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TRADER'S Be & Po

vol.350 Mar 2.2020
 
米国食肉輸出連合会
NEWS CONTENTS
市況ニュース 新型コロナウイルス、牛肉の値下げ圧力に
生体豚・豚肉価格低迷―供給増と輸出障壁で
トピック 中国の外食業界、苦境続く―ラボバンク
ポーク関連ニュース 豚肉の国内供給は記録的、中国向けも過去最高―USDA
生産動向 フィードロット飼養頭数、過去最高に迫る
マーケット・データ 生体牛・豚価格、カットアウトバリュ、穀物先物価格
ファクト・シート ビーフ(2019年12月)米国の輸出、
と畜頭数・枝肉生産量、飼養動向、日本の輸入量
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市況ニュース

新型コロナウイルス、牛肉の値下げ圧力に

 
 

米国ならびに世界の食肉市況に対する中国の新型コロナウイルス危機の影響は、発生から3カ月目に入っても衰える気配を見せない。前代未聞の数千万人規模の隔離によって、中国の外食産業には多大な損失が生じている。

このため、食品の冷凍コンテナ数千本が主要港湾で荷下ろしされずに滞留し、結果的に中国の食肉輸入が減少している。米国産豚肉の中国向け輸出は、昨年末に大幅に増加したが、年明け以降は急激に減少している。

大手パッカーによる2019年10〜12月期の中国向け豚肉輸出量は前年同期比600%増だったが、現在は他の輸出業者と同様に「終わりの見えない中断と不確実性に直面している」という。

米国の中国への牛肉輸出量は非常に少ないものの、生体牛価格にも値下げ圧力が出始めている。生体牛の先物取引は過去3週間、投資ファンド筋が買い持ちの多くを決済したことで急落。2月契約分は、1月22日の終値が100ポンド当たり126.17ドルだったが、先週木曜日には119.45ドルまで下落した。

このため生体牛の現金取引価格も過去3週間にわたって続落している。1月最終週の生体牛平均価格は124.30ドル、2月第1週は122.04ドル、第2週は121.05ドル。同期間の枝肉価格は同198.83ドルから193.18ドルに下落した。

第2週のカットアウト価格の平均は215.78ドル(前年比0.3%安)。チョイスのカットアウト平均価格は前週の212.53ドル(同2.0%安)から3.67ドルから206.45ドルまで下落。セレクトは1.10ドル下落して203.79ドルとなった。

アナリストは、「生体牛市場を困惑させているのは、供給の問題ではなく、競合する他の食肉の供給増と値下がりによってビーフカットアウトの安値がかすんでいることだ」と分析する。

 

※2020年2月17日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

生体豚・豚肉価格低迷―供給増と輸出障壁で

 
 

中国が新型コロナウイルスの発生を発表して以降、生体牛および生体豚の先物価格は急落している。この感染症が最初に確認されたのは2019年末だが、中国当局が感染の規模と毒性を認めたのは1月下旬以降のこと。以来、すべての食肉に悪影響が起きているが、中国市場との関係性では豚肉への影響が最も大きい。

1月中旬、CME(シカゴ商品取引所)でのリーンホッグ先物取引価格は期近物が100ポンド当たり約68ドルだったが、先週金曜日には2月契約分が56ドル、18%安まで急落した。期先物(夏秋受渡し)への影響は比較的弱いものの、他の肥育豚取引価格も同様に下落している。

この下落は、国内市場への供給増と、中国の購買がいつ回復するかが不透明であることが影響している。中国の12月の米国産豚肉輸入量は、枝肉換算で2億2200万ポンド。12月の全米の豚肉生産量は24億4300万ポンドであり、生産量に占める中国向け輸出シェアは9%に達する。他の輸出国を含めた12月の輸出シェアは28%に相当する。

