テキサス州の深刻な干ばつによる作物と畜産関連の損害額は、ここ10ヵ月間だけでも過去最高の52億ドル(畜産21億ドル、主要作物31億ドル)と推定され、これまでの年間記録の41億ドル(2006年)を上回っている。テキサスの歴史上最悪の干ばつは収まる気配がなく、2011年通年の損失はさらに数十億ドル増える恐れもあり、テキサスや各地の牛肉業界に様々な影響を与えている。
今年か来年には牛頭数が安定するという期待に反して、例年より数十万頭多い肉用牛が処理工場に出荷されるだろう。テキサスでは雌牛頭数の減少が今年の子牛生産頭数減少、さらには今後数年間の肥育牛頭数減少につながる。その結果、家畜市場およびサザン・プレーンズ(オクラホマ南部〜テキサス北部)のフィードロットと牛肉加工工場の稼働率にプレッシャーがかかる。
畜産では牛頭数維持のため飼料費がかさみ、6、7月はやむなく頻繁に特売を実施して牛・子牛市場価格に影響を与えた。また昨年冬は小麦牧草が減少して素牛農家、繁殖農家が打撃を受けた。
作物では綿花、トウモロコシ、小麦、穀実用モロコシおよび乾草の生産が低下したが、収穫時期には損害額が増える恐れもある。作物には果物、野菜、園芸製品、種苗、粗飼料は含まれていない。
米国農務省(USDA)は最新の週間作物作況報告書で、8月21日に終わった週の時点で、米国のトウモロコシの作況は57%の耕地が「良好」または「優良」と発表している(前週は60%、前年同期は70%)。一方で17%が「不良」または「きわめて不良」と評価された(前週は15%、前年同期は10%)。特にテキサス(68%)、ノースカロライナ(48%)、カンザス(41%)、ミズーリ(39%)で「不良」や「きわめて不良」の畑が多かった。
大豆は59%が「良好」または「優良」と発表している(前週は61%、前年同期は64%)。一方で14%が「不良」または「きわめて不良」と評価された(前週、前年同期はいずれも13%)。
牧草の状況は概ね変化はなく、牧草地の39%が「不良」または「きわめて不良」、37%が「良好」または「優良」と評価された。
食肉需要は世界的に堅調が続き、今年1〜6月期の米国産牛肉輸出は前年比で輸出量は25%、輸出額は40%増加した。豚肉輸出も輸出量で14%、輸出額で19%伸びて、牛肉・豚肉合わせて初めて50億ドル台を超える可能性が出てきた。
6月には過去2番目に高い牛肉輸出額を記録し、オーストラリア、ブラジルを抜いて2004年まで保持した牛肉輸出1位の座に返り咲いた。肉牛月齢制限のある日本向け輸出も、6月は2003年以来最多の月間輸出高を達成した。
牛肉はラテンアメリカ、中東、カナダが3大成長市場を構成している。前年比でカナダ向け輸出量は23%、輸出額は44%増加した。対中南米輸出量は51%、輸出額は71%伸びた。中東向け輸出量は38%、輸出額は50%増えた。
豚肉は韓国、日本市場で人気が高く、韓国向け輸出量は145%、輸出額はほぼ3倍増加、日本向け輸出量は10%、輸出額は13%伸びた。
厳しい干ばつの影響で牧場経営者はやむなく牛を淘汰し、牛肉の減産がさらに進むなか、USDAの8月19日付「Cattle On Feed」レポートによると、7月度の導入頭数は前年比で22%増加した。7月としては、統計を開始した1996年以来最多の数字だ。
全体で、肉用牛は飼料費がまだ安かった2007年度に比べて5%減っており、いくつかの要因によって一般消費用の牛肉の量は大幅に減少するとアナリストは予測している。
まず飼料費の高騰で雌牛の淘汰が続いている。牧場経営者は牛を売却するか飼料を買うかの選択を迫られている。
次にドル安の影響で牛肉輸出が増加して、南米やオーストラリア、ニュージーランドからの供給が不足し、肉牛の値上がりが予想される。2012年はドル安で牛肉輸出が増加する一方で、牛肉の輸入量が抑えられるだろう。
また米国南西部、南東部の干ばつは秋まで続くと思われる。9月に入り涼しくなると、第4四半期の生体牛は平均で112〜116ドルに値上がりし、2012年初めには急上昇する見込みだ。
8月19日以降の数日間、米本土西部は長く伸びた高気圧帯が居座り、乾燥して気温が高くなる。
一方東部は気圧の谷に覆われ、雨天で涼しくなるだろう。この予報が正しければ、東部州は降雨で、何ヵ月も続いている干ばつがさらに和らぐ。
長期予報では同じ天候パターンが予想されており、長い干ばつ期の後に効果が出るかもしれない。異常な干ばつに見舞われた地域の大半は、東西の雨が多い地方と乾燥した地方の中間に位置しているので、局地的な大気の状況で天候が回復するかもしれない。しかし、現時点で干ばつ解消の兆しは見当たらない。
牛肉市況(8月15日〜19日)
豚肉市況(8月15日〜19日)