スーパーでパニック買いが起きて食肉のショーケースが空になる今、米国の牛肉業界では、農場から食卓までというサプライチェーンの維持を保証できるかが大きな焦点になっている。連邦政府は先週、日常的な食品は牛乳から卵や食肉にいたるまで十分に供給できると強調した。
食肉最大手のタイソン・フーズは先週、全米で食肉は不足しないと保証し、さらに努力していくとコメントを発表した。自社のブログで「米国の食品供給は十二分にある」と投稿。「需要の増加に応えて今後の安定的供給を確実にするため、我々は様々な手段を講じている。供給できる食品は十二分にある」とし、「レストラン向けに供給していた鶏肉、牛肉、豚肉製品を食料品店向けに生産をシフトさせる予定だ。過去にもこうしたことはあったが、今回のようなスケールは未だかつてない。これまでで着手した中で最大のシフトだ」としている。
パッカーは、労働者がコロナウイルス(COVID-19)検査で陽性となった場合にも工場の稼働を続け、閉鎖しないための措置を講じている。タイソンは全米の140施設で来訪者を禁止、メンバーには体調不良の際は自宅待機するよう要請。工場に入る前の全員検温も2工場で実施しており、可能な限り早く全施設に拡大するという。
NCBA(全米肉牛生産者牛肉協会)は、牛肉のサプライチェーンが円滑に機能していることを確認するために、多くの連邦政府機関と毎日連絡を取り合っている。NCBAの政府担当バイスプレジデントであるイーサン・レーン氏は「最優先事項はサプライチェーンの維持だ。同時に市場動向と牛肉価格の監視も続けている。現時点ではシカゴ商品取引所から先物市場の変化は予測されておらず、先物市場を閉鎖することは賢明ではない」と話す。
また、NCBAは肉牛生産者や関連産業に対し、必要に応じて財政的支援や救済を提供するためのさまざまな方法についても議論している。家畜取引市場に関しては、集会の制限から免除されているため、運営は継続できるという。
2〜3月は年間で最も生産が落ち込む時期だが、と畜頭数は前週の63万5000頭から65万2000頭に上方修正され、パッカーは積極的な生産スケジュールを維持している。カナダとの国境閉鎖は、牛や牛肉の貿易には支障がない。
アナリストは、「現時点では需要の破壊の程度を示すことは不可能だ。カットアウトが先例のない高騰を見せたが、パイプラインが補充されれば失速する。消費者の可処分所得が圧迫されることから、他の食肉と牛肉の価格差が需要を左右する。買いだめは将来の需要の“借り”だ。近い将来に起こるビジネス活動の停滞により、第2四半期の米国および世界のGDPが大幅に低下し、恐らく前例のないコストが発生するだろう」と懸念している。
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