2020年の牛肉産業界は、多くの分野で好調な一年になるだろう。玉石混交だった昨年は、繁殖農家の収益と肥育業者のマージンがほぼ1年を通して圧縮され、肉用牛の総飼養頭数は2013年以降で初めて減少することになった。
一方でビーフパッカーは、2年連続で予想をはるかに上回る記録的な営業マージンに恵まれた。だが、2020年は昨年のように肥育業者よりも有利な状態は見込めず、高いマージンは維持できないだろう。
今年を楽観視する理由は、「中国」と「日本」の2つに集約される。中国はアフリカ豚コレラ(ASF)の影響による食肉不足を補おうと懸命になっていることから、米国産豚肉および牛肉の世界的な需要は一層拡大するだろう。日本では1月1日に米国産牛肉・豚肉の輸入関税が競合国と同水準まで引き下げられたため、今年の対日輸出は大幅に増加する見込みだ。
主要3大食肉の今年の国内需要を2019年と同レベルと仮定すると、今年の食肉・家きん類の総生産量の約2%増は、輸出の増加で相殺されそうだ。USDA(米農務省)は2020年の食肉総生産量を、過去最大の1081億4400万ポンド(前年比2.7%増)と予想している。
ブロイラーが最も多く452億5000万ポンド(前年比3.2%増)、次いで豚肉286億8000万ポンド(同3.8%増)、牛肉275億1500万ドル(同1.4%増)の予想。牛肉にとっての一つの懸念は、格段に安い豚肉と鶏肉の供給増で国内販売が減少する可能性だ。
◎食肉輸出は量・額とも増加見込み
USDAの2020年の食肉輸出予測は、量・金額とも2019年より増加する見込み。中国からの需要増で、豚肉輸出量は71億ポンド(2019年62億9600万ポンド)、輸出額は推定67億ドル(同55億1800万ドル)の予想。
ブロイラーの予測は74億2500万ポンド、52億ドル。牛肉は33億500万ポンド(同31億400万ポンド)で3番目だが、輸出額は最も多い76億ドル(同72億8100万ドル)になると予測されている。牛・豚肉のバラエティーミートの予測は17億ドル(同15億6200万ドル)。
これらの予想は、今年の肥育牛全体の価格を下支えすることに繋がる。2019年の生体牛の年間平均価格は100ポンド当り118.18ドル(同117.12ドル)だったが、今年の予想平均価格は117ドル。肥育素牛(去勢)はオクラホマシティベースで143ドル。生産者にとっては、安定した価格で意外性の少ない好調な一年となることが期待できる。
国内外の牛肉需要が高い水準で維持できれば、パッカーマージンも2019年の記録的実績に迫ることができるかもしれない。最大手のタイソンフーズは2019会計年度(9月28日まで)の牛肉部門の営業利益が史上最高の11億700万ドルに達する見込みだ。これを達成すれば、同分野の営業マージンは2018年の6.7%に対して7.0%ということになる。2020年度、タイソンはマージンを6.5〜7.5%と見込んでいることから、さらに記録的な年になる可能性がある。
|