アフリカ豚コレラ(ASF)の影響が、中国をはじめとするアジア地域で広がり、世界各地の食肉価格の上昇に繋がっている。オクラホマ州立大学のエコノミスト、デレル・ピール氏の新しい報告では、中国は国内豚の損失により、2019年の豚肉輸入量は66.6%増加、2020年にはさらに34.6%増加すると予測している。
2018年の中国の豚肉生産量は、世界全体の47.8%を占める。中国のASFによる2018年以降の豚の損失見積もりは、予測機関やアナリストによって幅があるが、多くの予測は豚の半分以上が損失することを見込んでいる。
ピール氏は、中国の豚肉生産量は2019年に14.0%減少し、2020年にはさらに25.3%減少すると予測している。これは、2018年から2020年にかけて世界の豚肉生産量が15.7%減少することを意味するという。
中国の2018年の食肉消費に占める豚肉の割合は74%。ASFの影響で中国の食肉供給が不足し、これを緩和するための動きが世界中の食肉に影響を及ぼしている。中国の食肉総消費量は、2018年から2020年にかけて14.9%減少し、豚肉の割合は59.8%に低下すると予測される。
世界の豚肉輸入量は、2019年に13.5%増、2020年にはさらに11.0%増が見込まれており、世界の豚肉輸入量における中国のシェアは2018年の19.7%から2020年には35.1%までに拡大する。世界の豚肉輸出量は、2019年に11.3%増、2020年にはさらに10.4%の成長が見込まれる。
2020年の中国の牛肉輸入量は290万トンに達する見込み。中国では豚肉不足を相殺するために、牛肉や家きん肉の摂取量が増える可能性がある。牛肉の追加需要の多くは、価格が安い南米産に依存する可能性が高い。
MLA(豪州家畜生産者事業団)は、主要な3つのポイントを挙げている。①牛肉の国際需要は世界的な供給を上回り、アジアからの強い需要が輸入牛肉価格の上昇を促進する②2020年の世界の牛肉生産量はわずかに増加する見込みで、南米と米国がこの成長をけん引する③米国の牛群拡大はピークを迎え、収縮期に入った。短期的にはこれが米国の輸出を支えることに繋がる。
2020年の牛肉輸出量は、堅調な国際需要と輸出促進によって1150万トン(前年比4%増)になる見込み。豚肉生産量の減少が、アジア全域の牛肉需要を増加させる要因となる。
2019年の牛肉供給量は0.9%増とわずかな伸びにとどまる見込みで、供給不足によって輸入価格は維持または上昇する可能性が高い。世界的に生産が拡大するのはブラジル、米国、インド、アルゼンチン。これらの増加と中国、EU、豪州の生産減が相殺されることになる。
米国の牛群は、キャトルサイクルのピークから減少局面の初期段階に入った。と畜頭数の増加によって牛肉生産量は増加しているが、需要の強さから、より高い価格帯へ向かう可能性がある。2019年の米国の牛肉輸出量は150万トン(同6%増)、ブラジルは260万トン(同15.6%増)に達する見込み。
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