4月1日以降、18例のHPAI(高病原性鳥インフルエンザ)の発生が確認された。多くは七面鳥農場での感染だが、最新のケースはウィスコンシン州の商業用ブロイラー施設で発生した。商業用鶏肉施設では2例目だが、ミシシッピフライウェイ(渡り鳥の経路)での発生は初であり、他の施設への拡大が懸念される。
USDA(米国農務省)とAPHIS(環境保護庁)は、地方政府や家禽産業とともに、綿密な調査と処理場の隔離によって感染拡大を防ごうとしている。今回の発生拡大について、市場関係者の懸念事項は以下の通り。
HPAIの拡大は家禽の供給に影響を及ぼすか?
供給への影響は少ないと考えられる。発生施設にとっての経済的被害は著しいが、2014年のブロイラーの処理羽数は85億羽で、少数の施設で発生しても全体の供給に与える影響は極めて限定的だ。この点では、昨年に生体豚のと畜頭数を数パーセントも減少させたPEDvとは比べ物にならない。
HAPIの症例はアメリカの消費者需要に影響を及ぼすか?
これは過去の発生でも問題にはならなかった。アメリカの消費者は鳥インフルエンザに対して過剰な反応をしておらず、大きな影響は考えられない。消費者の反応がアメリカとアジアで異なる大きな理由は、家禽の消費方法にある。アジアの一部では消費者が生鶏を購入しており、ヒトへの感染を引き起こすH5N1やH7N9といったHPAIの変異も確認されている。アメリカではヒトに感染したことは証明されていない。加えて、アメリカの消費者は政府・業界双方のコントロールシステムを信頼していると考えられる。
HPAIによる輸出制限、鶏肉価格への影響は?
2月のブロイラー輸出量は17.4%減。この要因の一つは、以前からのHPAI発生を受けて多くの国で輸入停止措置が取られているため。特に顕著なのは中国で、米国産の全ての鶏肉の輸入を禁止している。
前年の鶏肉輸出量は生産量の19%を占めており、輸出の減少はHPAIによる供給減よりはるかに大きな影響を及ぼすだろう。USDAは2015年の鶏肉輸出量を前年比8.5%減と見込んでいるが、その減少の半分はロシア市場へのアクセスがないため。もし中国が6月まで輸入を停止しても年間では2%程度の減少である。
米ドルの高値、他の大規模輸出国との競合などHPAI以外にも輸出を減少させる要因があり、輸出の下方修正は国内市場への供給増加に繋がる。現状でも2015年の1人当たり食肉消費量は6%増の予測。供給増による価格低下を防ぐには、国内の消費者により多くの豚肉と鶏肉を消費するよう訴えていく必要がある。
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