8月末にハリケーンが東海岸を襲い、周辺の酪農業に大きな被害をもたらした。この数十年で酪農家が減少している中、米国の酪農の中心地であるバーモント州では、今回のハリケーンで廃業に追い込まれる古い酪農家もありそうだ。
厳しい干ばつに見舞われているテキサスおよび周辺の州では、若い牛の早期出荷を余儀なくされている。アナリストの大半が8月の導入頭数は前年を上回ると予想し、9月1日時点の飼養頭数については全員が前年比6%から9%、60万から100万頭の増加を見込んでいる。最終集計前の数字だが、8月の導入頭数は前年比6.6%増と推定される。8月およびその前数ヵ月の導入牛は全重量クラスにわたっていたので、出荷は冬から春先にかけて広がるだろう。
8月には、7月に続いて導入頭数が過去最多に達したと思われる。今後、導入頭数は前年比で急減すると見込まれるが、出荷頭数への影響は早くても5月までは現れないとアナリストは見ている。
全米干ばつ緩和センター(NDMC)は、7月の時点で干ばつ被害を受けている地域が米国史上最大に達し、うち12%は米国農務省(USDA)が滅多に使わないD4(極度または異常な干ばつ)としている。
USDAは最新の世界農産物需給推計レポート(WASDE)で、現状の牛肉増産・豚肉減産傾向を考慮して、2011年度の予想食肉総生産量を上方修正した。
牛の早出しの影響で、と畜頭数の増加が続くことから、2011年の牛肉生産量は増加する。一方、豚肉は第3四半期のと畜ペースが遅く、また暑さによるストレスで豚の体重が若干減って、豚肉生産量は先月発表の予想値から下がる見込みだ。
2012年についても先月、推定値を牛肉は上方修正、豚肉・鶏肉は下方修正した。今年の干ばつで多数の子牛が早出しされた分、来年初めは牛肉増産が予想されるが、それ以降の四半期は肉牛の供給不足、導入牛の軽量化と飼料費高による枝肉重量の減少で、生産量に影響が出るだろう。豚肉は飼料の供給不足で減産が予想される。
コーネル大学応用経済学のカイザー教授がまとめた最近の研究では、米国の牛肉、豚肉、トウモロコシ、大豆生産者は、米国食肉輸出連合会(USMEF)が推進する輸出市場開発プログラムへの投資で、堅実な収益を出していることがわかった。過去10年間で、各種の市場開発プログラムへの投資1ドル当たり平均で豚肉業界は15ドル、牛肉業界は8ドルの純収入を得ている。
同教授は「米国産牛肉・豚肉の輸出市場開発および販売促進プログラムは、明らかに食肉輸出の純収入に大きなプラス効果があった」と述べている。生産者とUSMEF合わせて平均で年間2,750万ドルのマーケティング費用を投入した結果、米国の食肉輸出は年間30%以上増加した。年平均で牛肉は4,630万ドル、豚肉は8,570万ドルの純収入をもたらし、投資額をはるかに上回った。
USDAは9月12日、2011年のトウモロコシ予想生産量を4億1,700万ブッシェル減の124億9,700万ブッシェルに下方修正し、年間平均値幅は6.20〜7.20ドルから6.50〜7.50ドルに上方修正した。
また最新のクロップ・レポートと世界農産物需給推計をもとに、飼料、エタノール、輸出用を含む2011/12年度のトウモロコシ予想消費量を4億ブッシェル下げている。在庫-需要比率は過去平均の15%に対し5.4%と予想している。USDAの農業エコノミストは、「需要低下の現れとして予想消費量を大幅に減らしているが、それはむしろ安定供給の度合いを示している」と述べている。
食品安全プログラム強化のため、USDAは挽肉やテンダライズ・ステーキなど生の牛肉を対象に、6種類の志賀毒素産生性大腸菌、別名「非O157 STEC」検査を追加して来年3月に実施を開始すると発表している。6種類のいずれかの菌が発見された製品は加熱製品に転用され、販売後に菌が発見された製品はリコールの対象となる。
USDAは非O157 STECが原因で年間11万2,000件を超える食中毒が発生し、うち3万6,000件以上は牛肉が原因と考えている。消費者保護団体、科学者、および上記検査を既に実施している2社はUSDAの発表を歓迎している。
成豚頭数の増加が予想される秋期を間近に控えて、成豚価格は8月初旬に最高値の79.33ドルを記録して以来、徐々に値下がりしている。その一方で、最大の成豚産地であるアイオワのトウモロコシ現金価格は7月中旬以来、1ブッシェル6ドル後半から7ドル前半での取引が続いている。
主要な飼料投入コストの上昇と同時に産出価格が下落して、飼料費と成豚売値の開きが小さくなっている。生産者は四半期単位の開きは2012年までこの傾向が続くと推定しているが、2011年第4四半期にはその差は狭まり、2012年の第1から第3四半期は2011年より下回ると予想される。
成豚生産者は出荷時の成豚の体重を減らして、成豚の飼育費と売値の開きの縮小に対処すると思われる。しかし重量不足の豚にはパッカーディスカウントがあるため、生産者がと畜時重量の大幅減量を思いとどまるかもしれない。USDAは2011年後半から2012年に向けて、前年対比で平均枝肉重量を低めに推定し、開きの縮少を抑える目算だ。
9月15日から19日にかけて、テキサス南部、ロッキー山脈北部、モンタナおよびワイオミング全域を除いて全国的に涼しい天気になる可能性が高い。コロラド、ニューメキシコ東部、プレーンズ中央部(特にカンザス東部およびオクラホマ北部)、ミズーリ、ミシシッピ川渓谷中央部は雨が予想されている。中部大西洋岸地域の一部では、雨量が多いかもしれない。
気象予報センターが発表した9月20日から24日までの予報によると、本土南東部を除いて、大半の地域は短期的な天候パターンの変化で気温が平年を上回る。降雨量は地域によりまちまちで、西部の大半の地域、グレートプレーンズ、ミシシッピ南部は平年を下回り、北東部は例年を上回る。
牛肉市況(9月12日〜16日)
豚肉市況(9月12日〜16日)