USMEFが集計した1月の輸出実績は、牛肉・豚肉ともに前年を大きく下回った。西海岸の港湾争議により輸送が停滞し、牛肉と豚肉の輸出量は4年ぶりに低い水準となった。ただし、USMEFのフィリップ・セング会長兼CEOは、「米国産の牛肉と豚肉の直面している状況は全く異なる。豚肉は世界的に供給量が増加し、主要な豚肉輸出市場での競争が激化しているのに対し、今年の牛肉供給量は国際的に見ても極端にタイトな状況にある」と指摘する。
西海岸港湾の状況は改善しつつあるが、ダメージはまだ収束していない。1月の不振は、港湾問題以外にも為替や貿易協定などの要因がある。米ドルに対して競合国や輸入国の通貨が弱く、米国産食肉の価格競争力が弱まっている影響もある。
1月には日豪EPAによる牛肉関税の引き下げが始まり、さらに日本はEUとの第9回経済協力会合を終えた。合意には達していないが、いずれEU産豚肉の関税が引き下げられる見込みだ。豪州、カナダと新しい通商協定を結んだ韓国では、米国が保持している関税率の優位性が縮小した。
1月の牛肉輸出量は7万9899トン、前年同月比18%減。輸出額は5億3570万ドル、同2%減。主要輸出先であるメキシコは港湾争議の影響を受けず、正肉がわずかに減少したもののバラエティーミートが増加し、正肉の減少を相殺した。牛肉の輸出価値は、と畜頭数の減少と米ドル高を受けて、1頭当たり換算で271ドル、前年に比べて20.26ドルも上昇した。
豚肉輸出量は16万1165トン、同16%減。輸出額は4億5530万ドル、同15%減。うち、正肉の輸出量は11万9455トン、同20%減。輸出額は同18%減の3億7450万ドル。主要輸出先であるメキシコは、量的には前年をわずかに下回ったが、金額ベースでは堅調に伸びた。韓国向けは輸出量1万5262トン、同4%増、輸出額5140万ドル、同54%増と大幅に増加した。しかし、他の主要な輸出先は軒並み減少し、特に港湾危機の影響は日本向けチルドポークの輸出(1万4465トン、同22%減)に如実に表れた。
EUの豚肉産業がロシアへのアクセスを失って以降、日本を始めアジアの主要市場に価格の低いEU産豚肉が大量に流入している。11年間にわたる米ドルに対するユーロ安と西海岸の港湾問題が相まって、1月の豚肉輸出は嵐のような状況だった。EUは当面、ロシアへの輸出を再開できそうにないため、アジア市場ではEUの豚肉供給国との競争激化が続くだろう。
EUはロシアとの通商再開の難航による価格低下を阻止するため、豚肉産業に対する補助政策を打ち出した。ロシアの禁輸はカナダの豚肉輸出にも影響を及ぼしており、3番目の市場を失ったカナダは米国とメキシコへの輸出を増やしている。
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