年の5月は50万頭台を回復するのは難しいだろう。タイソン社のダコタ・シティやパスコ工場、JBS USA社のグリーン・ベイ工場が再開したことで、先週のと畜頭数は増加傾向を示した。

 

※2020年5月11日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
トピックス

食肉の安定供給確保へ、工場再開計画を公表―USDA

 
 

米国農務省(USDA)は5月8日のニュースリリースで、COVID-19のパンデミックに対応して、食肉供給を米国全体の必要不可欠なインフラと位置付けた大統領令(既報)と、それを受けて米国疾病対策センター(CDC)および労働安全衛生局(OSHA)が食肉工場の稼働継続のために作成したガイドラインにより、14工場が稼働を再開する予定であることを発表した。

ソニー・パーデュー長官は、「トランプ大統領は、米国の生産者や牧場経営者が製品を確実に市場に出荷できるように、食肉加工工場を安全な方法で再開するための断固たる措置をとった。食品の安全性と安定供給のために職務へと復帰する、愛国的で勇敢な数百万人の食肉工場の従業員に感謝を伝えたい」と、食肉関係者の努力に賛辞の言葉を贈った。

USDAは大統領令ならびに国防生産法に基づき、食肉工場および地元当局と協力して、CDCとOSHAのガイダンスを実施する工場の従業員が安全を維持して稼働が継続できるように、24時間体制で取り組むことを表明している。

 
COVID-19関連

CDCとOSHAが食肉工場稼働のガイドライン

 
 

米国疾病対策センター(CDC)および労働安全衛生局(OSHA)が、食肉加工包装工場におけるCOVID-19の感染拡大から従業員を保護するためのガイドラインを発表したことに対して、業界団体の多くが歓迎のコメントを発表した。

全米肉牛生産者牛肉協会(NCBA)は、「この措置によって牛肉処理工場の稼働が引き続きサポートされると同時に、州ならびに地元政府にも、従業員の保護に必要な情報が提供されることになる。このガイドラインは、牛生産者と消費者の双方に不可欠なサービスを引き続き提供するとともに、工場の従業員と地域社会を感染拡大からより確実に守るための指針となる」とコメントしている。

ガイドラインでは、COVID-19の疾患や感染リスクとその要因などをわかりやすく解説した上で、雇用者の責務と遵守事項、労働者が理解して励行すべきことやそのトレーニング、感染者のスクリーニングおよび監視・病人の管理・職場復帰への手順など、COVID-19の評価・管理計画を作成する指針を詳細に示している。

雇用主はハザード評価に基づき、労働者を守るための適切な個人用保護器具(PPE)を選択・提供することが要求され、その適切な脱却手順のビデオまたは対面による視覚的なデモンストレーションを行うことが推奨されている。

具体的な感染防止策としては、労働者間の距離(作業ライン、出勤時や休憩時、ロッカールームや更衣室など)を適切に保つこと、接触期間・接触の種類・リスクを高める可能性がある要因のそれぞれに応じた管理手法と行動=適切な洗浄、衛生、消毒の実践、作業ライン・ワークステーションの配置、物理的なバリア(リップカーテン、プレキシガラス)、マーキング標識などや施設の空調、換気、手洗いステーション・手指消毒剤の配置、混雑エリアを減らすための工夫などが示されている。

CDCおよびOSHAのガイダンスの詳細は下記URLよりダウンロードできます。
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/community/organizations/meat-poultry-processing-workers-employers.html

  食品パッキング/処理作業ラインの配置図
  食品パッキング/処理作業ラインの配置図
  食品パッキング/処理作業ラインの配置図
  食品パッキング/処理作業ラインの配置図
 
 

供給減で購入点数や販売メニューの制限も

 
 

4月初旬以降、牛肉および豚肉の生産量が著しく減少したことで、一時的な食肉不足が生じている。コストコやクローガーなどの主要チェーンは、来店客が一度に購入できる食肉類の商品の点数を制限している。

ハンバーガーチェーンでもニーズを満たす量の牛肉確保に苦戦している。特にウェンディーズ(5850店舗)は、パティにチルドビーフのみを使用しているため、一部店舗で牛肉メニューの一部を制限している。マクドナルドやバーガーキングは、冷凍在庫の取り崩しで凌ぐ必要に迫られているだろう。

一部のアナリストは、メモリアル・デー(5月25日)に向けた小売の食肉供給を前年比30%減と予想する。しかし、出荷待ちの牛・豚の供給は潤沢だ。工場が再開して生産が回復すれば、食肉不足は解消する。問題はそれがいつから始まるかだ。

食肉企業の経営陣は、「不足」という言葉の使用には慎重だ。消費者の巣ごもり需要で小売の需要は30〜40%増加している。しかしフードサービス市場での需要損失を埋めるほどではない。

現時点では、COVID-19が長期的な食肉需要にもたらす影響の全体像を予断することはできない。COVID-19の危機がどのくらい深刻かつ長引くかによって変わってくる。家畜の飼養頭数は変わっておらず、牛・豚・鶏のすべての生体供給は増加が見込まれている。また世界の食肉需要も増加し続けている。

ある経済アナリストは、大手パッカーの経営予測について、4〜6月期の食肉販売は2ケタ台の減少となるが、次の4四半期までに回復すると予想。回復をけん引するのは、閉鎖工場の減少、従業員の出勤率改善、出荷が滞留している家畜のと畜増による波及効果だという。

 

※2020年5月11日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
ポーク関連ニュース

3月の豚肉類輸出、前年比40%増、中国向け急増

 
 

米国の3月の豚肉輸出量(調整品含む)は24万3590トン(前年同月比40.1%増)。前年より約7万トンも増加した主因は、中国向けが急増したことだ。3月の中国向け輸出量は6万9536トン(同287%増)に達した。

次いでメキシコ向けは5万2798トン(同12%増)。3番目に大きな市場である日本向けは3万6009トン(同19.5%増)。この3カ国が増加の大半を占めるが、他の市場も合計で28%増加しており、輸出需要は良好だ。

3月の豚肉生産量は25億6600万ポンド(同12%増)で、月次生産量としては史上2番目に多かった。工場の閉鎖や稼働率低下の問題はまだ発生しておらず、販売できる量が十分にあった。

小売では一時的なパニック買いも発生し、輸出需要が強い一部のカットが豚肉価格の下支えに寄与した。3月のポークカットアウト価格は、平均で前年比1%高だが、プライマルのロインは同23%高、バットは同36%高、ピクニックは同58%高となった。

4月は豚のと畜頭数が大幅に減少したものの、豚肉輸出量はおよそ30%増と推測される。これは中国向けの増加が要因で、夏を過ぎて秋まで継続する可能性がある。労働力不足の今、中国へは6分割で出荷できることは魅力的だ。しかし、これは同時に、加工ラインが通常の処理水準を回復するまでは、国内市場の供給がひっ迫するということでもある。

 

※2020年5月13日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

  ポークロインの価格推移 / ポークバットの価格推移
 

マーケット・データ

 
 
 
 
 
 
 

ポーク・ファクト・シート