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TRADER'S Be & Po

vol.354 May 11.2020
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
トピックス 食肉生産継続を求める大統領令に対し、USMEF会長がコメント
市況ニュース 牛と畜減少で市場一変、生体牛は需要減で下落
豚処理能力不足で供給激変、見通し不透明に
COVID-19関連 経済的救済で肉牛生産者に51億ドル
混乱する世界の豚肉業界―ラボバンクレポート
マーケット・データ 生体牛・豚価格、カットアウトバリュ、穀物先物価格
ファクト・シート ビーフ(2020年3月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
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トピックス

食肉生産継続を求める大統領令に対し、USMEF会長がコメント

 
 

ドナルド・トランプ大統領が4月28日、COVID-19危機への対策として「国防生産法」に基づき、食肉の生産を継続するための大統領令に署名したことを受けて、米国食肉輸出連合会(USMEF)のダン・ハルストロム会長兼CEOは以下のコメントを発表した。

「今回の大統領令は、米国の高品質な食肉を確実に安定供給することを国内外の消費者に保証するものです。すでに米国の食肉産業は、COVID-19の検査、検温、個人用保護具やソーシャル・ディスタンシングといった安全を確保するための特別措置を講じています。

しかし、米国産食肉のサプライチェーンを安定化するために、さらなる対策が求められており、USMEFはこの困難な時期においても安全で継続的な食肉生産に優先権を与えるトランプ政権に心から感謝します。この大統領令は、消費者だけでなく、パンデミックがもたらす深刻な経済的困難に耐えている米国の家畜生産者にとっても歓迎すべきニュースです」

 
市況ニュース

牛と畜減少で市場一変、生体牛は需要減で下落

 
 

牛のと畜頭数が歴史的な低水準となっていることで、生体牛と牛肉の市場環境は一変した。と畜頭数の低下は、COVID-19から従業員の安全を守るために実施している対策や、従業員の休業によって生産のスピードが鈍化しているためだ。

4月第3週のと畜頭数は推定50万2000頭(前年同週比22%減)、うち去勢牛・未経産牛は38万頭。いずれもここ数十年で最低の水準だ。第4週は推定で46万9000頭と、通常稼働週としては過去最少を更新した。

アナリストは、「4月の見込みとしては、週当たり平均で65万7000頭が処理されるはずだった。現在の水準ではスーパーの食肉ショーケースを満たせない。5月は平均66万頭、6月は平均67万2000頭の見込みだったが、新たな就業規定の下では生産のスピードが落ち、必要水準を大きく下回る」という。

工場の閉鎖や稼働制限は、豚のと畜頭数にも大きな影響を与えている。3月21日までの週の豚と畜頭数は史上最多の279万頭。その4週間後、と畜頭数は20%減少して222万4000頭となり、稼働率は処理能力の71%まで低下した。

コンサルティング会社によると、食肉工場の閉鎖や稼働制限によって、食料品店で購入できる製品が少なくなる可能性がある。労働力の制約を受けたパッカーは、家畜の処理方法を調整し、生産するカット数を制限せざるを得なくなる。人手のかかるカットは削減される可能性があり、パッケージ入りの牛ひき肉が増えるだろうとの見通しだ。

一時的に閉鎖していた牛肉処理工場2カ所が、先週月曜に再開、続いて大手の1工場もまもなく再開する予定だが、大手工場の3カ所が経過観察期間にあり、季節的な需要に見合うまで牛肉生産を回復できるかどうかは不透明だ。

4月第4週の生体牛現金価格は、前週の100ポンド当たり105.00ドルから下落に転じ、北部では95ドル、南部では100ドル前後となった。枝肉価格も10ドルほど値下がりした。月曜日にはネブラスカで2108頭が150ドルで取引されたが、火曜から木曜までは多くの地域で取引量が少なく、一時的に148ドルまで低下した。

 

※2020年4月27日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

豚処理能力不足で供給激変、見通し不透明に

 
 

