米国が通商法301条に基づき、中国の知的財産侵害への制裁としての関税措置を発表したことに対抗して、中国が報復関税(関税25%引き上げ)措置を講じた。米国の食肉産業界からは輸出への影響を懸念するコメントが相次いでいる。
中国政府は4月2日から、米国産の豚肉やワインなど計128品目に関税25%の上乗せを実施。4日には牛肉や大豆を含む106品目を対象リストに追加することを発表した(開始日は未発表)。今回の措置による豚肉の関税率は下表のとおり。牛肉の対象品目はチルド・フローズンのボンインとボンレス、ハーフヘッド、骨など。
こうした動きに対して、USMEF(米国食肉輸出連合会)のダン・ハルストロム会長は2日、要旨、次のようなコメントを発表した。
「米国産豚肉、特にバラエティーミートにとって中国は重要な市場だ。2017年の中国への豚肉全体の輸出は30万9284トン(6億6310万ドル)に達し、輸出量では3番目、輸出額では4番目に大きな市場だ。バラエティーミート単体では18万1351トン・4億2520万ドルと最大の輸出先で、米国のポークバラエティーミート輸出の3分の1以上を占めている。
バラエティーミートの輸出は生体豚枝肉価格に非常に大きな影響を与えており、中国への輸出分だけでも、生体豚一頭当たり換算で3.50ドル以上に相当する。中国は価格変動に敏感な市場であるため、関税率の上昇が米国産豚肉の競争力に影響を及ぼすことが懸念される」
また牛肉が対象リストに追加されたことに関しては、「米国産牛肉に対する中国の関心は着実に高まり、輸出再開後9カ月で顧客基盤が拡大してきた。しかし追加の輸入関税が課せられれば、これまでの建設的なビジネス関係とさらなる成長の機会が危険にさらされるだろう。中国が米国産牛肉にさらなる障害をもたらさずに、この問題を解決できることを期待している」と語った。
USMEFによると、2017年後半の中国への牛肉輸出は3020トン、3100万ドル。2018年1月は月間最高の819トン・750万ドルに達している。
NPPC(全米豚肉生産者協議会)は、中国が米国産豚肉に課す関税は米国の農業に重大な悪影響を及ぼす可能性があると警告した。ジム・ハイマーレル会長は「多くの豚肉を中国に輸出しているため、関税引き上げは豚肉生産者に損害を与え、農業経済を悪化させるだろう。対抗的な貿易戦争では、少なくとも農業従事者と消費者は誰一人得をしない。貿易は、すべての国が国際ルールに従って公正に取引することが大切であり、すべての国が、企業、農家、消費者に害を及ぼさない形で貿易紛争を解決することを期待する」とコメント。
NCBA(全米牛肉生産者牛肉協会)のケント・バカス国際貿易・市場アクセス担当ディレクターは「米国産牛肉が報復の標的に挙げられたことは不安だが、残念ながら、これは貿易戦争の必然的な結果であり驚くことではない。政府間の戦いで、被害を受けるのは米国の牛肉生産者と中国の消費者だろう。政府がこの問題を5月末までに解決することを期待するが、無限の報復はどちらにとっても良い道ではない」と述べた。
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