6月は、季節的に増加する出荷可能牛を吸収する十分な牛肉売り上げが必要となるため、牛肉業界にとっては極めて重要な月だ。毎年5月最終週のメモリアル・デー連休の販売成績は、6月のセール動向の指標となる。今年は、台風に見舞われた南東部の一部地域を除いて、全国的に売り上げは好調だった。連休明けの週は補充買いも多く、スポット市場のカットアウトも3月上旬並の高いレベルに戻っている。
6月は、と畜頭数と牛肉生産量が、牛肉卸売価格と生体牛価格に影響を与えるだろう。週間と畜頭数は、連休前の5月4週は63万6,000頭(昨年67万3,739頭)、5週は59万6,000頭(同61万1,336頭)で推移し、6月2週は65万頭(同68万760頭)と予想される。
パッカーは、1月に崩れた需給バランスを取り戻して、マージンを確保する構えだ。枝肉がLFTB(Lean Finely Textured Beef)騒動で3月は値下がりし、また昨年比で大幅に重量化しているので、と畜数が多すぎないよう注意している。
収容能力1,000頭以下の小規模フィードロットから出荷される牛の頭数が急減し、収容能力1,000頭以上の大規模フィードロットから出荷される牛の比率が増加している。そのため、と畜頭数と予想出荷頭数の関連性が崩れている。家畜マーケティング情報センター(LMIC)のロブ氏は、「こうした構造変化は、出荷可能牛の先行出荷頭数の不足を説明する重要ポイントだ。この夏はと畜頭数が季節的に増加するが、前年比では3%減少する」と述べている。
別のアナリスト達は「昨年比で飼育日数120日を超える牛頭数が増え、牛が適宜出荷されていないため、枝肉は昨年より20ポンド重い」と指摘する。ロブ氏は「飼料費の高騰で数年前に肥育農家の廃業が始まり、フィードロット関連の規制増加でさらに拍車がかかった」という。
アナリスト達は昨年5月に初めてと畜頭数と出荷頭数の不一致に気づいたが、ロブ氏は、それ以降同じ状態が続いており、構造変化の表れだと述べている。収容能力1,000頭以下の小規模フィードロットの飼育頭数は、以前は全国総飼養頭数の18%を占めていたが、現在は15%に下がっている。
米国農務省(USDA)は、5月4週時点でトウモロコシ主要産地の72%が作柄「良好」または「優良」と格付けされたと報じた。3週の77%から下がってはいるが、昨年同期の64%を上回った。週報「Crop Progress レポート」でも、出芽率は、前年同期(59%)及び5年平均(69%)より高い92%を記録した。
イリノイ大学の農業エコノミストは、「早期の作付けと現在の良好な作柄から、収穫量が期待される。しかし、それを確保するには、長期間(8ヵ月前後)平年を上回っていた気温が平年並みか平年以下になり、主要産地の土壌の水分不足が解消されることが必要だ」と述べている。
昨年はドル安で、米国産牛肉は過去最高値に近い卸売価格にもかかわらず、世界市場で優位に立った。しかし今年は豪ドル、ブラジルレアルに対するドル高で、その反対の状況が始まっている。それでも牛肉卸売価格は、ほぼ最高値にとどまっている。昨年の牛肉輸出額(バラエティミートを含む)は54億2,000万ドルに達して、生体牛の価格を支えた。これは1頭当たりの金額では過去最高値の206.37ドルだ。今年第1四半期の牛肉輸出額は前年比で4%増加しているが、この高値を維持するのは難しいかもしれない。
第1四半期は牛肉輸出量が10%減少し、予想以上の量が国内市場に滞った。牛肉卸売価格の高値とドル高が続くと、輸出量の前年比マイナスは年末まで続くかもしれない。本来の輸出分が国内市場で消化できなければ、パッカーは減産を余儀なくされる。しかし予想される下半期の輸出量減少には、単に牛肉供給量の不足という市場の要因もある。年初来の牛肉生産量は前年比で3.0%減少している。
対日牛肉輸出をみると、第1四半期は、輸出額のみ前年比で10%増加して1億9,400万ドルだったが、輸出量は7%減の2万9,695トンだった。
