新型コロナウイルス問題が中国の食肉市場に大打撃を与え、特に外食産業にとって苦しい状況が続いている。スターバックス、海底撈(火鍋チェーン)、マクドナルド、ヤム・チャイナ(ケンタッキーフライドチキン・ピザハット・タコベル等)などの多くの外食店が休業。春節期間中の売上は50〜80%減少した。
いまだに平常化の兆しがみえず、売上減少は長期化することが予想される。国家統計局(NBS)によると、2019年1〜2月の外食売上高は1036億ドル。減少率50〜80%で試算すると、1〜2月の売上減少額は518億〜829億ドルに達する。事態収拾が長引くと、2020年の外食業界の成長率は1%〜-4%に落ち込む可能性がある。
2020年第1四半期内の収束が不可能な場合、小規模な外食事業者が資金繰りに行き詰まり、市場から撤退する可能性がある。資金力に余力のある大手企業がより大きな市場シェアを獲得するチャンスになり、外食産業は将来的に合併が活発化するかもしれない。
ウイルス発生後に、清華大学と北京大学が中小企業995社を対象に行った共同調査によると、小規模事業者の85%が3カ月を超えるキャッシュフローのマイナスに耐えられないという。チェーン店を経営する大手は、その規模と強い財務状態から、店舗閉鎖中も労働力を維持することができ、通常営業を再開する際も迅速な対応が取りやすい。
ウイルスの拡散期間中は、食品と労働者の安全確保が大きな問題となる。KFC西安店の従業員が、終日勤務した後に新型コロナウイルス感染症と診断された。これを契機に、外食によるウイルス拡散、食品安全上の懸念が広がり、マクドナルドやヤム・チャイナなどは「非接触型」サービスに力を入れている。食品配達プラットフォームを利用した注文に加えて、スタッフと接することなく店内受取ができる購入方法も開始した。
◎Eコマースが外食部門の短期的課題解決を支援
こうした状況下で、アリババやJD.comのような中国のEコマース事業者は、その輸送能力、サプライチェーン、テクノロジーを駆使することで食品の供給を維持している。さらに外食業界を支援するために、以下のような新しい手段も講じている。
①「従業員シェア」スキーム:アリババが展開するスーパー、Freshippo(盒馬鮮生)と、配達プラットフォームであるele.meが、外食部門の労働者に一時的な職探しを提供する従業員シェアスキームを打ち出した。これにより、外食事業者にかかるコスト圧力が低減されるだけでなく、小売や配達における労働者不足も解決しやすくなる。
②配達スタッフへの補助金交付で輸送効率アップ:アリババはサプライチェーンと輸送サービスのために10億元の基金を設立。この基金はサービスを行う配達スタッフへの補償に使われる。この補助金プログラムの目的は配達員の意欲を高め、輸送効率をアップすること。
③「外食事業者が小売でブランド製品を販売」:JD.comは外食事業者に対し、調理済み食品やソースなどの自社ブランド製品の小売販売を支援するオンラインセールス・アライアンスプログラムを開始した。JD オンライン小売販売によると、春節期間中に冷凍食品やインスタント食品の需要は爆発的に増加、売上高は前年比790%増を記録した。火鍋チェーンの海底撈は店舗閉鎖に苦しむ一方、同オンラインプラットフォームで海底撈ソースなどの小売商品の売上を2倍に増加させた。小売商品の売れ行きは良好なことから、外食事業者はEコマース事業者と協同して、小売向けにより多くの調理済みパック商品を開発する計画を進めている。
中長期的に見れば、今回のウイルスの発生によって、Eコマースと配達の利用といった食品購入方法が再形成される可能性がある。さらに、手軽な調理方法が新たなライフスタイルとして定着し、調理済みや半調理済み食品などミールソリューションへの需要が高まるかもしれない。
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