全米の週当たりの豚と畜頭数は、過去最多の277万8000頭から、わずか4週間で週当たり200万頭も水準を下げた。3月の生体豚出荷は、2つの理由から当初予想より早く進行していた。州の緊急事態宣言を受けて消費者がストック買いに走ったことで、パッカーもと畜頭数を増加。生産者も工場閉鎖の潜在的リスクを認識し、積極的な出荷を続けた。

豚肉価格はパニック買いが落ち着くと反落したものの、再び上昇に転じている。上昇幅は部位によって大きく異なるが、今回の価格上昇は需給両面で多くの要因が重なっている。

【需要】ロックダウンとソーシャル・ディスタンシングによって、外食ビジネスが事実上破壊され、小売への需要シフトが起こっている。このシフトは3月の販売統計にはっきりと表れており、食料品店の売上は742億ドル(前年同月比29.6%増・170億ドル増)、外食売上は486億ドル(同22.7%減・143億ドル減)となっている。

需要のシフトは、一部の品目の価格により強く影響している。従来の小売では、リブアイやトップサーロインバットなど一部のステーキカットが主要商品だったが、現在は牛ひき肉・ラウンド・チャックなどの相対的に低価格の商品に需要がシフトしている。

一方で、鶏ムネ肉は伸び悩んでいる。外食から流れ込んだ余剰製品によって、小売市場にはムネ肉が溢れている。外食で使用される鶏肉は、小売販売よりも大容量のため、ムネ肉3枚・4ポンド入りトレイは小売では魅力的な商品にはならない。

【供給】3月の価格急騰は、需要のシフトが起爆剤となった。しかし現在は、市場への供給が難局化しつつあることが価格上昇の要因だ。多数の食肉工場で、一時閉鎖や労働力制限によって稼働が低下している。

最近の報告によると、米国内の食肉工場の3分の1が、COVID-19発生件数の上位25%に入る州に設けられていることがわかっている。感染拡大の抑制のため、従来のような人員配置を維持することは難しくなっている。

外食専用ラインから小売用製品へとシフトする動きが進行中だが、これまで加工・流通業者は、外食か小売のどちらかに焦点を絞って効率を向上させてきた。外食向け製品の梱包設備も備えた業者が、小売向けに供給をシフトするのには限界がある。またチルドミートは“ジャストインタイム”のサプライチェーンが構築されており、システムの変更・調整が制限される。

このため、生産者が牛乳を捨てて野菜を廃棄し、子豚を淘汰するような状況が起こりつつある。同時に、食料品店のショーケースに供給できる量が減少し、需要を制限しているために価格が上がっている。

【結論】家畜の飼養頭数が記録的水準にある一方で、消費者へ供給できる量が減少し、供給混乱が生じている。家庭で消費される食事が増えているため、今後も小売が消費者の需要シフトの利益を受けることは確実だ。豚肉価格は短期的な高騰が予想されるが、6〜8月の価格見通しについてはかなり不透明感が強まっている。

 

※2020年4月27日 Pork Merchandiser's Profit Maximizer

  米国の豚と畜頭数の推移(週当たり)
 
COVID-19関連

経済的救済で肉牛生産者に51億ドル

 
 

米国の農場・牧場経営者の経済的救済を目的として190億ドルを予算化したUSDAのコロナウイルス食糧支援プログラム(CFAP)の一環として、肉牛生産者に51億ドルが振り分けられる。

このプログラムでは、USDAが農場・牧場経営者に対して個別に直接給付を行う。給付は、1月1日から4月15日までに発生した価格損失に基づいて行われる。生産者は期間中の価格損失の85%が補償される。給付の第2弾は4月15日から今後2四半期までの間に予想される損失に対し、30%が補償される。

