世界の消費者は、調理時間が短縮できる調理済み食品に対する需要を強めて、意外な場所へと向かっている―近隣のコンビニエンスストアだ(以下CVS)。CVSは、主食分野でも幅広い選択肢を取り揃えて消費者を取り込んでおり、また米国産食肉に対する需要も創出している。
この急成長分野の競争で一歩先を行くために、USMEFはいくつかの海外市場で、コンビニ食の主役となる米国産牛肉・豚肉、食肉加工品の拡販活動を行っている。ダン・ハルストロム会長兼CEOは、「USMEFはこの市場の可能性と需要の高さをしっかりと認識している。CVSが世界の様々な地域に浸透するにつれて、ミートスナックや調理済み食品に対する需要がいっそう高まっている。食肉のトレンドは高品質志向へと向かっており、これは米国産牛肉・豚肉にとって間違いなく有利に働く」という。
Euromonitor の2019年調査によると、世界のCVSでは、フードサービス製品への一人当たり支出額が2013〜2018年で14%増加しており、2023年までにさらに11%増加すると予測されている。これをけん引する市場の1つは韓国で、2013〜2018年の支出額は142%と爆発的に増加し、2023年までにさらに47%増加するとみられている。その他の急成長市場は日本、台湾、ASEAN諸国、メキシコだ。
アメリカの2018年のCVSにおけるフードサービス商品への平均支出額は44.50ドルで、世界で4番目に多い。1位は日本で平均240.80ドル、次いで台湾80.70ドル、ノルウェー72ドル。韓国は39.70ドルで5位にとどまるが、2023年までに58.40ドルに増加し、米国の54.60ドルを追い抜くことが予想される。
ハルストロム氏は「CVS市場には、米国産牛肉・豚肉の膨大な可能性があることがはっきりしている。だが競争も熾烈であり、米国産食肉製品の利点を生かす方法に焦点を当てた取り組みが必要だ。各国のUSMEFのスタッフは、調理済み製品における米国産牛肉・豚肉の品質と優位性を業界にアピールしており、米国産牛肉・豚肉は世界のCVS商品においてますます中心的存在となりつつある」という。以下、CVSの主要な市場トレンドとUSMEFの拡販活動をまとめる。
《日本》
一人当たりの支出額で世界第1位の日本だが、依然として拡大の余地がある。2013〜2018年の支出額は16%増、2023年までにさらに7%増加する見込みだ。包装済み食品やインスタント食品の類ではパイオニア的存在である日本のCVSは、スーパーとレストランが組み合わさったものに近い。日本には2万店舗以上のセブンイレブンがあり、大手チェーンのファミリーマートやローソンと競合している。
牛肉、豚肉のいずれも、弁当や牛丼、サンドイッチから麺類にいたるまで、日本のコンビニ商品ではよく使用されている。USMEFは、CVSに商品提供する業者に対して、米国産牛肉・豚肉の使用を長期にわたってプロモーションしてきた。これは米国の食肉業界が特定のカットや加工製品を提供する際の効率改善に役立っている。
USMEFジャパン・ディレクターの山庄司岳道は、ソーシャルメディアを使用することによって、CVSでの米国産牛肉・豚肉の存在を広めることが容易になったと話す。USMEFはチェーンと提携し、ソーシャルメディアプラットフォームを通じて情報発信することが多い。消費者が高い信頼を寄せているフードブロガーは、CVSで販売されている米国産牛肉・豚肉商品を紹介する上で重要な役割を果たしている。
《韓国》
2007年当初、韓国にはCVSが約1万店舗しかなかったが、その数は10年間で3倍に増加した。韓国ディレクターのジヘイ・ヤンは、「単身世帯の増加に伴うライフスタイルの変化により、CVSは急速に拡大し、2018年末には全国で4万店舗を超えるまでになった」という。また韓国のHMR市場は、2011〜2018年で2倍以上に拡大。スーパーや小売チェーン店のミールキット商品が、CVSでも提供されて人気を集めているという。
「ミールキットの人気が食肉製品の需要を増加させており、その主要原料としての米国産豚肉・牛肉も注目されている。韓国では調理不要のインスタント食品が求められており、新たなアイデアや新製品の開発に取り組んでいる」