オーストラリアは、日本市場のシェアを一部米国に奪われたが、それでも対日輸出量は依然として米国を上回っており、2011年は自国の総輸出量の36%を占める34万2,000トンに達した。加えて豪ドルに対する米ドル高によって、米国向け牛肉輸出は更に増加するだろう。第1四半期の米国の牛肉輸入は前年比でオーストラリア産が91%、ニュージーランド産が4%増加した。両国では牧場の状態が良好で枝肉重量と生産量が増加し、一方米国では生産量不足の中で牛肉加工の需要が伸びており、牛肉輸入はさらに増加する見込みだ。
食品安全検査局(FSIS)は6月4日、加工用ビーフトリミングを対象に、食品安全強化を目的としたSTECs検査*を試験的に開始した。まず検査方法を検証し、その結果をベースラインとしてSTECs検査の普及を目指す。そのため、当面は食肉加工工場の検査実施は義務づけていない。
一方、業界側では、NAMP(北米食肉加工協会)、NMA(全国食肉協議会)、その他7つの業界団体が共同で、7月7日にSTECウェブセミナーを開催し、FSISラボの専門家によるレクチャーと質疑応答を行ってSTECs検査の実施をサポートする。
*6種類の志賀毒素産生性大腸菌(非O157 STEC)の検査。 加工用ビーフトリミングを対象に、O抗原の腸管出血性大腸菌検査は陰性でも、志賀毒素生性大腸菌検査で陽性となった標本を農業調査局(ARS)に送り、微生物分析を行って他のO抗原の大腸菌感染の有無を検査する。
世界最大の牛肉輸出国といえば、ブラジル、米国、オーストラリアが思い浮かぶ。過去10年間はこれらの3ヵ国のいずれかが1位の座を占め、昨年はオーストラリアが牛肉輸出量で最多を記録した。しかし今年は、どうやらランク外のインドに追い越される模様だ。USDAの推定によると、インドは152万5,000トン、 オーストラリアは142万5,000トン、ブラジルは135万トンで、米国は4位の123万6,000トンになっている。
しかしインドが輸出する牛肉は、他の輸出国のものとは少々違う。カラビーフと呼ばれる水牛(バッファロー)由来のもので、もっぱら骨抜きフローズン・バッファロービーフだが、この牛肉をUSDAは世界推定牛肉総生産量に算入している。牛頭数も同様の扱いで、インドは推定3億2,449万頭で、1億9,755万頭のブラジルを抜いて1位になっている。
欧州で経済危機が続く中、ブラジルは1万トンの「ヒルトン枠*」を使って、近年では最高値でEU向け高級ビーフの輸出量を伸ばしている。EU牛肉輸入量のシェアは昨年の4%から、営業年度末の6月30日には31%に達する見込みだ。1トン当たりの価格は一般的ビーフは8,900ドルだが、ヒルトン級になると1万2,000〜1万4,000ドルになる。
今年1〜4月期のEU向け輸出額は前年比12.5%増の1億1,850万ドルで、輸出量は21.5%伸びた。EU向け低品質加工肉の輸出は18.5%減少したが、高級ビーフの売り上げが輸出額を増進した。
年内EU市場では、チキンや挽肉などの安価な食肉の消費量が増加すると予想されるが、富裕層では今後も高級ビーフへの安定した需要が見込まれる。
*EUにおける高級牛肉の低関税輸入枠の俗称。1979年に東京ヒルトンホテルで開催されたGATT東京ラウンドで、EUと牛肉輸出国の間で合意された。ブラジル、アルゼンチン、米国、カナダ、オーストラリアなど8ヵ国が対象。
5月31日から6月4日にかけて、現在は本土中南部で発達する暴風圏が6月2〜3日の週末には北東に流れて、五大湖北方に達するだろう。暴風圏全体の雨量は1〜2インチのなる可能性もあり、プレーンズ中部・南部から本土北東にかけては局部的にそれ以上の雨量になる。一方、西部全域の暑い天気は、6月2週前半には本土中部に移動する。中西部、南部、東部では、メモリアル・デーの週末にピークに達した暑さも一休みだ。
国立測候所発表の6月5日〜9日にかけた天気予報によると、本土の大部分で気温は平年を上回り、雨量は例年を下回る。大西洋州中部・北部及び太平洋沿岸地域に限って、例年より涼しくなり、中部大西洋沿岸、及び太平洋沿岸北西部からレッドリバー・バレーに至る本土北部では、通常より湿度の高い天気になる。
牛肉市況(5月28日〜6月1日)
豚肉市況(5月28日〜6月1日)