中国の食肉不足が熾烈な争奪戦をもたらすとの予想から、春季の先物市場は強気一色となり、その値上がりは①パッカー・ユーザーの販売価格を押し上げ、②生産者は生産効率の最大化を試み、③業界全体での在庫蓄積に繋がった。
これら全ては、夏季の需要が爆発的に増加するとの仮定が基になっていたが、現在の状況はまるで異なっている。結果的に生体豚、生体牛の双方で大幅な価格修正が起こっている。特に生体豚は困難な状況だ。(グラフ参照)
6月現在、週間の豚肉供給量は1カ月前の予想よりも大幅に多い。グラフは過去4週間の移動平均を示しているが、先週の豚肉生産量は前年比16.4%増、過去2週間はそれぞれ同10.8%増と8.4%増。つまり過去3週間の週間生産量は、前年比で平均5500万ポンド多いことになる。
輸出は昨年より好調だが、この生産増加分を吸収する市場はどこにもない。USDAの週間豚肉輸出データによると、現在の週間冷蔵・冷凍豚肉輸出量は前年比でおよそ700万ポンド増。これは過去数週間の供給増加分の12%に相当するが、先週のパッカーの生産増加分7400万ポンドに占める割合はさらに少ない。
他の食肉の生産量増加率は、豚肉に比べると小幅だ。先週の牛肉生産量は5億2230万ポンド(前年比1.2%減)。過去4週間でも前年を若干下回っている。先週のブロイラー生産量は推定7億9700万ポンド(同2.1%増)。
市場が今後どう展開するのかは、今秋の中国および他市場との貿易見通しにかかっている。中国の相次ぐ注文キャンセルにより、先物市場は弱気な反応を示した。しかし中国は未だ3億6000万ポンドの豚肉を予約しており、8・9月にはさらに注文の増加が予想されている。
とはいえ、夏期の先物市場からはASF要因の値上がり分が全て消え、秋期市況からも半分が消えた。短期的にはスポット市場の現金取引価格が重要な要素となるだろう。生体豚は現在、大幅な価格修正の真っただ中にいる。5月の出荷の遅れと涼しい気候により、この時期にしては枝肉重量が大幅に増加している。
6月の大幅な出荷増の結果、週間生産量も大幅に増加した。しかし、と畜頭数の6〜8%増が継続するとは考えられない。生産者が出荷ペースを基に戻せば、7・8月の生産量は鈍化する。夏の暑さも迫っており、供給量が変化する可能性を考えるのは今だ。現在の市場価格が最も魅力的な水準になるかも知れない。
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