過去最高の牛肉小売価格やパッカーの在庫状況など牛肉市場の動向を受けて、生体牛の現金取引価格は5月1週早々に下落している。カンザスとテキサスの生体牛価格は前週比2ドル安、枝肉では3〜4ドル安になっている。また、処理頭数の急減や取引の少なさへの懸念も加わって、5月2日の生体牛先物相場は急落した。価格リスクをヘッジしているサザン・プレーンズの肥育業者達は、現金価格と先物価格の有利な関係を生かして安値を受け入れている。メモリアル・デーの連休に向け、生体牛価格はパッカー在庫の状況次第で5月1〜2週に若干持ち直す可能性もあるが、その後夏場に入ると例年通り下降するだろう。
肉牛頭数の減少と国内外の需要増のため、2011年度の食肉価格は前年比で6〜7%上昇し、8.4%を記録した2004年以来最大の値上がりになると米国農務省(USDA)は予測している。特に生体牛頭数は、1950年代以来最低値になっている(USDA経済調査局)。またドル安で輸出に拍車がかかり、一部の海外市場で米国製品に割安感がでている。一方で燃料の値上がりもあり、生産・輸送費に加えて飼料コストが増加している。
家庭消費用の食品全体で、3.5%〜4.5%の値上がりが予想されており、食肉カット別でみると、3月度はいずれも前年比でボンレス・ポークチョップは15%、ベーコンは24%、チョイス・ボンレスサーロインも15%、赤身牛挽肉は9%(インフレ未調整)値上がりした。
牛肉小売価格は過去最高の値上がりで、消費者は豚肉や鶏肉に流れている。特にガソリンが4ドル以上値上がりすると、その傾向はいっそう強まるため、直近の月だけでなく、夏季を通じて売り上げに影響するのではと懸念が広がっている。
牛肉卸売価格の値上がりを受けて、一般レストランからハンバーガーチェーンを含む外食業界は値上げ、分量カット、他のビーフアイテムへの切り替え、チキンメニューの追加など、それぞれ対応を余儀なくされている。マクドナルドは4月4週に牛肉、乳製品等食材の値上がりを予測して、顧客の来店を維持するためにも値上げは慎重に行うと述べている。
あるエコノミストは「牛肉需要の動向は不透明だ。燃料、食品の値上がりで消費者はすべての支出で倹約を迫られるだろう。これまでの調査で牛肉小売価格の上昇は、豚肉、鶏肉と比べて需要への影響が大きい。食肉全体が値上がりすると、消費者は牛肉をあきらめる傾向が強い」と述べている。
3月31日時点の牛肉、豚肉、鶏肉合計の在庫は前月比0.7%増、前年比8.3%増の20億4,900万ポンドだった。
総在庫量は4億4,880万ポンドで、昨年を16.7%、5年平均を6.9%上回った。内訳を見ると、特にボンレスビーフはエンドユーザーが4、5月の高値を見込んで在庫を増やしたため、前年比19%増の3億8,660万ポンドに達した。ボンインビーフは前年比4.1%増の6,220万ポンドだった。在庫増は、5月末のメモリアル・デーの連休に向けた赤身牛肉の値上がり抑制に役立つはずだ。
総在庫量は5億7,720万ポンドで、昨年を12.5%、5年平均を4.4%上回った。在庫の急増はパッカーの販売の遅れというよりは、輸出のペースが速いことを示している。今年はイースターが遅かったため、例年のハムの在庫量減少も1ヵ月遅れて4月中続き、その後第3四半期に入って上昇が始まると思われる。
米国環境保護庁(EPA)は4月26日、2011年度のバイオ燃料生産量を125億ガロンとする現行の基準を変更する予定はないと発表した。4月27日午前のシカゴ商品取引所5月納品分のトウモロコシ先物相場は、1ブッシェル約7.60ドルで取引された。食肉団体は「現在米国で生産されるトウモロコシの約4割がエタノール生産に転用されている」と述べている。EPAは今年1月、新車と軽トラック用ガソリンのエタノール配合率を10%とする販売制限を見直し、最高15%までへの道を開いた。
その一方で、USDA発行の週間穀物生育進捗率レポート※1によると、4月24日時点のトウモロコシ植え付け率は、主要なトウモロコシ生産地で国内収穫高の9%にとどまっている。昨年同時期は既に46%の植え付けが終了していた(過去5年平均では23%)。
※1:米国のトウモロコシ生産の92%を占める18州の集計に基づく。
牛肉市況(4月25日〜29日)
豚肉市況(4月25日〜29日)
4月28日から5月2日にかけては、本土北部全域で雨になる確率が高く、この期間後半になると雨は中西部と南東部に移動するだろう。気温は中部から東海岸は概ね平年並みか平年を上回り、太平洋岸北西部はこの期間前半、中西部は後半に平年を下回る予報が出ている。
その後3日から7日にかけて、南部48州の北方の大半はハイプレーンズから北西部に至るまで、例年より涼しい天気になりそうだ。南西部と南部、メキシコ湾岸沿いの南東部では、平年より暖かくなる見込みだ。本土北部、南東部、北方のオハイオ川渓谷からニューイングランド南部の各地で、平年を上回る降雨の可能性が高い。南東部、南西部、プレーンズ諸州南部に及ぶ地域の降雨量は平年を下回るだろう。