市場関係者が今後12カ月間の世界経済の停滞を懸念した通り、肉牛と肉豚の先物価格は後退を続けている。主要な国外市場の経済問題、為替相場での米ドル高は豚肉の生産量拡大が本格化すると同時に、食肉の需要と価格に大きな影響を与えるかも知れない。
ユーロの価値は過去6カ月間でUSドルに対して20%安となった。欧州の主要な畜産国は、EU域内での需要の鈍化とドルに対するユーロ安により、世界市場での取引量を増やすだろう。
日本経済は再び不況に陥り、購買力はもちろん日本円の価値にも悪影響が出ている。日本は米国産牛肉の最大市場であり、豚肉では2番目に大きな市場。この市場の低迷は、米国産食肉の需要に確実なマイナス要因となる。
ロシア経済は後退の瀬戸際で、2015年は4〜5%縮小すると予測される。ルーブルは顕著に下落し、世界の食肉市場での購買力が低下している。重要なのはロシアが世界市場で牛肉、豚肉、鶏肉、酪農製品の主要な買い手であることだ。ロシアの購買力低下は、多くの製品が他の市場に回ることを意味し、価格競争の激化を招くことになる。実際にロシアの禁輸によって欧州の豚肉価格は16%ダウンし、欧州はこれまで米国の輸出市場だったメキシコに対しても輸出の強化を試みている。
ブラジルとアルゼンチンも景気後退に直面している。両国はエネルギー価格の低下、商品需要と労働力の弱さなど国と産業の基盤に問題を抱えている。ブラジルのペソは昨年7月から米ドルに対して20%安となった。昨年の国内の食肉消費は減少し、牛肉、豚肉、鶏肉ともに輸出量が増加している。
中国の経済成長率は7%だが、この20年で最も低い伸び率である。中国は牛肉、豚肉、鶏肉、乳製品の主要な購入先として浮上している。ただ、この数カ月間の購入は減少している。飼料コストが低下したことから国内生産を奨励する動きがある。
米国の豚肉と鶏肉の生産量の増加予測は前年比4〜6%増。米ドルが強いことは輸出市場での機会を制限することになり、卸売価格を低下させる要因にもなる。ただ、短期的には市場への圧力となるものの、それもグリルシーズンが始まるまでのことだろう。
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