米国の第3四半期の経済成長率は+2.7%の改善を示した。この4カ月間で70万人の追加雇用や住宅価格の高評価、ガソリン価格の安定などにより、消費者信頼インデックスは過去5年間で最も高いレベルを記録した。しかし、次の議会の論点となる増税と財政支出の削減、いわゆる「財政の壁」問題が連日報道されており、消費の先行きに懸念が強まっている。これは、フードビジネスにも重大な影響を与えることが予想される。
目前に差し迫る懸念は、この12月末に社会保障減税が期限切れになること。米国議会は2011〜2012年の間に、従業員の社会保障税率を6.2%から4.2%に引き下げることを決めている。議会がこの期間延長を議決しなければ、2013年1月1日以降、全米の約1億6300万人の雇用従業員は、社会保障基金に現状より2%多く支払うことになる。平均的な家庭では毎週の家計支出が約20ドル減ることになり、可処分所得の減少が食費の支出にも大きな影響を与えると予想されている。
すでに消費者の外食支出は減少し、レストラン経営指標は10月も低下している。この指標では「現状」と「先行き」の双方で指数100を下回っており、縮小傾向を示している。NRA(全米レストラン協会)の集計では、10月の来店客数はさらに低下し、年初の指標に比べると3%も低下している。
毎月の小売販売データでも同様の傾向がみられる。末端販売では、消費者は引き続き高値の牛肉価格に抵抗している。9月の小売販売データは、豚肉価格が前年比で2.7%安くなったのに対し、牛肉価格は5.4%も上昇している。消費者は牛肉のモモ肉などを買い控え、鶏肉に需要をシフトしている。これは、2013年の年初の生体牛市場にとって大きな不安材料となろう。
「財政の崖」に係わる報道の多くは、誰がより多くの税金を、いくら支払うかに絞られているが、こうした報道は全ての納税者に衝撃を与えている。社会保障減税が期限切れになると、直ちにフードビジネスに影響が出る可能性がある。さらに、増税は小売、外食の現状の需要の弱さに追い打ちをかけるだろう。ビーフパッカーは損失を出しながら、と畜頭数を減らすことで高値を維持しようとしているが、エンドユーザーからの値下げ圧力はますます強まることが予想され、2013年のフードビジネスは多難な年となろう。
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