現在、全米の肉牛の半分が過酷な干ばつ地域にいて、処分またはフィードロット・牧草のある州への移動を余儀なくされている。五大湖からテキサスにかけては、猛暑が肉牛の飼育に悪影響を与え、牛肉小売上高が激しく落ち込んでいる。しかし最大の被害は今年のトウモロコシの収穫で、生育過程で重要な受粉時に暑さと乾燥が重なり、大幅な収穫の減少が心配される。
1エーカー当たり予想収穫量及び総収穫量は、米国農務省(USDA)が158.7ブッシェルと132億ブッシェル以上、民間予測会社はわずか150ブッシェルと126億2,000万ブッシェルと発表している。
総収穫量が130億ブッシェル以下になると飼料費は更に値上がりするといわれるが、牛・豚・鶏生産者は既に昨年の倍の現金価格でトウモロコシを購入している。
「トウモロコシ高値の影響は、生体牛先物市場にある程度出ており、国内の牛肉需要が回復しないと、第4四半期に生体牛価格が125ドルを超えるかどうか疑問だ」とアナリストは述べている。一つの好材料は、中国向け豚肉輸出の増加で豚肉が値上がりし、牛肉の競争力が増したことだろう。また十分な供給量がある鶏肉が値下がりし、その分記録的高値の牛・豚肉が買えるという効果も出ている。
昨年の8月後半3週間、牛肉卸売価格は大きく回復したが、今年はそうなる可能性が低い。今年は8月1週に若干下落し、この先パッカーが減産しない限り、2週、3週と値下がりするとアナリストは予測している。輸出は好調で昨年を上回るペースで推移しているが、牛肉総生産量のわずか12%にすぎず、残りの88%は国内で販売しなければならない。しかし経済全般の低迷と消費意欲の低迷で、国内需要は予想よりも少ない。牛肉小売価格は健闘して持ち直しているが、フードサービス業は外食頻度や客単価の低下で予想を下回っている。
7月1日時点のフィードロット外の肥育牛・子牛供給頭数は、前年比95万頭(2.5%)減の3,680万頭だったが、その後、厳しい干ばつの影響で若い牛がフィードロットに送られ、更に減少した。6月度の導入頭数は、アナリスト予測の前年比6.6%減に対し、同4.1%増の169万5,000頭だった。
7月1日のフィードロット内総頭数は予想よりやや多く、年末まで前年を上回る状況が続く見込みだ。8月の牛出荷頭数(飼養120日以上)は前年比11%増で、こちらも年末まで増加が続く見込みだ。そのため第4四半期の出荷可能牛頭数は、今年前半に予想されたほど減少はしないだろう。10月、12月分の生体牛先物相場のプレミアムを考えて、肥育業者は両月まで出荷を抑えるという背景もある。こうした要素を考慮すると、第4四半期の現金価格はやや期待はずれだとアナリストは述べている。
米国内の肥育牛の供給不足に輪をかけて、カナダ産肥育牛の輸入が前年比で大幅に減少している。7月16日までの1年間の輸入頭数は5万4,215頭で、前年同期比で9万3,107頭(63.2%)減っている。それに加え、と畜用若雄牛、未経産牛、と畜用乳牛(雌牛)など、その他部類の牛の輸入頭数も28.6%から39.1%の間で軒並み減少し、輸入牛全体で27万56頭、41%減っている。
HedgerEdge.com社のアナリストは、供給の長期的な見通しは明るいと言う。純粋に供給の観点からみると、肥育牛・生体牛価格の新高値が出る可能性がある。そのためには牛肉需要または飼料投入の価格レベルの低下が必要だ。肥育牛、子牛、生体牛市場のリスク要因は、雇用の改善がほとんど見られず、消費者の負債も減少していない状況での需要の動きだ。
来年は肥育業者、牛肉のバイヤーはそれぞれ肥育牛、牛肉の確保で競争が激化するだろう。米国の牛総頭数の減少で牛肉生産量は前年比で5%減少し、牛肉輸出は若干落ち込み輸入は伸び悩みが予想され、その結果、牛肉供給が著しく減少するだろう。
最新のUSDA予測で2010年度の供給量は一人当たり55.6ポンドで、今年の予測値57.9ポンド、2008年度の9ポンドより少ない。供給不足が進むと、牛肉卸売り・小売価格の最高値につながる恐れがある。牛肉業界の大きな課題は、今後も消費者が値段が高い牛肉を買い続けるかどうかだ。これは力強い景気の回復と、競合する食肉の供給量と値段に大きく左右される。
8月9日、米国農務省・動植物検疫局(APHIS)は、家畜の疾病関連の事案が発生した際の全般的な規則(ルール)案を公示した。
同案では原則として、州間移動する家畜は獣医学的検査証か、オーナー・荷送人発行の明細書などの証拠書類を添付して、個体単位で公式に身元確認する。また、あわせて耳標など低コストのテクノロジーの使用を奨励している。一部地域では、すでに他の個体認識方法が普及していることを考慮して、家畜の出荷・受け入れを行う州では烙印や入れ墨など代替手段も認められる。
昨年12月に食品マーケティング協会(FMI)とプリベンション誌※1が共同で実施したインターネット調査※2によると、食品に対する消費者意識の変化が起きていると指摘する。食品の購入にあたり、以前は「過剰摂取が好ましくないとされる成分(脂肪、砂糖、塩、カロリーなど)が含まれていないか」を注意していたが、最近は「健康に良い成分が入っているか」を重視している。チェックする成分のトップは繊維、次いで全粒粉、蛋白、オメガ3脂肪酸、抗酸化物質に関心が集まっている。
調査結果で健康重視を上回ったのは消費者の「献立プラニングの不足」だ。「献立は当日決める」が72%を占め、4人に1人が「1時間前に決める」と回答している。「美味しい」「便利」「食べたい」が「健康によい」を上回った。
FMIは「調査結果は、消費者が栄養価の高い食品を選択し健康的な食習慣づくりをする上で役立つ情報を、小売業者が提供できるようお手伝いするのが私たちの仕事だとはっきり示している」とコメントしている。
※1 毎月、1,000万人の読者を持つ、ヘルシー・ライフスタイルをターゲットにした雑誌
※2 「健康的な食料品ショッピング」回答者1,579名
8月4日から8日にかけて、本土中南部と東南部は厳しい暑さに見舞われ、一方、中西部は涼しい天気が広がるだろう。極西部と干ばつにより壊滅的な被害を受けている中南部では雨はほとんど期待できない。しかしプレーンズ北部及び中部、中西部、東部を含むそれ以外の地域は、1から2インチの降雨が予測され、地域によってはそれより多いところもある。大方の予報は、ハリケーンエミリーは方向を変えて米本土への上陸はないが、週末に大西洋岸南部に上陸する可能性は残るという。
気象予報センター発表の8月9日から13日までの予報によると、太平洋岸近隣、及び中西部から北東部までの地域の気温は平年を下回り、一方、フォーコーナーズ(ニューメキシコ・コロラド・ユタ・アリゾナが接する地点)から南東部にいたる地域の気温は通年を上回る。またカリフォルニアと本土南部の雨量は平年を下回るが、中西部を含むプレーンズ北部からニューイングランド地方の雨量は例年より多くなる。
牛肉市況(8月1日〜5日)
豚肉市況(8月1日〜5日)