毎年、牛肉業界の年初は期待と懸念からスタートするが、今年も例外ではない。飼養頭数の基盤回復に期待したいが、2006年以降の7年間で750万頭も減少した飼養頭数を回復するには数年を要する。従って、今年はすべての区分の肉牛が最高値になるだろう。ただ、高値を維持できるかどうかは国内外の需要次第だ。
2013年の国内需要は2012年に比べて強まったが、2014年は前年より増加するにしても伸びは小幅にとどまる可能性が高い。鍵となる要因は米国経済の継続的な改善と、中国、ロシアの輸入再開である。最近の報道では、この両国は今年半ばにも再開するだろうと伝えられるが、実際の輸出動向は、他国との価格面での競合にも左右される。特にブラジル、豪州との価格差を輸入国がどう判断するかによって変化する。また、ブラジル産のチルド牛肉が今年から米国に輸入されることも価格の変動要因となる。
主要な繁殖地帯では干ばつによって減少した飼養頭数と繁殖用雌牛の構造変化が継続している。牧草・放牧地帯の状況をみると、テキサス州は良化しているが、国土の45%の州ではいまだに干ばつの影響が残っている。2012年は繁殖地帯の主要7州のうち、モンタナ、サウス・ダコタの2州では繁殖雌牛が18万8000頭増加したが、残りの5州(テキサス、ネブラスカ、ミズーリ―、オクラホマ、カンサス)では87万2000頭も減少した。
2013年は繁殖用雌牛の北への移動は小規模な範囲にとどまり、肥育素牛の供給基地が南下する傾向が見受けられる。これはネブラスカ州での飼養頭数が増加していることが一因であり、2014年には肥育素牛の供給でネブラスカ州が全米No.1となることが予測される。これは肉牛の肥育業者と牛肉パッカー双方に大きなインパクトを与えることになろう。
◎2013年に激減した繁殖雌牛、2014年はゆるやかな回復へ
20年前に米国にはほぼ1億100万頭の牛がいた。それが2004年に9440万頭まで減少。その後3年間で9660万頭まで回復したが、2013年には8930万頭まで落ち込み、2014年(1月1日)には8800万頭未満と1951年以降で最も少なくなった。2012年の肉用牛頭数は1962年以降で初めて3000万頭を割り込み、2013年も引き続き縮小した。これに対し、2013年前半のと畜頭数は前年同期を大きく上回り、年間でも飼養頭数が増加しない指標値(1月1日現在の総飼養頭数の10〜11%)以上がと畜された。
さらに2013年は未経産牛のと畜頭数が多かったことから、繁殖用雌牛の頭数が低下した。2014年1月1日現在の繁殖用の未経産雌牛は前年を上回る可能性があるが、その増加分は2013年生まれで離乳したばかりの雌子牛が主体である。2014年にようやく牛群の拡大が始まるが、その拡大は緩やかである。
カンサス州立大学のテッド・シュロダー氏は「肉牛の生産基盤は2014年に緩やかに再建される。トウモロコシの価格(ブッシェル当り)が7月に7ドルから4ドルまで下落した。11月時点で肥育用素牛の先物価格はすべての重量区分で100ポンド当たり165ドル以上を付けている。これは、1年前に比べ8〜12ドル高、2年前比では13〜18ドル高、3年前との比較では40ドル以上も高い。トウモロコシの価格低下と肥育素牛の高値は一時的なものではなく、確実に繁殖雌牛の頭数が拡大し、肉用牛の頭数拡大へと繋がる」と予測する。
◎牛肉輸出、2014年は生体高、ドル高など課題多い
2012年度の米国の牛肉輸出は記録を更新した。輸出量こそ2003年(BSE発生前)をやや下回ったものの、輸出金額は55億1000万ドルと過去最高となった。グローバル経済の回復と日本の輸入条件の改正によるものだ。しかし、2014年はこれらの数値を上回るのは難しい。牛肉生産量が4〜5%減少するため、輸出製品の生産量も減少し、しかも価格が上昇する。
さらに、為替相場で米ドルがブラジル、豪州、カナダ、NZの通貨に対して強いままで推移すれば、海外のバイヤーにとって米国の牛肉輸出価格は割高となり、多くの輸出先国で守勢に回らざるを得なくなる。このため、アナリストは「USDAが2014年半ばまでの再開を視野にロシア、中国と交渉を進めているのは明るい材料だが、最大の市場である日本はこれまでのような大幅な伸びは続かない。これまで以上に牛肉の品質向上に取り組むことが重要になる」と指摘する。
中国、ロシアの再開交渉以外で注目すべき国はメキシコだ。メキシコも干ばつにより牛群が劇的に減少した。これにより、メキシコからの米国への素牛輸出頭数も大幅に低下したが、これは同時に米国からメキシコへの輸出量が増える潜在的な可能性が大きくなったことを意味する。
一方、牛肉輸入については、豪州は干ばつよる牛群の縮小で2014〜2015年の対米輸出には限界がある。ブラジルからの米国への輸入は拡大し、他の国際市場でも競合関係が強まるだろう。ブラジルのレアルは米ドルに対して昨年11%下落した。2011年以降では30%も下落しており、米国産の牛肉製品と競合する国際市場にブラジルは2年前の30%安の価格で提供することができる。
ブラジルは2013年に輸出量で世界最大国となったが、USDAの予測では2014年の輸出量も拡大すると見込まれる。牛肉輸出市場における米国のシェアは11%だが、ブラジルにインドと豪州を加えた3カ国のシェアは2014年に57%に達すると予測される。米国の牛肉産業にとって輸出市場の拡大は重要なテーマだが、生産基盤の再構築を図る中で、それを実現するには課題が少なくない。
◎生体牛価格は高値更新、140ドルに迫るか
2014年の肥育牛価格は週間および年間の最高値を更新するだろう。一部のアナリストは100ポンド当たり140ドルを超えると予想する。そのような高値は2週間前には考えられなかったが、ここにきて現実味をおびはじめている。四半期ごとの平均価格を予測するのは困難なことであるが、アナリストは第2四半期または第4四半期に最高値が更新されると予想する。
多くのアナリストの年間予測を集約すると、予想価格のレンジは131.25〜134.25ドル。仮に、この予想内で推移すると、年間平均価格は史上初めて130ドルを超えることになる。週間の平均価格予想は最安値が126ドル、最高値が141ドル。
価格予想の変動要因の一つはアナリストたちの2014年の牛肉の生産量予測が240億ポンド(1088万6000トン)から248億ポンド(1124万9000トン)まで幅があることだが、2014年は肥育牛(去勢、未経産牛)と繁殖用雌牛のと畜頭数が減少するため、これが価格の底支えになるとの見方は一致している。
家畜販売情報センターでは、2014年の商業用牛と畜頭数は前年比7.2%減、233万頭の減少を予想する。ただ、肥育業者が枝肉重量の大型化を図るため、年前半の肥育牛の牛肉製品重量は前年を下回らないと予想する。2013年の場合は、年前半の生産量がアナリストの予想平均よりも7億ポンド多く、平均価格も多くのアナリストの予想平均(130ドル)を下回る126ドルとなった。
今年もこうした動きが繰り返えされるかどうかを注視する必要があるが、干ばつによる飼料コストの急騰と生体牛の供給不足によって形成された2013年の高値は、すでに実勢相場となっており、2014年はさらなる高値が予想される。
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