農場・牧場経営者への直接給付160億ドルは、CARES法の95億ドルと商品金融公社(CCC)の65億ドルの資金で賄われる。直接給付の内訳は、肉牛生産者51億ドル、乳製品生産者29億ドル、豚生産者16億ドル、条植作物生産者39億ドル、特殊作物生産者21億ドル、その他の作物5億ドル。

これに対してNCBA(全米肉牛生産者・牛肉協会)は、牛肉のサプライチェーンを維持し、生産者に援助を提供するために尽力しているトランプ政権と議会に感謝の意を表しつつも、牛生産者へのCARES法の資金配分は少なすぎるとの懸念を伝える抗議の書簡をUSDAに提出した。

NCBAは、COVID-19の危機による全米の牛生産者の経済的損害は拡大し続けているとし、商品あたりの支払い上限が12万5000ドルと低いため、多くの事業者が今回の損害を和らげるのに十分な支援を受けることができず、また提案されている牛の予想損失を基にした給付方式も、子牛セクターの大部分をはじめ多くの生産者を無視することになると指摘。CARES法の下で同じく損害支援に割り当てられた144億ドルの追加計画概要をUSDAが迅速にまとめ、すべてのセグメントの生産者が均等な支援を受けられるように要望している。

一方、全米レストラン協会(NRA)は、COVID-19のパンデミックで急増した失業と経済的損失からフードサービスセクターが回復するよう支援するための緊急支援資金2400億ドルを議員に求めている。NRAが実施した全国調査によると、COVID-19による閉鎖の結果、業界で800万人以上の従業員の雇用が失われ、さらにレストランオーナーの60%以上が、既存の連邦救済プログラムでは従業員の給与を維持できないと回答しているという。

 

※2020年4月27日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

混乱する世界の豚肉業界―ラボバンクレポート

 
 

ラボバンク社は、豚肉需給がCOVIT-19の影響によって世界各地で混乱し、アジアでの製品も不足しているため、2020年は豚肉価格が非常に不安定な状況が続くとするレポートを発表した。

同社のシニアアナリストは、「短期的な需要破壊と、従業員の制約による処理の一時停止の影響が相まって、生産者の利益を縮小し、生産の拡大を鈍らせる。GDPのマイナス成長が豚肉需要にさらなる圧力を加え、すでに危機的な状況にある経営環境はさらに悪化する恐れがある」と指摘している。主要地域の予想は次のとおり。

《中国》 強い生体豚価格、豚群の回復と需要回復の遅さを反映

ASF(アフリカ豚コレラ)による豚群の損失が大きく、生産部門の回復が緩やかなため、生体豚価格は依然として高い。生産者の再構築意欲は強いものの、子豚費用の急激な上昇トレンドが起こっている。ASFの継続的な発生が依然として懸念され、小規模養豚の生産を抑制。豚肉需要の回復は予想より遅い。

《欧州》 ASF、COVID-19が生産に影響、輸出好調も見通し不安定

アジア向けの輸出需要は前年比25%増と、COVID-19による生産混乱をいくらか緩和している。ポーランドでは、ドイツとの国境にある出荷用豚舎でASFが2例発生し、新たな懸念を増している。

《米国》 工場閉鎖と外食需要の低迷が急落要因に

工場閉鎖や労働者不足で不確実性が増大。生体豚価格はここ数週間で35%急落している。豚の飼養頭数が増えており、記録的な供給の下でのと畜処理の低下は、致命的な損失に繋がる可能性もある。豚肉価格は下落したが、好調な輸出が下支えしている。

《ブラジル》 輸出ペースは依然堅調

COVID-19による混乱にもかかわらず、豚肉輸出は依然として堅調。中国からの需要が追い風となっている。為替相場のレアル安とアジアでの供給不足が継続的な成長を支える見通しで、これが国内市場の下支え要因にもなりそうだ。生産者はトウモロコシの価格上昇に直面しており、生産は抑制されるだろう。

 

※2020年4月27日 FOODMARKET.com

 
 

マーケット・データ

 
 
 
 
 
 
 

ビーフ・ファクト・シート