USDA(米国農務省)によると、2015年の牛肉・豚肉・家きん肉合計の生産量は936億ポンド(前年比2.7%増)。民間予想では2016年に958億ポンド(同2.4%増)、2017年には985億ポンド(同2.8%増)に達する見込みだ。
この生産増は食肉価格全体を引き下げると予想されるが、その下げ幅は輸出市場の動向が決定づけるだろう。米国の食肉生産量は過去20年間拡大してきた。国内における1人当たり消費量の増加は小幅だが、世界的な需要増によって輸出が拡大してきたことが主因だ。もし輸出需要が減少すると、国内供給の増大によって価格に大きな影響が出る。
このことは、昨年の牛肉市場が証明している。輸入増と枝肉重量増加が相まって国内供給が増加し、肥育牛とカットアウト価格はわずか数か月間で15〜20%も下落した。以下、米国の食肉輸出の予測とリスクを考察してみる。
【牛肉】
2015年の牛肉輸入量は枝肉ベースで33億7万ポンドに達した半面、輸出量は22億6600万ポンドにとどまり、貿易量は11億ポンドの赤字(輸入超過)となった。2016年は、輸入量が4億500万ポンド減(前年比12%減)、輸出量は1億3900万ポンド増(同6.1%増)と予想される。
輸入の減少は、豪州からの輸入減によるところが大。輸出の成長は、通常の牛肉供給量の伸びとブリスケットやショートプレートなど低価格な品目の増加によると予想される。ただ、この予想は米国へのブラジルからの輸入が解禁されるタイミングと認証工場数によって、劇的に変化する可能性がある。ブラジルからの輸入解禁は、牛肉貿易の赤字が拡大するかも知れないリスクである。
【豚肉】
輸出量は2012年がピークで、この3年間は48〜49億ポンドにとどまっている。2016年の予想は7.3%増の53億ポンド。大きな要因は中国と日本向けの輸出増だが、下降リスクとしては、ロシアが主要輸出国からの豚肉輸入を禁止しているため、欧州・米国・ブラジルは他の輸出市場を開拓する必要に迫られていることが挙げられる。
中国及び日本市場では、欧州との競争が激しくなっている。2016年は多少なりとも市場を取り返すと予想されるが、通貨リスクも考慮に入れなくてはならない。米ドルはユーロに対して依然強いため、欧州の豚肉生産がさらに拡大すると、米国産豚肉との競合が強まることが予測される。
今回の予想では、2016年の米国内における一人当たりの消費量が1.2%減、生産量が1.5%増、輸入が9.3%減、輸出が7.3%増と試算したが、もし輸出が前年と同水準にとどまれば、国内供給は一人当たりで2015年に比べて0.5%増加することになり、生体豚価格はさらに値下がりするかも知れない。
【ブロイラー】
2015年の輸出量は13.4%減。ロシアの禁輸のほか、中国・韓国・アンゴラへの輸出が減少。これらの国々は鳥インフルエンザの発生を受けて、米国の家きん類の輸入を全面的に禁止した。2016年は輸出が10.9%増加すると予想するが、一部の国々が輸入制限を継続する可能性もある。輸出市場が正常化しない場合は、生産量が2.7%増加するため、ブロイラー価格にかなりの値下げ圧力がかかり、食肉全体の価格にも大きな影響を与えることになるかもしれない。
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