  生体豚(リーンホッグ)の先物価格の推移
 

輸出需要は部位によってばらつきがある。ロインやベリーと比べて、モモやカタの需要が強かった。12月のモモの生産量は史上最多だったにもかかわらず、取引価格は非常に堅調だった。

モモは1月上旬に100ポンド当たり80ドル台をつけていたが、現在は50ドル台半ばで取引されている。同様に、ポークバットやトリミングも急落している。関係者は中国向け輸出が早く回復することを願いつつ、豚肉の冷凍在庫を積み増しせざる得なくなっている。

ポークベリーは安値が続いている。12月末の冷凍在庫が前年比60%増と多かった上に、他の品目の在庫も増加。数週間前には125〜130ドルと予想されていたベリーのプライマル価格は、先週末時点で70ドル台前半まで下落した。

 

※2020年2月17日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

  ポークカットアウト価格の前年比(2月15日時点)
 
トピック

中国の外食業界、苦境続く―ラボバンク

 
 

新型コロナウイルス問題が中国の食肉市場に大打撃を与え、特に外食産業にとって苦しい状況が続いている。スターバックス、海底撈(火鍋チェーン)、マクドナルド、ヤム・チャイナ(ケンタッキーフライドチキン・ピザハット・タコベル等)などの多くの外食店が休業。春節期間中の売上は50〜80%減少した。

いまだに平常化の兆しがみえず、売上減少は長期化することが予想される。国家統計局(NBS)によると、2019年1〜2月の外食売上高は1036億ドル。減少率50〜80%で試算すると、1〜2月の売上減少額は518億〜829億ドルに達する。事態収拾が長引くと、2020年の外食業界の成長率は1%〜-4%に落ち込む可能性がある。

2020年第1四半期内の収束が不可能な場合、小規模な外食事業者が資金繰りに行き詰まり、市場から撤退する可能性がある。資金力に余力のある大手企業がより大きな市場シェアを獲得するチャンスになり、外食産業は将来的に合併が活発化するかもしれない。

ウイルス発生後に、清華大学と北京大学が中小企業995社を対象に行った共同調査によると、小規模事業者の85%が3カ月を超えるキャッシュフローのマイナスに耐えられないという。チェーン店を経営する大手は、その規模と強い財務状態から、店舗閉鎖中も労働力を維持することができ、通常営業を再開する際も迅速な対応が取りやすい。

ウイルスの拡散期間中は、食品と労働者の安全確保が大きな問題となる。KFC西安店の従業員が、終日勤務した後に新型コロナウイルス感染症と診断された。これを契機に、外食によるウイルス拡散、食品安全上の懸念が広がり、マクドナルドやヤム・チャイナなどは「非接触型」サービスに力を入れている。食品配達プラットフォームを利用した注文に加えて、スタッフと接することなく店内受取ができる購入方法も開始した。

◎Eコマースが外食部門の短期的課題解決を支援

こうした状況下で、アリババやJD.comのような中国のEコマース事業者は、その輸送能力、サプライチェーン、テクノロジーを駆使することで食品の供給を維持している。さらに外食業界を支援するために、以下のような新しい手段も講じている。

①「従業員シェア」スキーム:アリババが展開するスーパー、Freshippo(盒馬鮮生)と、配達プラットフォームであるele.meが、外食部門の労働者に一時的な職探しを提供する従業員シェアスキームを打ち出した。これにより、外食事業者にかかるコスト圧力が低減されるだけでなく、小売や配達における労働者不足も解決しやすくなる。

②配達スタッフへの補助金交付で輸送効率アップ:アリババはサプライチェーンと輸送サービスのために10億元の基金を設立。この基金はサービスを行う配達スタッフへの補償に使われる。この補助金プログラムの目的は配達員の意欲を高め、輸送効率をアップすること。

