米国農務省(USDA)は10月18日、ポーランド産豚肉の全面的な輸入停止を発表した。ポーランドの一処理施設が、アフリカ豚コレラ(ASF)の侵入防止のために規定されている厳格な条件を守らずに製品を出荷していたことが明らかになったためだ。同国からの輸入条件の全面的な見直しが行われ、10月25日に輸入停止措置が解除され、出荷資格のある地域からの米国への輸出再開が許可された。ポーランドからはかなりの量のベリーが輸入されているため、ベリーの価格動向には注視が必要だろう。
そもそも、米国はなぜASF発生国から豚肉の輸入を許可していたのか。その答えは、米国・欧州間で同意した地域主義の概念に関係している。この概念は長い目で見ると、米国の生産者を救うことを理解しておくことも重要だ。もし、米国のどこかでこの疾病が見つかり、その抑制が論証できたとすれば、輸出相手国に清浄地域からの輸入継続を要請できる。
政治的境界線に基づいて輸入停止を主張する場合、ニュージャージー州の小規模農家で1件でも発生が確認されれば、何千マイルも離れたノースカロライナやアイオワ、オクラホマの豚肉が世界市場から締め出されることになる。米国産豚肉の2割超が輸出されている今、国内のいずれかでASFの発生が確認されても、輸出市場の開放を維持することが不可欠だ。
地域化の原則により、少なくとも同意国との間で、それを果たすことが可能になる。
この点でアジアでは、未だ多くの国が政治的境界線に基づいて禁輸を施行している。疾病の拡大を食い止めるために規定している条件に焦点を当てるべきだというのが米国の立場だ。これは政治的境界線とはほとんど関係せず、ASFが確認された地域との境界線との関係が大事だ。地域化の原則は、それぞれの国が自国の食品安全制度の統合を保証するべく実施している他の制度やプロセスと連携して推し進める必要がある。徹底した管理の下でなくては、地域化の採用はほぼ意味がない。中国の状況が良い例だ。
中国当局は疾病拡大の防止のため管理を行っているが、感染は山火事のごとく拡大を続けており、現在も中国南西部で多数報告されている。さらに混乱を招いているのは、中国からの旅行客が他国へ持ち込んだ豚肉からASFが検出されたことだ。中国当局の行う管理は、この恐ろしい疾病の拡大を阻止するには不十分である。食肉製品から検出されたということは、ASFが非常に広い範囲まで拡大していることを示している。
ポーランドの場合、実施されている食品安全制度は中国とは大きく異なっており、欧州は継続して拡大防止措置を強化している。しかしながら、米国の国境でASF感染国の消費者から持ち込まれる豚肉製品を注意深く阻止することは不可欠だ。米国でASFが発見されれば、世界の輸出需要に依存する豚肉業界にとって破壊的な影響を及ぼす可能性があり、この疾病の侵入防止は優先事項として取り組まなければならない。
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