小売業の販売動向の大部分が季節的な変化で決まるにもかかわらず、近年ではこれまでに経験したことのないような気候や家畜の疾病、予想外の消費傾向や卸売業界での変化が、小売業の食肉販売に影響を与えてきた。2016年の小売業界において、考慮すべき要因を見てみよう。
【消費傾向】
2015年、食肉の価格は多くの品目で前年を下回って推移しため、需要はまずまずだったが、食肉間(牛肉、豚肉、家きん肉)の競合が激しくなった。この傾向は2016年も続く見込みだ。
2015年も、タンパク質は食事の主力商品であり続けた。2016年もパレオ・ダイエットのようなタンパク質を豊富に摂るダイエットの伸びが予想され、食肉の需要増にも繋がるだろう。
また消費者の間では、農場から食卓までの透明性を求める傾向が強まっており、より多くの情報を欲している。すぐに入手可能な仕組みで情報を提供する必要性は、食品業界の各分野、特に小売とフードサービスで強まっていくだろう。
オンラインサービス、モバイル機能の増加、自宅への宅配など、小売業界での利便性への対応は進んでいる。加えて、伝統的な小売業にとって有効なのは、近年の成長分野である軽食部門の強化である。フードサービスやCVSから消費者を取り戻すために、素早く手軽なランチやディナーを店頭で提供することだ。調理済み食品、ビュッフェ、デリなどの人気が高まるだろう。
【牛肉】
牛肉卸売価格は前年比20%近くダウンした。牛肉価格は2015年8月中旬から急降
下を始め、以来その傾向が続いている。牛肉の小売価格はこのところ前年比約7%減で推移しており、2015年9月中旬以降はほぼ2014年の実績を下回っている。
2015年第4四半期の牛肉価格は、供給増と輸出の低調により下落した。最新予測では、2016年の牛肉供給は引き続き拡大基調が予想されており、輸出の改善がなければ2016年の牛肉小売価格は右肩下がりとなるだろう。
【豚肉】
2015年、豚肉の生産量は記録的に多く、卸売価格はここ数年間の底値に沿う水準で推移した。2015年第4四半期の週当たりの豚肉生産量は、過去最高を記録した。潤沢な生体豚の供給、枝肉重量の増加、そして輸出不振によって国内向けの豚肉供給量が増大した。これにより、小売業者は豚肉価格の安値に着目し、販促頻度と販売量が増加した結果、食肉間の競合が強まった。
豚肉の小売価格は、2015年春以降は概ね前年水準以下で推移し、消費者にとって魅力的な価格で提供されている。比較対象となる多くの豚肉品目が、鶏肉の価格を下回る水準で売り出されることも多かった。2016年を通して、もし生産量が前年を上回るなら、卸売価格はここ数年間の底値付近で推移する可能性がある。その結果、豚肉は食肉売場で競合する他の食肉の価格に比べて、依然として優位な位置にあり続けるかも知れない。
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