米中貿易交渉の第一段階の合意署名により、米国の農産物の中国向け輸出は大幅に増加すると予想される。食肉輸出に関しては明確になっていない点もあるが、中国向け豚肉輸出は、ここ数カ月で大幅に増加。まだ予約後の未出荷玉も大量にある。
USDAの週次輸出報告書では、12月26日時点での中国への豚肉輸出は31万8000トンまたは7億2000万ポンド。過去4週間の輸出量は週当たり平均で約1万4000トン。輸出のペースがさらに上がれば、米国内の在庫評価は急速に変化する可能性がある。
中国が米国産の購入拡大にまだ余地を残している理由は、いくつかある。1つは中国の2019年の豚肉輸入の大部分は、米国以外の輸出国に依存していたこと。また、第一段階の合意はあくまでも政治的な決定で、最終的な合意ではないということだ。米中交渉はマラソン交渉であり、中国の交渉者は米国からの購入を増やすといえることが重要なカードの一つだと考えているようだ。
一部の大規模なパッカーは、中国向け製品がラクトパミンフリーであることを確認するための適切なシステムを設定していなかった。1月1日からは、ほとんどの主要パッカーが生産者にラクトパミンの給与を止めるように要求している。推測では、1月1日以降の豚肉供給の75%以上がラクトパミンフリーになり、大規模工場も中国からの注文をより受けやすくなる。
現時点では、中国が豚肉関税を現行の12%から8%に一時的に引き下げるとしているが、まだ不明な点がある。米国の生体豚価格はEUに比べて劇的に低くなっているが、関税差を考慮すると、その価格差が相殺されてしまう。
中国の11月までの豚肉輸入は173万3000トン。このうちスペインからが32万7724トンで全体の19%を占める。次いでドイツ28万4173トン、シェア16%。デンマーク13万6089トン・同8%、フランス7万1333トン・同4%。オランダ(13万5492トン)を加えた5カ国で約55%を占める。
図表のとおり、EU4カ国の生体豚価格は、最も安いスペインで91.4ドル、ドイツは105.1ドルまで上昇している。これに対して、米国の価格(CME現金取引指標)は59ドルに留まっている。重要なのは、米国産豚肉に対する報復関税の撤廃と、中国の豚肉需要が米国産にシフトすることが明確になることだ。
中国の11月の豚肉輸入は22万9707トンで、史上最高記録を更新した。米国産は3万1771トン、全体の14%だった。2019年の中国の米国産豚肉輸入量(中国側のデータ)は約23万2000トンになる。2020年の中国の豚肉輸入は400万トンを上回る可能性があると推測される。米国のシェアがその20%(2019年は11%)を占めれば、米国の豚肉供給増を吸収して余りあるものになるだろう。
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