③「外食事業者が小売でブランド製品を販売」:JD.comは外食事業者に対し、調理済み食品やソースなどの自社ブランド製品の小売販売を支援するオンラインセールス・アライアンスプログラムを開始した。JD オンライン小売販売によると、春節期間中に冷凍食品やインスタント食品の需要は爆発的に増加、売上高は前年比790%増を記録した。火鍋チェーンの海底撈は店舗閉鎖に苦しむ一方、同オンラインプラットフォームで海底撈ソースなどの小売商品の売上を2倍に増加させた。小売商品の売れ行きは良好なことから、外食事業者はEコマース事業者と協同して、小売向けにより多くの調理済みパック商品を開発する計画を進めている。

中長期的に見れば、今回のウイルスの発生によって、Eコマースと配達の利用といった食品購入方法が再形成される可能性がある。さらに、手軽な調理方法が新たなライフスタイルとして定着し、調理済みや半調理済み食品などミールソリューションへの需要が高まるかもしれない。

 

※2020年2月26日 Foodmarket.com

 
ポーク関連ニュース

豚肉の国内供給は記録的、中国向けも過去最高―USDA

 
 

米国農務省(USDA)の最新の食肉需給予測によると、2020年の米国産豚肉輸出量は73億7500万ポンド(前年比16.7%増)に達する見込みだ。前年の生産量よりも10億ポンド超の増加予想だが、さらに重要な点は、輸出急増にもかかわらず、国内向け供給量は前年と同等、2年前と比較すると2.8%増と予測されていることだ。

2020年の豚肉生産量予測は288億8900万ポンド(同4.5%増)、前年に比べて12億4800万ポンド増加する。飼養頭数の増加と生体重量の増加を受けて、1月時点の予測より2億4000万ポンドの上方修正となった。

 

※2020年2月17日 Pork Merchandiser’s Profit Maximizer

  国民一人当たりの豚肉消費量(2000-2020)
 
生産動向

フィードロット飼養頭数、過去最高に迫る

 
 

フィードロットの飼養頭数は、この時期としては記録的に多い状態が続いている。近く公表される飼養動向調査では、2月1日時点の総飼養頭数は前年同月比3%近い増加となると予想される。

1月の導入頭数は同2〜3%増、出荷頭数は同1%程度の増加と予想される。アナリストは、「9月から続いてきた導入頭数の増加は1月も継続したようだ。その理由は、競り価格や生体牛価格の上昇と、肥育マージンが良好なことだ」と分析する。

しかし、新型コロナウイルス問題で先物価格が下落、小麦の飼い葉が減少していることで、今後数週間の導入は減少すると予想される。それでも冬季のフィードロット飼養頭数が2006年に次いで史上2番目に多いことから、春〜夏季へ向けての肥育牛供給は、季節的な増加および前年比増加傾向をたどる。

導入頭数は短期的に減少する見通しだが、春季から夏季初めの導入は再び増加し、枝肉重量の増加もあって牛肉生産量は前年を上回って推移するだろう。夏季後半から秋季の肥育牛供給は緩やかになる。

一方、豪州の12月期のフィードロット飼養頭数は124万頭、9月比10.7%増と過去最高に達した。これは収容能力の90%に相当する。2018年12月期は111万1000頭、85%だった。2019年に豪州のフィードロットは収容能力が前年比で19%増加したが、これは干ばつの影響を軽減することや、輸出市場で高品質な穀物肥育牛の需要が増加していることへの反応といえる。

2020年の豪州の肉牛産業予測によると、今年は史上稀に見る課題多き年であることから、肉牛群は1992年以降で最低水準まで落ち込むことが予想されている。2019年は干ばつの被害により、多くの主要生産地域で在庫の一掃が進んだ。また、大規模な森林火災、クイーンランド州北部で起きた深刻な洪水被害などが肉牛生産にも影響を与えており、牛群は6月までに前年比5.8%減、前々年比では12.4%減まで減少すると予想されている。

 

※2020年2月17日 CATTLE BUYERS WEEKLY

 
 

マーケット・データ

 
 
 
 
 
 
 

ビーフ・ファクト・シート