ウォルマートは、販売する牛肉のグレードをより高級な「アンガスビーフ」に切り替えた。同社のシニアバイスプレジデント、スコット・ニール氏によると、同社はこの一年間、タイソンフーズやカーギルといった食肉業界大手と協力してアンガスビーフの供給量を確保し、アンガスビーフ・ステーキやローストを据え置き価格で提供できる体制を築き、この3月から全米4700店舗でアンガスビーフを販売しているという。
これは、急速な競争激化に対するウォルマートの対応策の一つだ。ドイツのディスカウントストア、アルディとリドルが積極的に店舗を拡大、アマゾンはホールフーズ・マーケット社を買収して業界を揺るがす脅威となっている。ウォルマートは、カーブサイド・ピックアップ(オンラインで注文した食料品を、車を降りずに受け取れる)サービスを提供し、農産物や食肉といった集客のカギとなる生鮮食品を高品質化することで、顧客の支持を獲得したい考えだ。
アンガスビーフは、その霜降りと柔らかな肉質で高品質牛肉の代名詞とされ、大手ファーストフードチェーン店でアンガス・バーガーが提供されるなど、近年の需要はうなぎ登りだ。米国では干ばつの影響で、2014年には牛群が1951年以降最小規模になり、ここ10年間、牛肉消費量は減少してきた。しかし供給が増加したことを受けて、USDAの予測でも消費回復が見込まれていることから、「成長の可能性という点で、牛肉に決定的なチャンスが訪れている」とニール氏はいう。
アンガスビーフは、ホール・マッスルビーフ製品として1頭丸ごと提供されており、リブアイステーキはポンド当たりわずか10ドル程度だという。牛ひき肉は今回の切り替えの対象外で、仕入れ先は幅広く、アンガス牛以外に由来するものもある。生産者団体のブランド「サーティファイド・アンガス・ビーフ(CAB)」でなく、自社の「ベリファイド・アンガス」と称しているが、ニール氏は「ウォルマートのアンガス製品は霜降り・味わい・一貫性といった点でCABと同等の品質基準を設定している」という。
ウォルマートが前回、販売する牛肉のグレードを格上げしたのは2011年。セレクトからチョイスへの格上げを図った。当時は供給業者が他の小売店から在庫を移動したため、この変更に18カ月間かかったが、それによってウォルマートの牛肉市場シェアは4%増えたという。
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