肉牛処理頭数の大幅な減少(62万5,000頭)を受けて、パッカーは、11月2週の生産量を大きく抑えてボックスビーフを値上げし、前週の最高値より安い価格で生体牛を購入することで損失を減らしている。
パッカーは3週もボックスビーフの値上げを続け、そのためチョイスは4.90ドルアップの195.39ドル、セレクトは5.21ドルアップの177.30ドルまで上昇した。特にリブとテンダーロインの価格は前年比2割高になった。関係者の間では、これ以上値上がりしないという見方と、生産調整が続けば品薄の製品は今後も値上がりするという見方で分かれている。
生体牛・ボックスビーフ価格の値上がりが、小売価格と牛肉需要に与える影響が懸念される。牛肉小売価格は数ヵ月安定していたが10月に値上がりし、1ポンド当たりの全体牛肉小売価格(all beef retail price)は前年比9.8%アップの平均4.50ドルだった。
周期的に秋冬期はと畜頭数が増えるとはいえ、冬を越すための干し草や他の飼料が不足して、雌牛と雄牛はと畜全体の30%を越え(日間)、枝肉は600ポンド以下に偏っている。
加えて干ばつによる影響は、肉牛輸入頭数の減少にまで広がっている。米国農務省(USDA)は2011年の輸入頭数を前年比10%減の205万頭と予測しているが、カナダ産牛の輸入頭数は今年1〜9月で40%も減っている。カナダの6月以降の出荷頭数は平均で前年比4%多いが、為替レートの関係で、と畜用カナダ牛は国内で十分高値がついているため、米国に輸出する積極的動機付けがない。その結果、直ちに処理に送られるカナダ牛の9月度輸入頭数は前年比で35%減少し、2011年の輸入頭数は10%減と予想されている。
米国を含む主要牛肉生産国は、「持続可能な牛肉生産」の定義づけに重点的に取り組むことに合意した。米国の牛肉業界では画期的な持続可能性アセスメントがスタートしている。米国産牛肉の二酸化炭素排出量(CFP:カーボンフットプリント)は過去30年間で18%減少しており、NCBA(全米肉牛生産者・牛肉協会)は「多数の持続可能性の専門家が、米国の漸進的な肉牛肥育方法は世界の模範と評価している」と説明している。米国のアセスメントでは、二酸化炭素の投入量、排出量を複数年にわたって計測し、継続的にCFPを減量する機会点を探す。これは、今まで各地で開催された持続可能性を検討する会議でも重要事項として確認されている。
全国食肉協議会(NMA)に次いで北米食肉加工協会(NAMP)も、両者が連合して新団体を設立する計画について、検討を続けることを決定した。次のステップとして、各々の会員会社で合併計画の表決を行う。合併により、より多くの便益と幅広い支援、サービスの提供を目指す。NMAは、課題が多く急速に変化するビジネス環境において、2つの団体を1本化することで会員によりよいサポートをすることができると説明している。
米国農務省経済調査局(ERS)は、国内外の需要高で、通常は年間で最も安値になる第4四半期の成豚価格が、前年比で高い水準になると予想している。10月の赤身51〜52%相当の成豚価格は、前年比ほぼ31%高の68.44ドル(100ポンド当たり)で、豚肉生産量は前年比約1%増だった。
第4四半期の成豚価格は前年比30%高の64〜66ドル、商業用豚肉生産量は前年比0.5%減の61億ポンドと予想される。輸出が増加すると国内消費にまわる量が減少し、その分小売価格が値上がりする。第3四半期の一人当たりの豚肉購入可能量は前年比で6%以上減って11ポンドだった。第4四半期は3%以上少ない12.4ポンドになる見込みだ。
9月の豚肉平均小売価格は前年比8%高の3.56ドルで、第4四半期は3.50ドル台前半から中盤で推移するだろう。
食品安全強化を目指して生の牛肉を対象に、現行のO157検査に追加して来年3月から実施が始まる「非O157 STEC検査」は、トリミング価格の値上がりにつながると予想される。 大腸菌研究の世界的権威であるMohammed Koomaraie氏は、「追加検査を実施するとO157と6種類の志賀毒素産生性大腸菌の陽性率は、O157のみ検査した場合の5〜10倍になるだろう」と述べている。そうなるとO157検査の結果、加熱加工に回されるトリミングは現在の0.8%からさらに多くなり、市場に出回る生の牛肉が減って値上がりするだろう。また非O157 STEC検査の実施で、検査結果を待つ分牛肉の留め置き期間が長くなり、陰性と判定されたとしてもシェルフライフが短くなり、ディスカウント用か他の製品として販売されることになるだろう。
市場調査会社ミンテルが実施した最新の消費者調査によると、回答者の57%が「高くても地元のエコ料理を選ぶ」と回答し、価格については「1〜5%の割高までならOK」と述べている。また店の選択理由はメニューが豊富(74%)、価格(69%)、好立地(67%)の順で、「地元、オーガニック、エコな食材を使用」はわずか7%だった。しかしミンテル社は「こうした項目は他店との差別化になり、グリーン指向の高まりにつれて重要度を増すことになる」と述べている。
レストラン企業の社会的責任(CSR)に関しては、高齢者が「従業員の待遇」を、18〜24歳の年齢層は「グリーンで持続可能なプロジェクト実施」を1位に挙げている。「グリーン意識」を選択した回答者はまだ多くはないが、全米で見ると、西部で11%、北東部は7%、中西部は4%だった。これは各地域での従来のヘルシーなライフスタイルや料理方法を反映している。
11月17日から21日にかけての気温は、ハワイとアラスカを除く48州のうち北西部全域では平年を15〜20度(華氏)も下回り、グレートプレインズ南部から五大湖地域にかけては、平年を10〜15度(華氏)上回る。テキサス北東部、オクラホマ東部の東と北東方向、中部大西洋岸地域は0.5〜2インチの適度の雨が降る。気象予報センター発表の11月22日から26日にかけての予報によると、本土西部にかかる気圧の谷と東部にある気圧の尾根の影響が続く。気温はロッキー山脈の東側ほぼ全域で平年を上回り、西側は平年並みか平年を下回る。雨量は西部、オクラホマ東部の北東方向、中部大西洋岸地域では平年を上回る可能性が高い。ロッキー山脈南部、ハイプレーンズ南部、プレーンズ中部、北部の大半、太平洋岸地域南部では平年を下回る可能性が高い。
牛肉市況(11月14日〜18日)
豚肉市況(11月14日〜18日)