米国の食肉価格は、主要3畜種がすべて過去最高の生産量にもかかわらず、全般的に前年よりも高い水準で推移している。これは、国内および輸出の両方で強い需要があることの証拠だ。
米国と中国の貿易交渉が10月11日に部分的な合意をみたことで、中国市場への輸出が増加する可能性がでてきた。さらに、米国の食肉輸出にとって最も価値の高い市場である日本も、米国製品の関税を他の国と同等の条件にする貿易協定に合意した。
2つの合意は、2020年の食肉価格を強気にさせる可能性がある。すでに来年の先物価格には強気ムードが反映されており、市場関係者は、11月の米中首脳会談での中国への大量輸出の合意と包括的な貿易協定の可否を注視している。
先週の牛肉・豚肉・鶏肉の総生産量は20億1000万ポンドで、この5週間平均は20億2900万ポンド(前年同期比4.5%増)。牛肉生産量は5億2990万ポンドで、前年比1.2%減少だが、カットアウト価格は6%高い。豚肉生産量は5億7330万ポンド、前年比9.2%増と記録上で2番目に高く、カットアウト価格は2.6%安。
ブロイラー生産量は推定8億3960万ポンド(同3.4%増)。生産の急増にもかかわらず、食肉全体の価格が安定していることは、国内需要が引き続き良好な状態にあることを示し、輸出の増加は、来年の食肉価格のインフレに繋がる可能性があることを示している。
現状における牛肉・豚肉の2020年の輸出見通しは以下のとおり。
【牛肉】
2020年の牛肉輸出量は33億5500万ポンド(前年比7%増)、輸入量は28億2500万ポンド(同2.8%減)の予測。豪州とNZの牛肉が中国に向けられており、2020年も同様の傾向が予想される。日本ではカナダ産に奪われたシェアを取り戻しつつあり、日米間の新協定が発効されれば、関税率はカナダ産と同じになる。
これらによって、2020年の米国の純牛肉貿易は530百万ポンドの黒字となり、2011年以来で最大の黒字幅となる見通し。貿易量の黒字は、国内流通量の減少を意味する。
現在の予測では、2020年の牛肉生産量は1億5700万ポンド。予想される貿易黒字と在庫調整増を考慮すると、2020年の国内供給量は1.2%減少すると予想される。国民一人当たりでは1.8%減と予想され、牛肉価格の上昇が予測される。
【豚肉】
2020年の豚肉輸出の予測は引き続き強気。ASFによる中国と東南アジアの供給不足は回復に長い時間を要する。ワクチンがない上、この地域には生産を迅速に立ち上げるためのシステムがない。繁殖豚をすべて更新して新しいプロセスを開始しても、結果が現れるには2021年初頭までかかる。
2020年の豚肉輸出量予測は74億4300万ポンド(同16.2%増)、前年より10億ポンド以上増加する。輸入量は、ポーランドからの輸入が高価格とASFの影響で遅れ、カナダはアジアへの製品の出荷を増やすため、さらに減少する。一人当たりの豚肉消費量は1.5%減の予想。
生産量・供給量は依然として大きいが、国内流通量が減少する可能性がある。小売業者と処理業者が供給を確保しようとするため、一時的な供給タイトあるいはそれが繰り返される可能性があり、注意が必要だ。
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