この戦略の最近の一例として、USMEFは、すぐに食べられるコーンドッグのプロモーションを開始した。「以前ならこうした商品は冷凍食品コーナーにあったが、店舗と協力して、温かいまま提供できる商品を増やしたことで、消費者は購入してすぐに商品を食べられるようになった」
もう一つ力を入れているのは、ミレニアル世代のプロテイン・スナック・ブームだ。「韓国のコンビニは、ソーセージや加工食肉を使用したスナックを積極的に販売している。国産豚肉と米国産や欧州産をミックスしたものが原材料になることが多いが、USMEFは米国産のプレミアム・ブランドを立ち上げて、本物志向の消費者に受け入れられている」。牛肉では、国内第2位の大手チェーン及び米国産食肉のサプライヤーと協力して、サイコロステーキのプロモーションを開始。この「Cube Steak Lunch Box」は、1万2500店舗を展開するGS25で販売されている。
《台湾》
台湾には約1万1千店舗のコンビニがあり、2222人に1店舗の割合となっている。台湾の経済部によると、これは世界で2番目に高い密度だという。セブンイレブン(2018年中旬時点で5281店舗)、ファミリーマートと並ぶ大手コンビニチェーンは、Hi-LifeとO.K. Martだ。台湾のセブンイレブンは、消費者に「食品天国」と評されている。
USMEF台湾のマーケティングマネージャー、アレックス・サンは「CVSでは、ポークチョップライスやビーフヌードルスープといった、すぐに食べられる食品を購入できる。また、冷凍庫から出した商品を店内で温めることもできる。台湾の消費者は、素早く食べられてかつ新鮮なものを求めており、CVSでは様々な味付けのビーフスティックやビーフジャーキーなどのプロテイン・スナックの品揃えが強化されている」と述べ、CVSチェーンと共同して、米国産牛肉・豚肉の戦略的なプロモーション活動を行っている。
《中国》
最近のUSDAレポートによると、中国のCVSは10万店舗にのぼり、「中国で最も急速に発展している小売モデルの一つであり、2017年の売上は280億ドルを超えている」という。大手チェーンは美宜佳、ファミリーマート、セブンイレブン、ローソン。
これまでは加工食品の安さに焦点が当てられていたが、いくつかのチェーンが自社のプレミアム食品や輸入食品の品揃えを増やしている。一人当たり支出額は、2013〜2018年で50%増加、2023年までにさらに67%増加すると予想される。
USMEF中国のマーケティングディレクター、ミン・リャンは、「中国の多くの地域では、消費者は今も従来の市場で食肉などの食品を購入している。都市部になるほど、近代的なスーパーや肉屋が一般的になるが、新たな世代の台頭とともに小売のトレンドは変化しつつある」という。
ファミリーマートによると、中国のCVS市場の主な顧客は1980〜1990年代生まれの若年層で、全体の88.4%を占める。セブンイレブンによると、20〜40代の消費者は同社の顧客基盤の88%にのぼる。
USMEFの戦略は、米国産牛肉・豚肉に対する認知度を高め、中国の新たな世代の消費者が買い物の選択肢を広げる際に、高品質の米国産製品を見分けられるようにすることだ。
《アセアン》
利便性を求める消費者の動きは、東南アジアでも広がっている。東南アジア全域でCVSは約7万3000店舗ある。Nielsenの最近のレポートによると、CVSは前年比で10%増加。さらに、この地域のミニマーケット店の数は現在5万店舗にのぼり、毎年5%近く増加している。
マレーシアの1人当たり支出額は2013〜2018年で87%増加し、今後5年間でさらに139%増加すると予測される。フィリピンでは過去5年間で93%の増加が見られ、2023年までにさらに81%の成長が見込まれている。
アセアン地域のディレクター、サブリナ・インは、「特に若い世代の多忙な消費者が、自宅に近くてアクセスしやすい食品店を探していることから、CVSやミニマーケットの数が増加している。それぞれの国に独自のニーズがあり、利便性の要素は地域全体にそれぞれ異なる形で拡大している。USMEFの目標は、レストランやスーパーマーケットと同様に、こうした小売業者が競合他社と差別化しやすい米国製品を紹介してプロモーションを行うことだ」としている。
|