ロシアのプーチン大統領が8月7日、ウクライナ問題の対抗措置として米国、EU、豪州、カナダ、ノルウェーからの農畜産物や水産物を1年間禁輸すると発表して以来、食肉産業界では、この措置によってどの畜種にどのような影響があるのかに関心が集まっている。
禁輸発表の直後、全米チキン協議会とアメリカ家禽鶏卵輸出協会は「この禁輸措置は米国の家禽・食肉産業に大きな影響は及ぼさない」と声明を発表した。「最も大きな負担を強いられるのは、すべての食品、特に食肉と家禽肉をより高い価格で購入しなければならなくなるロシア国民である。ロシアにおける家禽肉価格はすでに値上がりしており、週に2〜3%上昇している」と声明の中で述べている。
2013年のロシアの米国産鶏肉の輸入量は26万7000トン(3億300万ドル)で、ロシアにとって米国は2番目に大きい供給国である。しかし、この量は米国の鶏肉輸出量の7%、年間生産量の1.2%でしかない。両団体は声明の中で、食品は政治的な駆け引きの材料にするべきではないとし、早期の問題解決と自由で公正な貿易の再開に向けて米国政府に協力するとの姿勢を示している。
鶏肉価格にロシアの禁輸の直接的な影響はまだ出ていない。しかし、市場心理面で価格が圧迫される可能性もあり、今後数週間の動向が注視される。
豚肉に関しては、カナダ産に大きな影響が出そうだ。米国産豚肉は2013年前半にラクトパミンに関連してロシアへの輸入が停止され、2014年4月に解除されたが、輸出が承認されているのは2工場のみであり、輸出量はごくわずかでしかない。禁輸の影響は極めて限定的だ。
一方、カナダはかなりの量をロシアに輸出していた。そのため、カナダは負担を軽減しようと状況を見極めようとしているが、最終的には米国への輸出量が増えると予想される。グローバル・アグリ・トレンド社によると、カナダ産豚肉の対ロシア輸出量は年間生産量の11%に相当する。月間約780万ポンド(3538トン)を転売する市場が必要になる。
米国の対ロシア牛肉輸出量は2012年12月以降、実質的にはゼロ。2014年には5706頭の生体牛が輸出されているだけであり、禁輸の影響はほとんどない。
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