英国の動植物衛生庁(APHA)は、中国で発生したアフリカ豚コレラ(以下ASF)について分析したレポートを公表。英国への侵入リスクは2017年8月に設定した「低」で変わらないものの、生産者や旅行者に注意を喚起している。
同レポートによると、8月3日、中国北東部・遼寧地方でASFが発生したことを中国当局が発表。8月1日に47頭の豚に臨床兆候が確認されたが、農場の飼養頭数は明確になっていない。政府以外のレポートでは300〜8000頭と伝えられる。中国でASFが確認されたのは初めてで、感染あるいは感染が疑われる豚は殺処分の対策が取られている。
中国との国境から約1000km離れたロシア中部でも少数のASFが流行。 東ヨーロッパやロシア西部とは異なり、ロシア中部のASFの関する情報は不足している。FAOは、中国北東部から侵入した可能性が最も高いと結論付けた専門家の意見をもとにリスクアセスメントを実施しているが、今回は地理的に見て新たな広がりを表している。感染源は現在のところ不明。これが初発であるかどうかも不明である。
中国は発生地域で警戒監視を実施しているが、大型の商業用養豚場が中心で、小規模な農場や自営農家には及んでいない。小規模の農家は、ウイルスの侵入を防ぐ強力なバイオセキュリティーや高度な食品安全基準を実施する可能性は低い。野生のイノシシ群が多いことから、ウイルスが持続、拡大しやすいと考えられる。
ユーラシアイノシシは東南アジアに広く生息している。感染したイノシシの移動が感染源であれば、野生のイノシシだけで朝鮮半島をはじめ東南アジアに拡大する可能性が高い。中国や東南アジアに生息する野生イノシシには特定のダニ種がいることもあり、中国東部でのASFが東南アジアに侵入する可能性があり、この地域のブタ群にとっては新たな脅威である。
日本は空港や港湾で通常よりも多くの探知犬を使用し、感染が確認された場所から近い瀋陽と大連からの入国者に対して検疫を強化し、旅行者に中国のASFの発生を警告している。
中国の豚肉はEUへの輸出を承認されていない。一部の動物用飼料製品が中国から輸入されており、他の可能性を含めて経路の調査が行われている。中国からの英国への侵入リスクは無視できるが、ロシア西部、ベラルーシ、モルドバ、ウクライナで発生したASFと同様に、乗客の荷物に入った豚肉製品が持ち込まれ、野生のイノシシや豚がいる地域で廃棄される可能性が懸念される。個人が豚肉製品を英国に持ち込むことを阻止するための広報キャンペーンが実施されている。
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