米国食肉輸出連合会(USMEF)は、2020年の米国の牛肉輸出は前年比5%増、豚肉は同15%増との見通しを示した。牛肉の輸出増加は日本との新しい貿易協定が後押しとなり、韓国でもチルドの成長が持続。豚肉は、食肉の供給不足に直面している中国向けが記録的な数量になる可能性が高いという。
この見通しは11月5日、ダン・ハルストロム会長兼CEO、ジョエル・ハガード副会長(アジアパシフィック担当)や各国の上級スタッフが出席したメディア・コールで語られた。USMEFが7日に発表した9月ならびに第3四半期までの輸出動向と主要輸出先の概観は以下のとおり。
9月の牛肉輸出量は10万9799トンとほぼ前年同月並みだが、第3四半期までの累計輸出量は99万1325トン(前年同期比2%減)。輸出額の1頭当たり換算は318.54ドル(同5%減)。1〜9月平均は3%減の310.77ドル。生産量に占める輸出割合は14.6%、正肉単体では11.9%。1〜9月累計の割合は14.3%、正肉11.6%。
9月の豚肉輸出量は20万2248トン(同13%増)。1〜9月累計は190万トン(同5%増)。輸出額の1頭当たり換算は49.98ドル(同3%増)、1〜9月51.50ドル(同2%減)。輸出割合は25.1%、正肉単体は21.7%。1〜9月は26.3%、同22.8%。
【日本】
9月の日本向け輸出は2万4041トン(同14%減)。1〜9月累計は24万1739トン(同4%減)。この減少は正肉19万2676トン(同10%減)によるもので、牛バラエティーミートは4万9063トン(同26%増)と引き続き増加している。
日本市場では、競合国との関税率ギャップが輸出数量に反映している。米国産牛肉の関税率は38.5%で、他の競合国よりも12.8%高い。ハルストロム会長は、新たに合意・署名された日米貿易協定の内容に言及。新協定の実施には、日本の議会承認が必要なため、2020年1月1日になるとの見通しを示した上で、豪州の牛群が減少する中、新協定の下で競合他国と公平な条件になれば、米国産牛肉には新たな成長機会があることを強調した。
【韓国】
9月の輸出量は2万1267トン(同11%増)、1月〜9月累計は19万5557(同8%増)。韓国の税関データ(1〜10月)における米国産牛肉のシェアは56%を占め、昨年の53%から上昇している。米国産牛肉の関税率は18.7%で他の競合国よりも5.3%低い。関税率は2026年までにゼロになる見通し。
韓国の小売市場では、米国産のチルドビーフの支持が高まっている。米国産の市場シェアは62%で豪州の38%を引き離している。コンビニで販売される家庭料理のキット商品で、米国産牛肉にはユニークな機会があるという。
【メキシコ】
9月の牛肉輸出量は1万9464トン、前年同月をわずかに上回った。うち牛バラエティーミートは9018トン(同26%増)で根強い需要がある。1〜9月累計の輸出量は17万5992トン(同1%減)。豚肉は同5万6467トン(同1%減)、同52万9776トン(同10%減)。
メキシコは5月下旬に、米国産豚肉に対する20%の報復関税を撤廃。以来、輸出は大幅に回復しているが、まだ1年近く続いた報復関税問題の影響が残っている。米国・メキシコ・カナダ協定の批准が市場心理の確実な助けになる。
【中国・香港】
9月の豚肉輸出量は5万1192トン(同158%増)、1〜9月は40万7514トン(同47%増)。ASFの影響で国内豚の供給がひっ迫し、豚肉価格はこの1年で80%以上も値上がりした。中国の1〜9月の総食肉輸入量は430万トン(同38%増)。米国産豚肉の関税率は72%で、米国産のシェアは13%に留まっている。
ハガード副会長は、報復関税が撤廃されれば劇的に成長する可能性があると強調し、米中貿易交渉の第1段階の合意を切望するとしたが、一方で中国の食肉不足に対応するためには、世界的な供給チェーンに大きな負担がかかることを解説した。
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