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記録的大干ばつによる穀物被害深刻、影響は多方面に |
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干ばつによる牧草や穀類への被害が米国各地に広がっている。牧草地の状態が悪化した影響で、前倒しでフィードロットに送り込まれる若齢牛や、処分される肉用牛の頭数が増えている。加えて高温で乾燥した天気が続いているため、トウモロコシの作柄も不良だ。重要な授粉時期を迎える中、直ちに状況が改善するめどは立っていない。
コーンベルト(トウモロコシ地帯)で、例年並の土壌状態を保っているのはごく一部で、米国土の72%が異常な乾燥状態にあり、トウモロコシの単収は日々下がっている。米国農務省(USDA)の需要予測では、期末在庫対使用量の比率は4.5%に落ち込み、需要割当が必要になる最低供給レベルに達した。
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重なり合う干ばつの余波 |
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悪化が進む干ばつが、短期的にも長期的にも各方面に及ぼす影響が懸念される。昨年干ばつに見舞われた地域がまだ立ち直っていないことが、今年の被害をさらに大きくしている。
既にトウモロコシと干し草の価格が急騰し、生体牛は値下がりしている。飼料費、特にトウモロコシと大豆価格の急上昇で、肥育業者、成豚生産者の経営はさらに圧迫され、原材料値上がり分を十分に転嫁できないと、パッカーマージンにしわ寄せが行くだろう。レストラン・チェーンは食肉の値上がりに直面しており、シリアル、飲料メーカーも影響を受ける。
また、飼料費の値上がりは牛肉から卵に至る畜産関連製品の減産を招き、食品価格を過去最高値に上昇させて消費者に打撃を与えることになる。牛肉は既に食肉の中で最も価格帯が高く、消費者の価格抵抗感が強まるだろう。来年度は肉牛頭数の減少で、過剰生産能力に悩んでいる肥育業者とパッカーに、より多くの負担がかかるだろう。
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肥育赤字は1頭200ドル以上 - USDA予測 |
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6月中旬から1ヵ月で47%も値上がりしたトウモロコシ価格と、肥育業者の大幅なマイナスマージンを受けて、肥育牛価格は予想通り安値に動いた。中でも、まだ飼料が必要な中間重量の牛と、軽量の肥育用子牛が影響を受けた。今年後半から来年はプラスマージンへの好転を期待していた肥育業者は、飼料価格上昇分の埋め合わせに、肥育牛を安値で買う対応を始めている。7月出荷分肥育牛のマージンは、肥育牛価格100ポンド当たり117ドルベースで、1頭当たり200ドル以上のマイナスが予想されている。
経験則では、トウモロコシの値上がり1ドル(1ブッシェル)に対し、肥育牛は100ポンド当たりで7、8ドル値下がりする。最新のシカゴ商品取引所の肥育牛価格は、6月中旬から24ドル下落して136ドルで、1頭当たりでは9.8ドルから10ドル安になっている。また肥育牛価格は恐らく、干ばつに誘発された供給サイドの圧力や、干し草不足で行き場のない子牛に起因する需要薄を反映していることにも注意すべきだ。
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子牛値下がり、体重によりばらつき |
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一般的に、子牛の体重増にかかるコストは、増加した重量分の金額よりは少ない。この体重増で見込まれる利益は、子牛の単位当たり価格に含まれている。そのため100ポンド当たりの価格は重量の子牛より、軽量の子牛のほうが高くなる。トウモロコシ値上がりに伴い、子牛の体重増のコストに加えて、その他の子牛飼育、仕上げに要するコストも上昇する。
結果として、異なる重量の子牛の間で、単位当たりの価格差は小さくなる。状況によってはこの関係が逆転して、単位当たり価格は軽量の子牛より、重量の子牛の方が高くなる。現在はまだその時点には達していないが、子牛市場の重量別価格構造は平均化している。6月中旬と比較して400〜450ポンド級の子牛価格は15%下がったが、900〜950ポンド級は5%強の落ち込みだった。
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畜産・家禽業界 再生可能燃料基準の見直し求める |
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米国の畜産・家禽業界団体の連合は連邦議会に対し、年間エタノール生産量を義務づける連邦再生可能燃料基準(RFS)の見直しを求めている。業界団体側は最新の研究結果を根拠に、「RFSは、食品は値上がりするがガソリンは値下がりしないという、“lose-lose(双方に不利な状況)”を生む」と指摘している。さらにRFSを改正して、在庫が危険な低レベルに達すると予測された場合には、エタノール生産のインセンティブを減らす自動的調整を認めるよう求めている。
※2012年7月9日、23日 Cattle Buyers Weekly
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