生体牛価格は3月最終週に、南部の市場で高値新記録を出した。その後、4月2週の上昇幅は小さかったが、サザン・プレーンズ(オクラホマ南部〜テキサス北部)の価格はその最高値を1ドル以上上回った。
現金・先物相場の価格が好調なことから、肥育業者の自発的な肉牛販売が続き、パッカーも4月納品の牛の加工が順調で、現金市場で買う肉牛頭数の減少もあるだろう。最新のデータによると枝肉重量は予想より重いが、出荷可能牛の頭数不足は続いている。
生体牛価格が春期の最高値に達したかどうかまだ判断できないが、アナリスト達はその後は少なくとも8%下落して夏秋の最安値に落ち着くと見ている。最高値が123ドルとすると、最安値は113ドルになる。「最高値から最安値への平均下落幅は15%」と述べるアナリストもおり、そうなると価格は104.55ドルに戻る。ここ3年間は9%ないし11%の下落ということだ。
様々な要因が重なり合って、生体牛は史上最高値に回復した。3月最終週の各種レポートは牛肉需要と輸出の好調、日本向け牛肉輸出の増加に注目しているが、インフォーマ・エコノミック社のアナリストは、本当の推進要因は出荷可能牛の予想以上の供給不足だと指摘する。Cattle Buyers Weeklyは3月14日号で「昨年秋に軽量級の牛を大量に導入してフィードロット内頭数が膨らんだ」と報じた。これを受けて関係者は2〜3月には肉牛が増加すると思い込んだ。またパッカーは2月上旬から3月中旬にかけての6週間で、国産の去勢雄牛と未経産牛を昨年同期より6%多く処理している。パッカーは初期供給分を積極的に処理加工したので、フィードロットでは新旧の牛の入れ替えがきわめて順調に進んでいる。
一方で、カナダ産素牛の輸入頭数の減少が米国内の肥育牛不足を悪化させている。3月19日までのカナダからの1年間の輸入頭数は、と畜用生体牛(去勢雄牛・末経産雌牛)6万2,013頭減、と畜用生体牛(経産牛/cow)は2万2,654頭減、肥育牛は1万3,044頭減と、いずれも前年比で減少している。週間処理頭数と比較すると小さい数字だが、生体牛と淘汰された母牛(cull cow)の価格を押し上げている。
エンドユーザーがトウモロコシ使用量を削減するか、他の飼料への切り替えを始めるか市場の期待がかかる中、トウモロコシ価格は、2月下旬の小康状態を除けば値上がりが続いている。
2010〜2011年度に米国で使用・輸出されるトウモロコシの3分の1が、エタノール生産用とみられる。ガソリン価格の高騰や輸出の需要高の影響で、エタノールは高マージンが続いている。そのため業界では、トウモロコシが更に値上がりしてもエタノール生産者は対応できると分析している。一方飼料用は減少が予想され、米国農務省(USDA)は需要の内訳は家畜飼料が大半を占めると見ている。豚・牛の価格急騰で、生産者は家畜飼料用の振り分け量の維持、もしくは増加が可能になっている。またドル安と主要海外市場の飼料不足のおかげで、トウモロコシ輸出への影響はほとんどないだろう。
結論として、需要を満たすために今年の夏はトウモロコシ価格急騰の恐れがある。価格予想はできないが、飼料価格が高騰してサプライチェーン全体に影響が広がることは確かだ。そして今年農地の生育環境が完璧でなければ、2011〜12年度もトウモロコシの厳しい在庫不足が続く心配がある。
豚肉卸売価格は、今年これまで大半の期間で着実に上昇を続けて豚赤身肉市場を支え、成豚価格を年間のこの時期では過去最高に押し上げた。4月3週の豚赤身先物相場は不安定だったが、今後も上昇を続け、カットアウト価格が現在より15ドル(17%)上がれば、6・7月には100ポンド当たり110ドルを超えると期待される。
4月6日の時点で、カットアウト卸売価格は前年比17.31ドル上昇した。ハムとロインは枝肉全体の50%を占めるが、両方合わせた値上がり分はわずか3.66ドルで、増加分への貢献度は21%にすぎない。値上がりの大半は、枝肉全体の16%を占め、9.48ドル(67%)上昇して147.75ドルに達したベリーからきている。通常ポークは夏場は供給が減り、小売り需要が高まるので、今後更に値上がりが期待される。多数の大手フードサービス・チェーンがポークの朝食メニューを提供していることも好調の一因だ。
USDAが実施する銘柄牛肉認定プログラムで、アンガス種は引き続き優位を保っている。「サーティファイド・アンガス・ビーフ(CAB)プログラム」は創設25年を迎え、米国内で最古かつ最大のプログラムであることを考えると当然ともいえる。その成功に乗じて「アンガス」の名を付けた他のプログラムも現れたが、ここ10年は新規プログラム増加件数の割には数は減少している。おそらく銘柄開発担当者が、他のプログラムとの差別化に新たな方法を模索しているからだろう。またCABが拡大する中で、アンガス系肉牛の供給不足も一因かもしれない。
USDA認定銘柄プログラムにアンガスビーフが占める割合は、2001年度は41件のうち30件(73%)、今年2月には111件のうち76件(68%)となっている。チョイス・プレミアム・プログラムでは、2001年は20件中12件(60%)から今年2月には42件中24件(57%)を数えている。
4月8〜11日にかけて、五大湖、中西部、オハイオ川渓谷の各地は、好都合な雨が降り、西部の高地でも所により相当量の降雨がある。しかし、ニューメキシコからメキシコ湾沿岸地域、フロリダ、中部大西洋岸の南部地域はかなり乾燥した天気が予想されている。ロッキー山脈から大西洋岸の気温は平年よりずっと高く(6〜9度)、西部の大半の地域は反対に平年を6〜9度下回る見込みだ。
気象予報センターは、4月12〜16日にかけて、西海岸と五大湖、北東部は涼しくなると予報している。フォコーナーズ※1周辺地域、ロッキー山脈南部、サザン・プレーンズ、ミシシッピーデルタでは、再び平年を上回る気温になりそうだ。太平洋岸北西部、五大湖、フロリダは平年を上回る降雨が予想され、アラスカ、南西部、サザン・プレーンズ、ミシシッピーデルタ南部の降雨量は平年を下回るだろう。
※1:アメリカ西部、コロラド高原中央付近にある、4つの州(アリゾナ、ニューメキシコ、ユタ、コロラド)の境界線が集まった地点およびその周辺地域。
牛肉市況(4月4日〜8日)
豚肉市況(4月4日〜8日)